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大学・研究所にある論文を検索できる 「チューブ・フロー・フラクショネーターを用いたパルプスラリーの新規分析法の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

チューブ・フロー・フラクショネーターを用いたパルプスラリーの新規分析法の開発

渕瀬(福岡), 萌 東京大学 DOI:10.15083/0002006128

2023.03.20

概要

[ 別 紙 2 ]



















申請者氏名



渕瀬(福岡) 萌

紙を構成する成分として,パルプ繊維の他に,様々な無機物および歩留剤等の薬品類があ
る。製紙プロセスにおいては,パルプ分散液中のこれらの成分の凝集/定着/分散状態を把
握し制御することが,紙の品質と操業性の最適化に必要である。しかし,これらの状態を分
析-解析するのはこれまで困難であった。そこで本研究では,チューブ・フロー・フラクシ
ョネーター(Tube Flow Fractionation:以下 TFF と略す)という新たな分級・分析技術に着目
し,これまでは不可能であった「パルプ分散液中の各成分とパルプ繊維の凝集/定着状態」
の定量的・定性的挙動解析とそれらの機構を検討し,分散液中の各成分の凝集/定着状態が
紙質に与える影響について総合的に検討することを第一の目的としている。近年,植物由来
のパルプ繊維の高機能化・高付加価値化を目的として,パルプ繊維と無機微粒子の複合化の
検討が進められている。そこで,本研究の第二の目的として,本 TFF 法を用いることで,
パルプ繊維/無機微粒子複合体の形成挙動,微細構造を解析することとしたものであり、本
論文は第一章の序章を含めた5章より成り立っている。
第二章では,凝結剤,紙力剤および歩留剤といった,分子量や電荷密度が異なる製紙添加
薬品を古紙パルプ分散液中に添加した際の「無機粒子とパルプの凝集/定着挙動」の違いを
TFF に設置した CCD カメラの画像と光学式濃度計を用いて分析している。その結果,低分
子量かつ高電荷密度の凝結剤や,高分子量かつ低電荷密度の歩留剤を用いた場合には,長繊
維どうしの凝集に寄与する傾向が認められている。一方,分子量も電荷密度も中程度の紙力
剤を用いた際には主に短繊維-微細繊維の凝集に寄与する傾向が認められ,各成分間の相
互作用を定量的に評価することができた。
第三章では,各種内添製紙薬品を古紙パルプ分散液に添加した際の「疎水性微細粘着異物
のパルプへの定着挙動」について検討すべく,疎水性物質を蛍光物質で標識後の分散液を
TFF で分離し,蛍光顕微鏡で観察している。その結果,疎水性物質は主に微細繊維および無
機粉体と共に存在することを明らかにした。内点薬品を添加した場合には,長繊維画分にも
疎水性物質が存在し,疎水性物質自体が凝集する挙動を確認している。続いて,抄紙機の乾
燥工程を想定し,脱水後の紙料からの疎水性物質の脱離挙動を解析している。その結果,薬
品を添加した場合には疎水性物質が凝集し,歩留剤を添加した場合には,大きく過凝集した
疎水性物質を確認している。以上のように TFF の分析結果を解析することで,疎水性物質
の古紙分散液中における凝集/定着挙動と脱水後の脱離性との関係を明らかにした。
第四章では,パルプ繊維とナノサイズの炭酸カルシウム微粒子の複合体を調製し,TFF を
含む分析法によりその構造,相互作用および特性を検討している。本実験では,新たにウル
トラファインバブルの衝撃力や物質の溶解力等を活用し,ナノサイズの炭酸カルシウム微

粒子とパルプ繊維の複合化挙動を検討している。その結果,炭酸カルシウム微粒子をパルプ
表面上に効率よく析出させた新たなパルプ繊維/無機微粒子複合体の調製に成功した。続
いて,得られた複合体を TFF で分析し,複合化率や複合化物の構造・状態を検討している。
対照試料として単に炭酸カルシウム微粒子をパルプ繊維に混合した「混合物」を作製して検
討している。その結果,複合体試料は混合物試料よりも繊維幅が増加していた。また,TFF
による分級によって得られた各画分を走査型電子顕微鏡で観察した結果,複合体試料には,
微細繊維と炭酸カルシウムの大きな凝集体が存在することを明らかにした。また,複合体を
原料に用いると得られたシート化の歩留りが約 10%増加し、さらに,複合体シートは混合
物シートに比べて比表面積が大きいという特徴を見出した。
第五章の総括として,本研究で示した新規分析法は,単に内添製紙薬品の添加効果の評価
をだけではなく,既存法では困難であったパルプ分散液中の各物質の凝集/定着状態を定
量的・定性的に解析できるため,これまでよりも詳細に製紙分野の各種メカニズムを解明で
きるとしている。また,第四章で示したパルプ繊維表面部位に選択的に無機微粒子を効率的
に複合化する技術については,世界レベルで実用化に向けた研究開発が進められており,循
環型資源が着目される現状においては,これまでの「紙」を超えた「植物繊維/無機複合化
新素材」として今後進展していくと期待できる。そのような背景において,複合化状態を簡
便かつ詳細に分析できる本法は,有用であると考えられる。
以上のように,本研究の結果,TFF を用いる分析方法は製紙プロセスおよび新規パルプ系
素材の解析・評価・最適化に極めて有用であることを明らかにした。これらの成果は,今後
製紙技術の高効率化,新規パルプ/無機ナノ粒子複合化機能材料の研究開発を進める上で
貢献できる技術と考えられ,本研究成果は,学術的にも応用-実用化技術としても重要であ
る。従って,審査員一同は,本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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