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大学・研究所にある論文を検索できる 「精神科領域における病院薬剤師の介入効果に関する臨床研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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精神科領域における病院薬剤師の介入効果に関する臨床研究

進, 健司 SHIN, Kenji シン, ケンジ 九州大学

2021.03.24

概要

統合失調症や気分障害などの種々の精神疾患において、薬物療法は再発防止の効果があり、精神疾患治療の土台となる重要な治療手段として位置づけられている。しかし、精神疾患患者に薬物療法が開始されたとしても、患者が服薬を継続できなければ症状再発のリスクは高く、再発を繰り返すことによって重篤化し治療抵抗性へ移行することがある。患者の服薬アドヒアランスの低下を防止するため、薬剤や治療に対する不信感が高まらないよう指導にあたること、そして、患者から得られた情報は医師や看護師へ提供して患者と医療スタッフの良好な治療関係が構築されるよう努める必要がある。また、精神疾患の多くは慢性疾患であり、再発予防のため薬物療法が長期にわたり継続されることから、疾患発症時や症状増悪時に限ることなく長期的に患者を支援することが求められる。さらに、向精神薬は、精神疾患患者のみならず身体疾患を有する患者においても生じる精神科的問題に対して使用される薬剤であり、医師の薬物療法を支援して向精神薬の適正使用に努めることが重要である。そこで、本研究では、精神科領域において診察前薬剤師面談と薬物療法支援を実践し、その介入効果を検証した。

第 1 章では、精神科外来において医師への業務支援による薬物療法の有効性・安全性と患者の服薬アドヒアランスの向上を目的とした診察前薬剤師面談を実践し、アンケート調査を用いた患者主観的評価の聴取により有用性を検証した。その結果、薬剤師による面談は、患者から高い満足度と継続の希望が得られることが分かった。また、面談の利点として「診察での医師とのやりとりがスムーズになった」と回答した割合は、面談を満足あるいは継続希望と回答した患者がそうでない患者と比べて有意に高かった。さらに、「診察での医師への伝え忘れが減った」と回答した割合は、面談を満足と回答した患者がそうでない患者と比べて有意に高かった。精神科外来における診察前薬剤師面談は患者と医師との橋渡し役としてコミュニケーションの円滑化に寄与できることが判明し、患者の主観的評価から有用であることが示された。精神科領域において病院薬剤師は外来患者に有益な診察前薬剤師面談を実践できると考えられる。

第 2 章では、医師への処方提案実施状況を調査し、精神科病棟長期入院患者に対する薬剤師による薬物療法支援の有用性を検証した。現在、入院患者に対する薬剤師による病棟業務の評価として病棟薬剤業務実施加算が設けられている。しかし、精神科病棟における病棟薬剤業務の算定期間は 8 週間の制限があることから、9 週目以降の長期入院患者に対する病棟薬剤業務の有用性 を示すことを目的とした。その結果、9 週目以降の長期入院患者に対する処方提案受諾割合、ハイリスク薬処方提案割合およびその受諾割合は、8 週目以前の患者に対するものと比較してもそれぞれ同程度であり、患者転帰を悪化させることのない薬物療法を支援して患者利益に貢献していることが明らかとなった。また、入院 9 週目以降の患者においてベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD 系薬)の投与量減少に寄与し、医療費削減効果が得られることも分かった。これらのことから、精神科病棟において薬剤師による 9 週目以降の長期入院患者に対する病棟薬剤業務は有用であることが示された。精神科領域において病院薬剤師は長期入院患者に対する薬物療法支援を実践できると考えられる。

第 3 章では、向精神薬のなかでも BZD 系薬に着目し、外科系病棟入院患者に対する BZD 系薬の減薬や変更の推奨を記した内容をスタンプ形式にして電子診療録に貼付する薬剤師主導の取り組みについて、有用性を検証した。その結果、スタンプ貼付件数はスタンプ貼付後、徐々に低下した。BZD 系薬の入院指示率はスタンプ貼付実施前と比べて終了直後、4 ヵ月経過後ともに有意に低下した。また、せん妄発現率は低下傾向を示した。薬剤師主導のスタンプ貼付の実践は医師による BZD 系薬の入院指示回避に効果的であるとともに、一定期間その効果が維持されることが示唆された。身体疾患を有する患者においても、安全性に配慮した睡眠薬選択を支援する BZD系薬の適正使用に寄与できるものと推察される。精神科領域において病院薬剤師は電子診療録へのスタンプ貼付による BZD 系薬減薬支援を実践できると考えられる。

以上のことより、精神科領域において病院薬剤師による診察前薬剤師面談や薬物療法支援は意義ある介入であることが示唆された。薬剤師は医療チームの一員として患者利益のために何ができ、どのように介入すべきか苦慮することも多いと思われるが、本研究で得られた成果は精神科領域における病院薬剤師の実践に有用な知見と考えられ、薬剤師業務の発展の一助となることを望む。

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