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大学・研究所にある論文を検索できる 「二流体噴射弁の内部流動と横風中に噴射した液体噴流の分裂挙動」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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二流体噴射弁の内部流動と横風中に噴射した液体噴流の分裂挙動

邢 文静 広島大学

2022.09.20

概要

本研究では,火力発電用大型ガスタービン燃焼器における液体燃料の微粒化改善を目的にし,従来は液体のみを液柱として横風中に噴射していたのに対し,新しく二流体噴射方法を提案した.実験を中心に数値解析も援用しながら,まず二流体噴射弁の内部流動と静止気体中における液体噴流の分裂形態と微粒化特性を明らかにした.さらに,横風中における液体噴流の分裂挙動と噴霧液滴群の分散状態を詳細に調べた.多くの視点から幅広い評価を行い,本研究で提案した二流体微粒化の優位性が揺るぎないものであることを実証した.以上の研究の実施過程で,二流体噴射弁の出口近傍において液膜が不安定化し特異な振動現象を起こすことを発見した.そして混合孔の長さが異なる二種類の噴射弁を作成し,混合孔において上記振動現象を足掛りに,微粒化が最も良好になる最適長さが存在するメカニズムを提唱した.さらに,分裂しにくい環状液膜噴流と噴出後に激しい分裂を起こす液膜噴流に横風を当てて,後者の液膜の方が圧倒的に微粒化が優れていることを明示した.本論文は7章から構成され,各々の結論は以下のように総括される.

第1章には,本研究の背景と課題,そして研究目的を述べた.また本研究に関わる先行研究についても論じた.

第2章は研究方法である.二流体微粒化の現象観察に用いた実験装置の系統や実験条件について,さらに高速撮影条件を説明した.本研究において試作した気液混合孔長さの異なる3タイプの二流体噴射弁の構造も示した.本研究では,二流体噴射弁における内部流動の理解のために数値流体力学(CFD)も援用した.その手法について述べた.また無次元パラメータを用いて,実機と本研究の条件の関連についても説明した.

第3章では,中間的長さの二流体噴射弁を用いて,実験と数値解析により,噴射弁の内部流れと液体噴流の挙動を明らかにした.また,内部流れと液体噴流の分裂挙動に対して,液体流量と微粒化用空気流量のマップ上で現象の分類を行った.さらに,液体噴流では,広がり角度とザウター平均粒径といった微粒化特性を示した.

第4章では,横風中における液体のみ噴射と二流体噴射の両噴流を比較し,まず両噴流の分裂形態の相違を論じた.次いで噴霧流の軌跡や広がりを独自に開発した画像処理法を応用して比較するとともに,微粒化特性も調べた.二流体噴射法が総合的に微粒化に優れていることを明らかにした.また,無次元評価法を用いて,二流体噴射法を実機ガスタービンに適用した場合の微粒化特性を予測した.液体のみ噴射では,噴流の軌跡が横風速度に応じて一義的に決定されるが,二流体噴射では,微粒化用空気流量により噴霧流の軌跡をコントロールできることを見い出した.さらに第4章の後半では,液体のみ噴射と二流体噴射の両噴流における壁面衝突現象を比較した.液体のみ噴射では,太いリガメントや粗い液滴が壁面に衝突するが,二流体噴射では,衝突領域が横風に対して直角方向に広がり小さいリガメントや細かい液滴の衝突が多いことがわかった.

第5章では二流体微粒化のメカニズムについて論じた.二流体噴射弁出口において,厚さに偏りがあってその偏りが高速で変動する不安定な環状液膜流が生じていることを明らかにした.また,数値解析と実験により,噴射弁内部に生じる液柱が微粒化用空気の影響で激しく乱れて混合噴出孔の内壁に衝突し,噴射弁出口近くにおいて激しい変動を伴う液膜に変化していくプロセスを調べた.さらに,従来の液体のみ噴射つまり液柱と不安定液膜に横風を当てて,噴流の軌跡,分裂長さなどを求めた.以上の結果から噴出孔出口で液膜が変動する現象は,二流体微粒化における微粒化状態を支配する主要因のひとつであると考察した.

第6章では,混合孔の長さが不安定液膜に及ぼす影響を調べ,混合孔の長さに応じて変形した液柱,激しい変動を伴う液膜及び分裂しにくい環状液膜が生じることを示した.また,変動を伴う液膜分裂噴流と環状液膜噴流に横風を当てて,噴流の諸特性つまり広がり幅,分裂長さ及び液滴径など求めた.さらに,噴射弁出口近傍において液膜が最も激しく変動する中間的長さの混合孔が液体噴流の微粒化に最適であることを示し,これが混合噴出孔に最適長さが存在するメカニズムであると提唱した.

二流体噴射弁の噴出孔に最適長さが存在することは古くから経験的に知られていたとされる.しかし,その根拠つまりメカニズムは不明のまま長い間放置されてきた.この間推論もなされたこともあったが根拠は示されなかった.本研究の成果は,この長年にわたる課題に明確に決着をつけ,事実上終止符を打つものである.二流体微粒化の見方を一変させる可能性のある成果ともいえ,また新たな応用の道を拓く成果であるともいえる.

さらに,変動する液膜の厚さの変化比や変動周波数を用いて液体の分裂特性無次元パラメータで表現し二流体微粒化の性能を評価する新しい手法の構想を示した.この手法は,本研究の二流体噴射弁のみならずタイプの異なる二流体アトマイザの特性をも包括的に予測できる可能性がある.

第7章は本研究の総括であり,主要な成果をまとめた.最終に,本研究の遂行過程で抽出された課題に対する今後の展望を示す.

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