リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Preliminary study to classify mechanisms of mitochondrial toxicity by in vitro metabolomics and bioinformatics」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Preliminary study to classify mechanisms of mitochondrial toxicity by in vitro metabolomics and bioinformatics

日比野, 優衣 名古屋大学

2023.05.30

概要

主論文の要旨

Preliminary study to classify mechanisms of
mitochondrial toxicity by in vitro metabolomics
and bioinformatics
In vitroメタボロミクスとバイオインフォマティクスによる
ミトコンドリア毒性のメカニズムを判別するための予備的研究

名古屋大学大学院医学系研究科
社会生命科学講座

総合医学専攻

法医・生命倫理学分野

(指導:石井 晃
日比野 優衣

教授)

【緒言】
ミトコンドリア毒性は薬物性肝障害の主要な毒性発現機序の一つであり、創薬にお
ける重要な評価項目の 1 つである。ミトコンドリア毒性には呼吸鎖複合体阻害、脱共
役、β 酸化阻害などの複数の機序が知られており、それらの毒性機序を判別すること
も重要となる。従来、ミトコンドリア毒性評価とその機序の推定には細胞内酸素消費
速度を指標としたアプローチが用いられてきたが、ミトコンドリア毒性機序を分子指
標から判別できる評価手法の構築が不可欠である。
そこで本研究では、毒性機序の異なる複数のミトコンドリア毒性化合物を曝露した
HepG2 細胞のメタボローム解析を行い、バイオインフォマティクスを用いてミトコン
ドリア毒性機序を判別するための潜在的分子指標の特定を試みた。
【方法】
ヒト肝がん由来細胞株の HepG2 細胞(3×10 5 cells/well)をグルコース含有培地で一晩
培養した後、既報に従って Warburg 効果(好気的解糖)を抑制するためにガラクトース
培地(グルコース非含有培地)に置換して 4 時間培養した(Kamalian et al., Toxicol. in
Vitro, 2015)。 4 種 類 の ミ ト コ ン ド リ ア 毒 性 化 合 物 、 rotenone(呼 吸 鎖 複 合 体 阻 害 )、
nefazodone(呼吸鎖複合体阻害)、carbonyl cyanide-3-chlorophenylhydrazone(CCCP、脱共
役)、perhexiline(β 酸化阻害)に加え、細胞毒性陽性対照として digitonin、vehicle コン
トロールとして DMSO を各々2 時間曝露した(n=15)。なお、各化合物の曝露濃度は、
Mitochondrial ToxGlo assay を使用し、細胞毒性が概ね観察されない条件でかつ、ATP 産
生量が約 50%に低下する濃度に設定した。各化合物の曝露濃度は、rotenone が 0.1 μM、
CCCP が 0.5 μM、nefazodone が 20 μM、perhexiline が 6.25 μM、digitonin が 4 μM とし
た。各化合物の曝露後に冷メタノールで細胞を固定し、細胞懸濁液を調製した。調製
した細胞懸濁液について、改変した Bligh & Dyer 法を用いてメタボロームを抽出した
後、凍結乾燥および誘導体化を行い、既報に従って MS-based metabolomics を行った
(Zaitsu et al., Anal. Bioanal. Chem., 2019)。また、得られたメタボロームデータについ
てバイオインフォマティクスによる解析を行った。具体的には、既報に従って統計解
析言語 R を用いた潜在構造投影判別分析(PLS-DA)および代謝パスウェイ解析(Zaitsu
et al., Anal. Chem., 2020)、ならびに機械学習アルゴリズム Random Forest による判別モ
デルの検証および相関ネットワーク解析(Zaitsu et al., ACS Omega, 2022)を実施した。
【結果および考察】
メタボローム解析の結果、解糖系および TCA 回路中間体、アミノ酸および脂肪酸を
中心とした 125 成分が検出された。検出された全成分を説明変数として PLS-DA を実
施したところ、rotenone 群および nefazodone 群は、第 1 主成分軸に沿って他群と分離
した。rotenone および nefazodone は呼吸鎖複合体阻害によって NADH や FADH 2 の酸
化を抑制し、それに伴い TCA 回路の活動が低下することで、結果として解糖系にも影
響を及ぼすことが知られており(Hou et al., J. Cell. Mol. Med., 2018)、これが rotenone 群

