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大学・研究所にある論文を検索できる 「地方中枢都市における食料品入手可能性と住民への影響に関する研究―宮城県仙台市でのウェブ調査による分析―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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地方中枢都市における食料品入手可能性と住民への影響に関する研究―宮城県仙台市でのウェブ調査による分析―

大鐘 智香子 東北大学

2020.02.29

概要

【目的】 日本における食料品入手可能性の一課題として、食料品アクセス問題が指摘され て久しい。農林水産政策研究所の試算によると,日本では全国で 2015 年現在 65 歳以上高齢者の 24.6%が食料品へのアクセス問題に直面している(高橋, 2018).高齢化が進む日本において,食料品アクセスの保障は高齢者の健康な食生活を支えるために不可欠であり、改善が求められる社会的課題だ.一方で薬師寺ら(2013)は,特に都市部においてこれまで主眼で無かった,65 歳以下の非高齢者層も買い物に不便や苦労を感じており、また食料摂取状況にも課題が存在すると指摘した。しかしその実態は詳述するには至っておらず、また対象とされた都市は殆どが三大都市であり、地方中枢都市の状況は不明瞭な点が多い。

本研究は非高齢者を含む食料品アクセス問題発生状況とその要因、その後の食料摂取状況について,住民の視点に立ち概観することを目的とし、次の課題を設定した:①食料品の買い物における不便の有無とその要因 ②各種買い物サービス利用者について、利用が買い物の不便や苦労に及ぼす影響とその要因 ③買い物の不便や苦労が食料摂取状況に与える影響

【方法】 宮城県仙台市在住の満 18 歳以上で「普段世帯の食料品の購入を担当する人」に該当する男女 300 名を対象にウェブ調査を行い、以下のように分析を行った。

①と②について、被説明変数に買い物の不便や苦労(4 段階の順序変数),説明変数に,店舗の近接性や各種買い物サービスの利用状況,回答者の属性や世帯状況,社会資本の有無について検討できるものを設定した.分析には順序ロジットモデルを利用した。

③について、被説明変数には食料摂取の多様性を評価する指標である食料摂取の多様性得点(0~10 点で得点化)、説明変数に,店舗の近接性、各種買い物サービスの利用状況,回答者個人の属性や世帯の状況,食事の準備様式、社会資本の有無について検討できるものを設定した.分析には Tobit モデルを利用した。

【分析結果】 分析の結果,全課題で共通して店舗までの所要時間、回答者の性別や年齢,世帯構成員の人数とその状況,各種買い物サービスの利用が食料品購入に係る苦労や不便に影響していることが示唆された.課題①では特に世帯内に未就学児や身体介助必要者がいる回答者の間で不便や苦労が散見され、回答者の周囲の事情によって付随する属性が買い物の不便や苦労の程度を高めていることが判明した。課題②では各種買い物サービス利用によって移動時間による労苦が軽減したほか、利用前後で特に未就学児の世帯員を有す回答者の不便や苦労が大幅に減少する傾向が見られた。課題③では、各種買い物サービスの利用と、生鮮食品利用頻度の高さ、並びに外食利用頻度の高さが、食料摂取状況の充実に貢献していることが判明した。既往研究では食の外部化が進むにつれて摂取状況は悪化するとされていたが、その結果を支持するものにはならなかった。

【結論】 以上より、次の事を結論付ける。第一に、食料品アクセス問題は 65 歳以上高齢者の課題に留まらないことだ。特に,既往研究でも指摘されていた子育て世代に加え,学生についても食料品アクセス不安に直面していることが示唆された.また,今回の調査では「高齢者」と「買い物の不便や苦労」の関係について,統計的に有意な結果が得られず,先行研究を支持するものにはならなかった.第二に、各種買い物サービスの利用は買い物行動を簡便化し、その後の食料摂取状況の充実にも大いに寄与することだ。特にサービスの利用は、住民を食料品入手に係る時間的拘束より開放する傾向にある。第三に、食料アクセス不安は食料品摂取の多様性損失を招く可能性が高いことだ。課題①②の分析結果から、買い物の不便や苦労は店舗までの移動時間に大きく影響されている。そのため、入手に費やす時間の削減や、食の外部化による食事準備に係るあらゆる時間の削減など何らかの形で所要時間と折り合いをつけている住民は摂取状況も良好である傾向が見られた。

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