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大学・研究所にある論文を検索できる 「パルスオキシメトリを用いた定量化毛細血管再充満時間の測定と組織潅流に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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パルスオキシメトリを用いた定量化毛細血管再充満時間の測定と組織潅流に関する研究

山本, 幸 東京大学 DOI:10.15083/0002007084

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名

山本



本研究は毛細血管再充満時間(capillary refilling time, 以下 CRT)が非侵襲的で迅速に
末梢循環血流を評価できる指標であることに着目し、それが再現性の乏しさから客観性に
欠ける指標と言われている欠点を解消するためにパルスオキシメータの原理を応用して定
量化毛細血管再充満時間(quantitative CRT, 以下 Q-CRT)および吸光度変化(delta Ab, 以
下ΔAb)を測定し、それらが末梢循環血流を評価する指標として有用であるかを明らかに
するために行ったものである。測定値の信頼度評価や先行研究の再現性検証、測定値の経
時的変化検証、肝移植術周術期患者を対象とした前向きコホート研究を行い、下記の結果
を得ている。
1.

健常人を対象に測定した 41 回分の Q-CRT、ΔAb について平均値、標準偏差、変動係数を
求め、連続測定(3~5 回)時の測定値の信頼度を確認したところ、変動係数が最小であった
のは Q-CRT は 3 回、ΔAb は 4 回の時であり、変動係数は Q-CRT よりΔAb の方が小さか
った。また、肝移植術後患者における性別、年齢、体温との関連では、性別に群間差はな
かったが、年齢が低いほど Q-CRT は短く、ΔAb は大きい傾向を示し、体温が高いほど
Q-CRT が短く、ΔAb は大きい傾向にあった。健常人を対象とした外気温に伴う変化および
低体温患者の復温に伴う変化の検証では、低温環境・低体温であるほど Q-CRT は延長し、
ΔAb は小さい傾向を示し、先行研究の結果に合致していた。更に、敗血症患者を対象に、
各臨床パラメータと 2 指標との関連を検証した結果、先行研究と同様に血中乳酸値が高い
ほど Q-CRT は延長し、ΔAb は短い傾向にあった。加えて、分時換気量が Q-CRT、ΔAb
と強い相関を示しており、代謝亢進による CO2 産生増加とそれに伴う換気量の増加が、末
梢組織潅流上昇と関連していると考えられた。

2.

ICU に 5 日以上滞在した患者を対象に、Q-CRT、ΔAb を経時的に測定し、各臨床パラメー
タと 2 指標の関連を調べた結果、血中乳酸値や分時換気量がそれぞれ Q-CRT、ΔAb と連動
した変化をしている傾向が観察され、Q-CRT とΔAb のいずれも臨床経過に合致して、末梢
組織への潅流を反映していると考えられた。

3.

周術期の輸液管理に難渋することの多い肝移植術後患者 33 名(生体間移植術後患者 27 名
81.8%)を対象とし、患者のアウトカム(ICU 滞在日数、術後在院日数、術後 14 日間の腹
水総量)と ICU 入室時の Q-CRT、ΔAb の関連を調べた結果、それぞれで強い相関(ICU
滞在日数; Q-CRT ρ=0.28 , p=0.12, ΔAb ρ=-0.42, p=0.02、術後在院日数; Q-CRT ρ
=0.41 , p=0.02, ΔAb ρ=-0.35 , p<0.01、14 日間の腹水総量; Q-CRT ρ=0.52 , p<0.01, Δ
Ab ρ=-0.57 , p<0.0001)が確認され、ICU 入室時の Q-CRT およびΔAb が肝移植術後患者

の周術期管理の一助になりうる可能性が示された。更に、ICU 入室時の Q-CRT、ΔAb と体
温、平均動脈圧、門脈血流との間に強い相関、Q-CRT と乳酸値に弱い相関が見られ、これ
ら 2 指標が移植したグラフト肝血流やグラフト機能回復の程度を反映している可能性も示
された。また、術前腹水量が多いほど術後腹水量も多い傾向が見られ、難治性腹水を呈す
る患者は統計学的に術直後の Q-CRT が長く、ΔAb が小さかった。一方、術翌日に測定し
た Q-CRT、ΔAb は主要評価項目との間に有意な関連はなく、連続測定値として求めた術直
後から術翌日にかけての Q-CRT、ΔAb 変化量との関連も見られなかった。血中乳酸減少率
(乳酸クリアランス)と Q-CRT、ΔAb 変化量、主要評価項目間との関連も検証したが、こ
れら全てにおいて統計学的に有意な関連はなかった。

以上より、自動圧迫装置を用いることで CRT の欠点である再現性の乏しさが改善され、パ
ルスオキシメータを用いてそれを定量化することに成功した。本研究は Q-CRT およびΔAb
という新しい 2 つの指標が、信頼性が高く、かつ客観性のある非侵襲的な末梢組織潅流の
指標となりうる可能性を示した。また、hyperdynamic state にありながらも末梢組織潅流が
低下しうる病態を呈する敗血症患者や肝移植術後患者においてもこれら 2 つの指標が末梢組織
潅流を反映しうる可能性も示した。厳密な循環動態モニタリングを要する集中治療室や手術室に
おける応用をはじめ、非侵襲的で簡便な循環モニタリング指標の発展に貢献をなすと考えられる。

よって本論文は博士(



学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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