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大学・研究所にある論文を検索できる 「Catalyst-Controlled Regiodivergent Azine C–H Arylation」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Catalyst-Controlled Regiodivergent Azine C–H Arylation

Yamada, Shuya 山田, 柊哉 名古屋大学

2020.04.02

概要

含窒素 6 員環ヘテロ芳香環であるアジンは、生命科学や材料科学に広く存在するヘテロ芳香環の一種である。特に、芳香族置換基(アリール基)で置換されたたアリールアジン類は、機能性有機材料や医薬品をはじめとする生物活性物質にみられる重要な化学構造である。アリールアジンの分子特性は、アリール基の結合位置と種類に著しく影響されるため、アジンに対して望みのアリール基を適切な位置で導入する手法の開発は、有機合成化学における重大な研究課題である。

アリールアジンの効率的合成法として、遷移金属触媒を用いたアジン C–H アリール化がある。本手法はアジンの C–H 結合を足がかりとした直裁的な分子変換を可能とし、ハロゲン化体を用いる従来のクロスカップリングに代わる次世代型合成法として期待される。しかしながら、アジンの低い反応性と窒素原子による π 電子の局在化が原因となり、C–H アリール化の位置選択性を自在に制御することは未だ困難を伴う。基質支配型の選択性に対する抜本的解決として、触媒制御による位置選択的 C–H アリール化がある。触媒のチューニングによって選択性の自在制御が可能となれば、共通の母骨格から多様な誘導化が実現できるだけでなく、既存法で官能基化できない炭素部位のアリール化が達成される。そこで申請者は、多彩な選択性発現が望めるパラジウムに着目し、触媒制御による位置選択的アジン C–H アリール化反応の開発を行った。本博士論文は三章により構成される。

第一章ではピリジンとベンゾオキサゾールの位置選択的脱水素型クロスカップリング (CDC)反応について論じている。二種類の異なる芳香環を脱水素形式で位置選択的に結合させる CDC 反応は、最も簡明な非対称ビアリール合成法である。しかし、他のヘテロ芳香環と比べピリジンの CDC 反応を達成した例は限定的であり、その位置選択性を変化させることはできない。本研究ではパラジウム触媒によるピリジンとベンゾオキサゾールの新規 CDC 反応の開発を行った。種々条件検討した結果、有機ハロゲン化物が酸化剤として機能し、さらに用いる酸化剤によって位置選択性を制御できることを見出した。すなわち、パラジウム触媒存在下、酸化剤に臭化アレーンを用いると C3 位で、臭化ベンジルを用いると C2 位で選択的にCDC 反応が進行する。本反応は触媒制御によるピリジンの位置選択的 C–Hアリール化を達成した先駆的研究であり、方法論としての新規性が高い。

第二章ではピリジンの位置選択的二量化反応による脱水素型 2,2'-ビピリジル合成につい て論じている。2,2'-ビピリジルは触媒化学で汎用される最重要窒素二座配位子の一つである。近年、2,2'-ビピリジルの合成法として、モノマーであるピリジンを直接脱水素型で二量化す るカップリング法が注目を浴びている。しかし、現在までに開発された脱水素型 2,2'-ビピ リジル合成はごく限られた基質のみしか適用できず、反応時間や触媒効率に課題を残して いた。本論文では、パラジウム触媒存在下、カルボン酸添加条件においてピリジンの位選 択的二量化が効率的に進行することを見出した。反応条件の効果を精査したところ、添加 剤によって二量化の位置選択性が変化する興味深い知見が得られた(位置多様性の発現)。本手法は異なるピリジン間での CDC 反応へと展開することもでき、非対称な 2,2'-ビピリジル合成が実現可能である。さらに、二量化で得られた生成物を用いて、既存法ではアクセス困難なねじれた 2,2'-ビピリジル配位子の短工程合成にも成功した。

第三章ではチエノピリミジンの位置選択的 C–H アリール化反応について論じている。アリール化されたチエノピリミジンは生体内プロテインキナーゼ阻害活性を有するため、創薬研究における重要なファーマコフォアである。しかしながら、従来アリールチエノピリミジンは多段階合成によって誘導されるため、類縁体の迅速供給が困難であった。本論文では、アリールチエノピリミジンの効率的合成法の確立を目的とした位置選択的 C–H アリール化反応の開発を行った。条件検討の結果、パラジウム触媒存在下、チエノピリミジンにヨウ化アレーンを作用させることで C6 位選択的に、アリールボロン酸を作用させることで C5 位選択的にカップリングが進行することを明らかにした。アリールパラジウム錯体を用いた機構解明実験を行ったところ、アリール化の位置選択性はパラジウム触媒の電子的性質によって制御できることが示唆された。本触媒反応は、アミノ基やチオール基といったヘテロ置換基を有する基質にも適用可能であり、高い官能基許容性を持つことがわかった。また、既知のキナーゼ阻害剤の短工程合成に加え、二種類のキナーゼ阻害剤を作り分ける多様性指向型合成にも成功した。本研究により、アリールチエノピリミジン類の網羅的合成法が確立され、更なる新規生物活性分子探索の大幅な加速が期待される。

以上、申請者はパラジウム触媒を用いたピリジンやチエノピリミジンの C–H アリール化反応を開発し、触媒設計によって位置選択性を制御することに成功した。本研究はアリールアジン骨格構築における位置選択的 C–H アリール化の真価を示すのみならず、アジン官能基化の新規方法論として有機合成化学の礎に大きく寄与するものである。

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