-1-

および nefazodone 群のメタボロームプロファイルが他群と異なる要因と考えられた。
そこで代謝パスウェイ解析を行った結果、rotenone 群および nefazodone 群において、
クエン酸やコハク酸などの TCA 回路中間体に加え、解糖系中間体の一部が低値を示
すことが確認できた(図 1)。
また、メタボロームプロファイルの差異を明確化するために、PLS-DA において群
分離に寄与する説明変数の指標となる Variable Importance for Prediction(VIP)を利用し、
アルゴリズム上の criteria として提示されている VIP>1.0 を用いて、群分離に寄与して
いる説明変数を絞り込んだ(50 成分)。この絞り込みを行った成分を説明変数として
PLS-DA を実施した(図 2)。図 2 に示すように、各群は 1)rotenone および nefazodone、
2)CCCP、3)digitonin および perhexiline、4)vehicle の 4 つに分類できることが明らかと
なった。したがって、この 50 成分を用いればミトコンドリア毒性機序をメタボローム
プロファイルから判別できる可能性が示唆された。さらに、この結果を検証するため
に機械学習アルゴリズムの Random Forest による判別モデルの構築を行った。その結
果、Random Forest による各群の識別精度は rotenone が 0.94、CCCP が 0.93、nefazodone
が 0.87、perhexiline が 0.90、digitonin が 0.83、vehicle が 0.94 と非常に良好な結果を示
した。以上の結果、ガラクトース培地で培養した HepG2 細胞の in vitro メタボローム
解析を行うことで、ミトコンドリア毒性機序の判別が可能であることが明らかとなっ
た。
さらに、代謝ネットワーク内において影響力を持つハブ分子を、データ駆動型相関
ネットワーク解析から特定することを試みた。R>0.75 を基準とした相関ネットワーク
解析の結果、媒介中心性指標からグルタミン酸、コハク酸ならびに β-アラニンがハブ
分 子 と し て 特 定 さ れ た (図 3)。 グ ル タ ミ ン 酸 と β-ア ラ ニ ン は 、 rotenone 群 お よ び
nefazodone 群で顕著に増加していた。また、コハク酸は rotenone 群および nefazodone
群で低下し、CCCP 群で増加していた。
呼吸鎖複合体阻害作用を持つ rotenone および nefazodone を曝露した細胞では TCA
回路の活動が抑制されるため、コハク酸を含めた TCA 回路中間体が相対的に低下す
る。さらに、TCA 回路の抑制に伴い、anaplerosis によるグルタミン酸の流入(Owen et
al., J. Biol. Chem., 2002)が低下することで、結果的に rotenone 群および nefazodone 群
でグルタミン酸が蓄積したと考えられた。また、CCCP は脱共役を介して間接的に呼
吸鎖複合体に影響することが知られているが、脱共役剤では FAD から FADH 2 への生
体内変換を阻害することが報告されている(To et al., Arch. Biochem. Biophys., 2010)。
周知の通り、ミトコンドリアに存在する呼吸鎖複合体 II(コハク酸脱水素酵素)はコハ
ク酸をフマル酸に変換する際に補酵素として FAD を必要とする。よって、脱共役剤で
ある CCCP が FAD から FADH 2 への生体内変換を阻害することで、結果的にコハク酸
が蓄積したと考えられた。
また、rotenone が呼吸鎖複合体を阻害すると細胞内が低酸素環境になるとの報告が
ある(Prior et al., PLoS One, 2014)。一方、β-アラニンは、低酸素環境下における生体防
御作用を示すことが報告されており(Vairetti et al., Biochim. Biophys. Acta, 2002)、細胞

-2-

内低酸素環境下で誘導される細胞内 Na イオンの蓄積を阻害することで細胞内のイオ
ン恒常性を維持し、細胞内浸透圧を安定化するとされる。したがって、呼吸鎖複合体
を阻害する rotenone 群および nefazodone 群では細胞内が低酸素環境下となることが考
えられ、その結果、細胞内低酸素環境に対して生体防御作用を示す β‐アラニンが相対
的に増加したと推定された。
以上の考察から、相関ネットワーク解析から特定された 3 つのハブ分子は呼吸鎖複
合体阻害および脱共役の分子指標になり得るものと考えられた。
【結語】
本研究では、in vitro メタボローム解析とバイオインフォマティクスを用いることで、
ミトコンドリア毒性の主要な機序である呼吸鎖複合体阻害と脱共役を代謝プロファイ
ルから判別できることを明らかとした。さらに、呼吸鎖複合体阻害および脱共役の機
序を判別するための分子指標も明らかにした。本研究は、薬物性肝障害の要因の 1 つ
であるミトコンドリア毒性の機序を代謝プロファイルや分子指標で判別するための新
たなアプローチを提示したものであり、今後、創薬におけるミトコンドリア毒性評価
法などへの応用が強く期待できる。

-3-

この論文で使われている画像

参考文献

Butow, R.A., 1967. The effect of rotenone on beef liver glutamic dehydrogenase.

