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大学・研究所にある論文を検索できる 「Lidocaine inhibits vascular endothelial growth factor-A-induced angiogenesis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Lidocaine inhibits vascular endothelial growth factor-A-induced angiogenesis

鈴木, 章悟 名古屋大学

2022.12.22

概要

【緒言】
がん治療における腫瘍血管新生抑制療法、そして重症虚血肢や脳血管閉塞に対する間接的血行再建療法など、血管新生が関連する治療法が多く存在する。これらの治療時に使用する麻酔薬、鎮静剤、鎮痛剤などの麻酔関連薬剤が、治療の成否に影響する可能性がある。本非臨床研究では、まず作用機序の異なる5種類の麻酔関連薬剤(フェンタニル、ミダゾラム、プロポフォール、ケタミン、リドカイン)の臨床有効血中濃度において、血管内皮細胞増殖因子A(vascular endothelial growth factor-A: VEGF-A)誘発血管新生に対する作用を検討した。それらのうち、有意な血管新生抑制作用を示した局所麻酔薬リドカインについて、作用メカニズムの解析を行った。

【方法】
VEGF-A誘発血管新生に対する薬剤の作用は、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)と正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)が2次元的に24ウェルプレートにセットされた共培養アッセイキット(倉敷紡績)を用いて評価した。被験薬物と10ng/mlのVEGF-A165をアッセイ系に同時添加し、11日間培養した。形成された管腔を抗ヒトCD31抗体で染色し、Chalkleyカウント用グリッドレンズを用いて評価した。

リドカインの細胞傷害性評価は乳酸脱水素(LDH)アッセイキット(和光純薬)を用いて行った。HUVECとNHDFのそれぞれにリドカインを0、1、3、10μg/mlの濃度で添加した。24時間培養後に培地を分取し、LDH活性を測定した。

HUVECにおけるVEGF-A誘発細胞増殖に対するリドカインの作用は、WST-8アッセイキット(同仁堂)を用いて行った。HUVECに0、1、3、10μg/mlのリドカインと10ng/mlのVEGF-A165を同時添加し、72時間培養した。細胞にWST-8試薬を添加し、生細胞が形成するWST-8ホルマザンを比色定量した。HUVECのVEGF-A誘発細胞遊走に対するリドカインの作用は、ボイデンチャンバーシステムを用いて行った。上層に播種したHUVECにリドカインを0、1、3、10μg/mlの濃度で添加し、下層の培養液にはVEGF-A16510ng/mlを添加した。24時間培養後に、上層底面の微小孔を通して下層に移動した細胞をカルセインAM蛍光色素で染色し、その蛍光強度を測定した。

VEGF-AがVEGFR-2受容体に結合した後、血管新生に至るまでのリン酸化シグナル伝達系に対するリドカインの作用は、ウエスタンブロッティング法で評価した。HUVECを無血清培地で1時間培養した後、0、1、3、10μg/mlのリドカインと10ng/mlのVEGF-A165を同時添加し、10分後に細胞ホモジネートからサンプルを調製した。VEGFR-2、PLCγ、ERK1/2、p38MAPK、FAK、Src、Aktについて、リン酸化蛋白の発現解析を行った。

【結果】
臨床有効血中濃度のフェンタニル(3ng/ml)、ミダゾラム(0.1μg/ml)、プロポフォール(3μg/ml)、ケタミン(0.3μg/ml)、リドカイン(2μg/ml)のVEGF-A165誘発血管新生に対する作用の検討では、ケタミンとリドカインが有意な抑制作用を示した。さらにリドカインは1-10μg/mlの濃度範囲で濃度依存的かつ有意な血管新生抑制作用を示した(Figure1)。このリドカイン濃度範囲において、HUVECとNHDFに対する細胞毒性は観察されなかった。

VEGF-A165無処置に対し、VEGF-A165添加によりHUVECは116%まで増殖した。この細胞増殖は1-10μg/mlのリドカイン添加により濃度依存的に抑制され、10μg/mlでは統計学的に有意であった(Figure2b)。一方、VEGF-A165添加によりHUVECの細胞遊走は380%まで増加したが、リドカインの添加はこの作用に影響を及ぼさなかった(Figure2a)。

ウェスタンブロッティング解析では、VEGF-A165添加によりVEGFR-2、FAK、Akt、Erk、Src、PLCγ、p38それぞれのリン酸化蛋白の発現が有意に増加した(Figure3)。リドカイン添加はVEGFR-2のリン酸化を濃度依存的に抑制し、3及び10μg/mlでは有意であった。しかしながら、他の蛋白のリン酸化に有意な変化は観察されなかった。

【考察】
本研究の最も重要な発見は、リドカインが中等度以上の中毒症状を起こさない血中濃度である1-10μg/mlの濃度範囲で、濃度依存的かつ有意にVEGF-A誘発血管新生抑制作用を示したことである。この抑制メカニズムが、VEGFR-2リン酸化の阻害および、それに引き続く細胞増殖の抑制であることが示唆された。

リドカインの血管新生抑制作用は臨床応用の観点からは、癌治療における有用性と血行再建治療における不利益が容易に想像される。癌治療においては、リドカインの全身投与が一部の癌患者に転移抑制効果を示した報告があり、リドカインの強力な抗炎症作用と自然免疫監視システムに対する作用によることが示唆されている。VEGFの作用を阻害することがいくつかの抗腫瘍薬の主要機序となっており、今回発見した血管新生抑制作用も含め、リドカインは臨床において癌の転移と再発を抑制する可能性がある。

血行再建治療では、虚血組織に対する側副血行の発達を目的に血管新生増殖因子またはその遺伝子が投与される。近年、高齢化や食習慣の変化により、このような治療が必要となる患者群が増加している。本研究の結果から、リドカインは血行再建治療には不利益を生じる可能性が考えられるが、未だ臨床でのエビデンスは得られていないため、リドカインの作用を実際の臨床の場で早急に検証する必要がある。

【結論】
リドカインは、臨床有効血中濃度範囲において、細胞傷害を引き起こすことなくVEGF誘発血管新生に対する抑制作用を示した。その作用メカニズムは、VEGFR-2のリン酸化抑制およびその後の細胞増殖抑制であることが示唆された。

癌治療や血行再建治療における、麻酔、鎮痛方法の選択や将来の研究に新たな知見を示した。

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