リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「ラフィド藻Chattonella marinaの抗酸化酵素遺伝子の光誘導性および発現制御機構に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

ラフィド藻Chattonella marinaの抗酸化酵素遺伝子の光誘導性および発現制御機構に関する研究

向井, 幸樹 MUKAI, Koki ムカイ, コウキ 九州大学

2020.03.23

概要

ラフィド藻 Chattonella marina は西日本を中心に養殖魚等に甚大な漁業被害をもたらしてきた。本種は夏季の高光強度下で数週間ブルームを維持でき,その強光耐性機構を理解することはブルーム形成機構を解明するうえで極めて重要である。先行研究において,C. marina から抗酸化酵素(antioxidant enzyme,AOE) peroxiredoxin (PRX)を同定した。本タンパク質量は増殖速度や光合成活性と有意な正の相関を示すため,PRX は活発な光合成により産生される活性酸素種 (ROS) を分解し,増殖の維持に寄与すると推測された。そこで本研究では,C. marina の PRX を含む AOE 遺伝子を同定し,強光等に対する発現応答を調べて AOE の機能を推定するとともに,RNA-seq により増殖に関与する遺伝子群の解析および増殖能力を評価する候補遺伝子の探索を行った。

まず,既に明らかとなっている C. marina PRX の N 末端アミノ酸配列情報を基に cDNA 配列を決定後,アミノ酸配列を推定した結果,システイン残基の位置から本 PRX は 2-Cys PRX であると判明した。また inverse PCR 法により PRX 遺伝子近傍の遺伝子配置を調べた結果 (ycf59 – 2-CysPRX– rpl35 – rpl20),本遺伝子は葉緑体ゲノムに存在することが強く示唆された。さらに RNA-seq 解析により他 5 種の AOE 遺伝子 (Cu/Zn superoxide dismutase, Cu/Zn SOD; glutathione peroxidase, GPX; catalase, CAT; ascorbate peroxidase, APX; thioredoxin, TRX) の配列を決定した。

次に光量子束密度 (photon flux density,PFD) 100 µmol photons/m2/s (以下 PFD),14h 明:10h 暗の光条件下で定常期初期まで培養した NIES-1 株を 3 つの PFD 区 (0,100 および 1000 PFD,N=4) に分けて培養後,定量 PCR により同定した AOE 群の遺伝子発現を調べた結果,開始 3 日目で 1000 PFD区における PRX 発現量が他 PFD 区に比べて有意に増加したが,他の遺伝子では変化しなかった。また,1000 PFD 区では開始 3 日目以降に細胞当たりの H2O2 濃度が有意に増加し,細胞密度も減少したため,細胞内に蓄積した ROS を分解するために PRX の発現が誘導されたが,AOE の分解能力を超えて ROS が蓄積した結果,細胞が死滅したと考えられた。

一方,24 時間暗所 (0 PFD) で培養した NIES-1 株を,引き続き 0 または 100 PFD (14h 明:10h 暗,N=4) で培養した結果,光照射開始翌日には APX 以外の 100 PFD 区における発現量が 0 PFD 区に比べて有意に増加していたため,暗条件下では AOE 遺伝子の発現量が一旦低下し,100 PFD の光により誘導されることが示された。さらに暗馴致した NIES-1 株に光化学系 II (PSII) の阻害剤 DCMU (10µM) を暴露後(N=4),6 時間光照射して遺伝子発現を調べた結果,全ての AOE 遺伝子の発現が DCMU暴露により有意に抑制されたため,AOE の発現に PSII の酸化還元状態や ROS 等が関与していると推測された。

さらに既に明らかとなっている PRX 低発現株 (NIES-3) および通常発現株 (NIES-1) を用い,異なる PFD 下 (20,110 および 520 PFD,14h 明:10h 暗,N=4) で 37 時間培養した結果,両株ともPFD 依存的な H2O2 (明期および暗期) および過酸化脂質 (明期) の増加が確認されたが,両株間でそれらの蓄積程度に明確な違いは認められなかった。一方,両株とも 20 PFD 区に比べて 520 PFD区の光合成活性 (Fv/Fm 比) が有意に阻害されており,NIES-1 株では最大 27.3%の阻害率であったのに対し,NIES-3 株では 52.4%と阻害の程度が大きく,PRX 発現量が本種の光阻害耐性に関与していることが示唆された。

また,本種の増殖段階 (増殖期,定常期初期,中期,後期,N=3) で発現変動する遺伝子を調べるため,RNA-seq および de novo assembly により得られた contig に既存の Stramenopiles 遺伝子情報を用いてアノテーションを行った結果,発現量が増殖期から定常期中期にかけて増加または減少傾向を示す遺伝子が約 2000 得られた。光合成の光捕集,光化学系および ATP 合成系に関連する遺伝子の多くは増殖期に高い発現を示し,定常期中期にかけて徐々に減少した。本論文で調べた AOE遺伝子の殆どは増殖段階を通じて比較的安定な発現を示したが,2-Cys PRX は定常期以降では増殖期の 30%未満まで低下し,増殖期の活発な光合成により発生する ROS の分解に寄与していると考えられた。

以上の結果から, C. marina の 6 種の AOE 遺伝子発現の光応答性が明らかとなり,PSII の酸化還元状態や ROS 等が発現誘導に関与すると示唆された。また PRX のみが強い PFD でさらに誘導され,光阻害耐性に寄与していること,PRX 遺伝子の発現量が増殖低下とともに減少したため,同様の発現傾向を示す他の光合成関連遺伝子とともに増殖能力評価に有用であることが示唆された。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る