Combination of Electrospun Nanofiber Sheet Incorporating Methylcobalamin and PGA-Collagen Tube for Treatment of a Sciatic Nerve Defect in a Rat Model
概要
〔目 的(Purpose)〕
末梢神経欠損損傷における標準治療は自家神経移植であるが、採取部の犠牲という大きなデメリットを伴う。代替法として様々な人工神経が開発されてきたが、いまだその成績は自家神経移植には及ばず、いかに応用を加えて人工神経移植の成績を向上させるかが重要課題となっている。
一方、我々は末梢神経再生促進能を有するメチルコバラミン(MeCbl)を含有したMeCbl含有局所徐放ナノファイバーシート(MeCbl sheet)を開発し、ラット坐骨神経圧挫損傷モデルにおいて坐骨神経周囲にMeCbl sheetを留置することで末梢神経再生を促進する事を明らかとした。そこで本研究はMeCbl sheet併用による人工神経移植の成績向上の可能性に着目し、ラット坐骨神経欠損モデルにおけるMeCbl sheetと神経再生誘導チューブ(Polyglycolic acid tube filled with collagen sponge: PGA-c)の併用効果を検討した。
〔方 法(Methods)〕
MeCbl sheetの徐放能評価として、37°C・50mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の中に14×10mm大のMeCbl sheetを38週間留置して、PBS内のMeCbl濃度の推移を測定した(n=3)。また6週齢ラットの坐骨神経周囲に10×7mm大のMeCbl sheetを留置して48時間後までの座骨神経内MeCbl濃度(n=3)を測定し、MeCblを留置しない坐骨神経内MeCbl濃度(n=2)と比較した。
MeCbl sheetとPGA-cの併用効果の検討として、6週齢ラットを使用し坐骨神経の展開のみを行ったSham群(n=10)、坐骨神経10mmを翻転縫合したAutograft群(n=10)、坐骨神経10mm欠損部をPGA-cで架橋したPGA-c群(n=9)、坐骨神経10mm欠損部をPGA-cで架橋し14×10mm大のMeCbl sheetを留置したPGA-c/Sheet®(n=8)の4群を作成した。術後12週における運動機能評価(Sciatic functional index、前脛骨筋isometric tetanic force、前脛骨筋湿重量)、感覚機能評価(von Frey filament test)、電気生理学的評価(Terminal latency、Nerve conduction velocity、Compound muscle action potential)、坐骨神経架橋部の組織学的評価(トルイジンブルー染色: 有髄軸索面積%、蛍光免疫染色: 髄鞘化率・軸索数、電子顕微鏡検査: G-ratio・有髄軸索周径)を行った。
〔成 績(Results)〕
MeCbl sheetの38週間の安定したPBS内へのMeCblの徐放を認めた。またMeCbl sheetを留置しない坐骨神経内MeCbl濃度と比較して、MeCbl sheetを坐骨神経に留置後48時間内の坐骨神経内MeCbl濃度の有意な上昇を認めた。
von Frey filament test、terminal latency、有髄軸索面積%、髄鞘化率、g-ratioにおいてPGA-c/Sheet群はPGA-c群に対して有意な改善を認めた。特にvon Frey filament test, 有髄軸索面積%, 髄鞘化率においてPGA-c群がAutograft群に対して有意に改善が乏しかった一方、PGA-c/Sheet群ではAutograft群に対して有意な差を認めなかった。運動機能評価においてPGA-c/Sheet群とPGA-c群の間に有意な差を認めなかった。
〔総 括(Conclusion)〕
MeCbl sheetはラット坐骨神経欠損モデルにおいてPGA-cと併用することで、術後12週での末梢神経再生を促進したが、運動機能改善の促進は認めなかった。MeCbl sheetは末梢神経欠損に対する人工神経移植術において、神経再生を促進する新たな治療方法となる可能性がある。