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大学・研究所にある論文を検索できる 「Spatial positioning of individuals within groups of feral horses」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Spatial positioning of individuals within groups of feral horses

Inoue, Sota 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23052

2021.03.23

概要

動物の群れにおける個体の空間配置は様々な利点と欠点に関係するものである。ただ、特に野生の動物を対象とした研究では、個体の空間配置を定量的に評価することは必ずしも容易ではなく、群れ内の個体の空間配置に着目した先行研究は少ない。したがって、大型哺乳類では殊に個体の集団内空間配置に関する知見が乏しい。本研究では、ポルトガル北西部のアルガ山地域に野生状態で暮らしているウマ( Equus caballus)を対象に、無人航空機であるドローンを用いて個体の空間配置を定量的に記録し解析する研究を実施した。個体識別をおこなったうえで、ドローンを用いることによって各個体の空間配置を客観的かつ正確に表すことができた。

まず第 1 に、ドローンを用いた記録と解析の手法を確立した。1 群のウマ集団を対象に、群れ内の個体の配置を記録し解析したところ、ウマは互いに前後ではなく左右に位置することが有意に多いこと、オスは群れの周辺部に位置しメスが中心部に集まることが判明した。また、個体間距離の分布はパラメトリックな密度関数として表すことが可能であることも確認できた。第 2 に、最近接個体間の配置を詳細に調べたところ、有意な左右差が検出された。この結果は、右脳-左目系で社会的な刺激を処理する傾向と最近接個体の配置に関連していることを示唆するものである。第 3 に、群れの凝集性に関係する要因を検討した。群れの個体数と群れの広がりの諸相を調べたところ、群れの個体数が多くなるにつれて最近接個体間距離は短くなる一方で、最小凸法で定義される群れの専有面積に寄与する 1 個体あたりの面積は大きくなる傾向にあることが分かった。また、群れ間関係と群れの凝集性にも関連があることが示された。複数の群れが集まった状態において、比較的中心に位置する群れほど、群れの空間的凝集性は高まった。このことは、群れ内の個体配置が個体の利益と不利益に及ぼすのと同様の要因が、群れ間関係に働いていることを含意すると考えられる。最後に、群れ内の個体配置から、個体間に働くと推定される引力と斥力を数理モデルによってシミュレーションした。その結果、トポロジカルな要因によって力が働くと推定した場合より、メトリックな要因によって力が働くと推定した場合のほうが、実測値によりよく適合することが示された。

これらの一連の研究によって、野生状態のウマの空間配置の諸特性が明らかになった。ドローンを用いて大型哺乳類の個体間配置を定量的に解析した新機軸の研究と言える。動物における集団行動の発生と維持のメカニズムを理解するにあたって、本研究の結果は重要な礎になるものと考えられる。