Biochemistry 6, 1088–1093. https://doi.org/10.1021/bi00856a018.

Csardi, G., Nepusz, T., 2006. The igraph software package for complex network research.

InterJ. Complex Syst. 1–9.

Degli Esposti, M., 1998. Inhibitors of NADH-ubiquinone reductase: an overview.

Biochim. Biophys. Acta 1364, 222–235. https://doi.org/10.1016/s0005-2728(98)

00029-2.

Garcia-Canaveras, J.C., Jimenez, N., Gomez-Lechon, M.J., Castell, J.V., Donato, M.T.,

Lahoz, A., 2015. LC-MS untargeted metabolomic analysis of drug-induced

hepatotoxicity in HepG2 cells. Electrophoresis 36, 2294–2302. https://doi.org/

10.1002/elps.201500095.

11

Y. Hibino et al.

Toxicology and Applied Pharmacology 457 (2022) 116316

Zaitsu, K., Hayashi, Y., Suzuki, K., Nakayama, H., Hattori, N., Takahara, R., Kusano, M.,

Tsuchihashi, H., Ishii, A., 2015. Metabolome disruption of the rat cerebrum induced

by the acute toxic effects of the synthetic cannabinoid MAM-2201. Life Sci. 137,

49–55. https://doi.org/10.1016/j.lfs.2015.05.013.

Zaitsu, K., Hayashi, Y., Murata, T., Ohara, T., Nakagiri, K., Kusano, M., Nakajima, H.,

Nakajima, T., Ishikawa, T., Tsuchihashi, H., Ishii, A., 2016. Intact endogenous

metabolite analysis of mice liver by probe electrospray ionization/triple quadrupole

tandem mass spectrometry and its preliminary application to in vivo real-time

analysis. Anal. Chem. 88, 3556–3561. https://doi.org/10.1021/acs.

analchem.5b04046.

Zaitsu, K., Noda, S., Iguchi, A., Hayashi, Y., Ohara, T., Kimura, Y., Koketsu, Y., Kosaki, T.,

Kusano, M., Sato, T., Ishikawa, T., Tsuchihashi, H., Suzuki, K., Ishii, A., 2018.

Metabolome analysis of the serotonin syndrome rat model: abnormal muscular

contraction is related to metabolic alterations and hyper-thermogenesis. Life Sci.

207, 550–561. https://doi.org/10.1016/j.lfs.2018.06.031.

Zaitsu, K., Noda, S., Ohara, T., Murata, T., Funatsu, S., Ogata, K., Ishii, A., Iguchi, A.,

2019. Optimal inter-batch normalization method for GC/MS/MS-based targeted

metabolomics with special attention to centrifugal concentration. Anal. Bioanal.

Chem. 411, 6983–6994. https://doi.org/10.1007/s00216-019-02073-w.

Zaitsu, K., Eguchi, S., Ohara, T., Kondo, K., Ishii, A., Tsuchihashi, H., Kawamata, T.,

Iguchi, A., 2020. PiTMaP: a new analytical platform for high-throughput direct

metabolome analysis by probe electrospray ionization/tandem mass spectrometry

using an R software-based data pipeline. Anal. Chem. 92, 8514–8522. https://doi.

org/10.1021/acs.analchem.0c01271.

Zaitsu, K., Asano, T., Kawakami, D., Chang, J., Hisatsune, K., Taniguchi, M., Iguchi, A.,

2022. Metabolomics and data-driven bioinformatics revealed key maternal

metabolites related to fetal lethality via Di(2-ethylhexyl)phthalate exposure in

pregnant mice. ACS Omega 7, 23717–23726. https://doi.org/10.1021/

acsomega.2c02338.

12

...

参考文献をもっと見る

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る