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大学・研究所にある論文を検索できる 「EGFR-TKI耐性と腫瘍内組織免疫微小環境との相互作用についての検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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EGFR-TKI耐性と腫瘍内組織免疫微小環境との相互作用についての検討

川名 祥子 東北大学

2020.09.25

概要

肺癌は日本,世界共に癌死の第一位であり,組織の特徴から小細胞癌と非小細胞癌に大別される.ⅢB~Ⅳ期の進行期非小細胞肺癌に対しては薬物療法や免疫療法が行われ,ドライバー遺伝子の有無やprogrammed death-ligand 1(PD-L1)の発現率によって治療薬が選択される.日本人患者では上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor: EGFR)遺伝子変異の割合が高く,分子標的治療薬(tyrosin kinase inhibitor: TKI)が奏功するため,一次治療の第一選択となっている.しかし,多くは1~2年以内に薬剤耐性化を来すため,耐性メカニズムの解明や新しい治療法の確立へ向けた研究が進められている.近年注目を集めている免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor: ICI)もEGFR-TKI耐性獲得後の治療薬の選択肢となるが,EGFR遺伝子変異陽性患者に対してその治療効果は乏しいとされている.現在,ICIの治療効果予測因子として腫瘍細胞でのPD-L1発現率が利用されているが,実際の治療効果と乖離することも多く,より明確な治療効果予測因子の検出や,有効例を示すバイオマーカーの確立が求められている.そこで私は,腫瘍内免疫微小環境(tumor immune microenvironment: TIME)の変化がEGFR-TKIの耐性獲得やICIの治療効果へ影響を与える可能性があると考え,ICIの新規治療効果予測因子や治療標的を見出すことを目的に研究を進めた.特に,TIMEに影響があるとされているサイトカインやmicro ribonucleic acid(miRNA)に着目し,ヒト肺癌細胞やヒト肺癌組織を用いて検討を行った.私はまずヒト肺癌組織検体21例を用い,第一・第二世代EGFR-TKI耐性獲得前後のTIMEの変化について検討した.その結果,EGFR-TKI使用前にCD8陽性T細胞の割合が高い症例では,薬剤耐性獲得後に腫瘍内CD8陽性T細胞が低下する事を明らかにした.これまでこのような腫瘍局所微小環境の変化が起こる機序についての検討は一切報告がなく,私は今回の臨床検体で得られた結果の機序をさらに検討する目的でinvitroでの検討を行った.まず最初にヒト肺癌培養細胞株を用いたmiRNA polymerase chain reaction (PCR)アレイによる網羅的検討を行い,特にEGFR-TKI耐性獲得前後の比較で変動の大きかったmiR-1に着目し,更なる検討を進めた.肺癌細胞におけるmiR-1のサイトカイン発現への関与を網羅的に検討した結果,EGFR遺伝子変異を有する3種のヒト肺癌培養細胞株で,miR-1をトランスフェクションした細胞群においてC-C Motif Chemokine Ligand 5(CCL5),C-X-C Motif Chemokine Ligand 10(CXCL 10), Interleukin-6(IL-6),IL-8,TumorNecrosisFactor-α(TNF-α)のタンパクもしくはmRNA発現量の有意な低下を示す事が出来た.続いて,これらのmiR-1を介したサイトカイン発現抑制がリンパ球遊走に与える影響を単核球遊走試験で検討したところ,miR-1トランスフェクション群において有意にリンパ球を含む単核球の遊走数減少が証明された.さらに,肺癌細胞,肺癌組織において,miR-1の誘導因子であり,EGFRシグナル伝達経路の一つであるPhosphoinositide 3-kinase(PI3K)/Akt経路の活性化により上昇するmyocyte enhancer factor 2C(Mef2C)の発現がEGFR-TKI耐性獲得後に増加することを示す事が出来た.最後に,miR-1が肺癌の細胞増殖および予後に与える影響を検討した.ヒト肺癌培養株を用いた細胞増殖試験では,EGFR-TKI耐性獲得前の細胞株で,miR-1トランスフェクション後に有意に細胞増殖が抑制された.また,public databaseであるカプランマイヤープロッターによる検討では,肺腺癌においてmiR-1が有意な予後良好因子であることが明らかとなった.

 以上の結果より,EGFR-TKI耐性獲得によりPI3K/Akt経路が活性化し,Mef2Cの上昇を引き起こした結果,miR-1が増加し,サイトカインの低下,リンパ球遊走能低下を来すことでCD8陽性T細胞減少といった腫瘍内微小環境の変化が起こることが考えられた.また,EGFR-TKI耐性獲得後にmiR-1が上昇している症例ではICIの治療効果は乏しいものの臨床予後は良好である可能性が高く,化学療法を含めたICI以外の治療を積極的に進めるマーカーとなり得ると考えられたが,今回の結果を踏まえ,今後ヒト血清・ヒト組織におけるmiR-1発現の変化についてより多くの症例を用いた検討の必要性が示唆された.以上より,今回の私の研究成果はEGFR-TKI耐性獲得肺癌患者の治療選択および治療戦略の発展に,今後多大なる貢献を果たすと考えられる.

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