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大学・研究所にある論文を検索できる 「小胞体分子シャペロンCalnexinとPDIファミリータンパク質ERp29が形成する複合体に関する生化学的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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小胞体分子シャペロンCalnexinとPDIファミリータンパク質ERp29が形成する複合体に関する生化学的研究

中尾 仁美 富山大学

2021.03.23

概要

本研究は、分子シャペロン Calnexin/Calreticulin (CNX/CRT)と複合体を形成する Protein disulfide isomerase ファミリータンパク質(PDIs)の探索と、CNX/CRT-PDIs 複合体の生化学的意義の解明を目的とする。

小胞体において糖鎖修飾を受けた新生糖タンパク質は、糖タンパク質品質管理機構を経て天然構造へ至る。この品質管理機構は、分子シャペロンCNX/CRT によるフォールディングの補助、および、フォールディングセンサーUDP-glucose glycoprotein glucosyltransferase (UGGT) による高次構造の形成確認で構成され、アンフォールド状態の糖タンパク質のタンパク質の分泌を防いでいる。CNX/CRT は、ハイマンノース型糖鎖上にグルコースを有する糖タンパク質を基質とし、フォールディング補助を行うレクチン型のシャペロンである。これまでに、両シャペロンはPDI ファミリータンパク質 (PDIs) の 1 つであるERp57 と複合体を形成することが明らかとなっている。PDI は、分子内に Cys-Xxx-Xxx-Cys (CXXC motif)を有しており、ジスルフィド結合形成における酸化還元触媒として機能する。PDI 類縁体であるERp57 もCXXC motif を有しており、ジスルフィド結合形成の触媒として機能する。したがって、CNX/CRT は ERp57 と複合体を形成することで、協同的に新生糖タンパク質のフォールディングを補助していると考えられている。一方、これまでに、ERp57 以外のPDI ファミリータンパク質の糖タンパク質品質管理機構への関与は示されていない。そこで本研究では CNX と複合体を形成する PDIs の探索を行った。また、新たに示された CNX-PDIs 複合体の機能や性質に関する検討を行った。

はじめに、CNX と相互作用する PDIs の探索を行った。CNX 固定粒子を作製し、5 種の組み換えPDIs (ERp18, ERp27, ERp29, ERp44, PDIp)タンパク質溶液を用いたプルダウン実験を行った。この結果、CNX がERp29 と相互作用することが明らかとなった。また、CNX-ERp29 複合体と CNX-ERp57 複合体の解離定数は同程度であることが示された。さらに、CNX 内部の ERp57 との結合に関わるアミノ酸を変異させたCNX 変異体を作製し、ERp57 及びERp29 に対するプルダウン実験を行った。この結果、CNX 変異体とERp57 の複合体形成率は 87.5%低下した。一方、CNX 変異体と ERp29 の複合体形成率の低下は 50%程度にとどまった。このことから、CNX におけるERp57 とERp29 の直接的な相互作用部位は異なることが示唆された。

ERp29 は、ホモダイマーを形成する性質を持つ PDIs であり、2 種類のドメイン (b domain, D domain) から構成される。このうち、PDI 類似構造であるb domain はジスルフィド結合の酸化還元能力は有さない一方で、ERp29 ダイマーの結合ドメインとして機能することが知られている。また、ERp29 の D domain はCNX/CRT と結合することが報告されている。このことから、CNX-ERp29 複合体においてERp29 が 2 つのCNX を連結するリンカーとして機能し、CNX ダイマーが形成すると予想した。CNX 固定粒子を用いたプルダウン実験、クロスリンク実験及び凝集沈殿法により、ERp29 を介したシャペロンダイマーの形成評価を行った。この結果、 CNX-ERp29 複合体の分子量が 2 分子の CNX と 2 分子の ERp29 の合計分子量とよく一致していることが示唆された。また、ERp29 を介してCNX が連結している可能性が示された。したがって、ERp29 を介した CNX ダイマーを形成していることが明らかとなった。また、CNX ホモダイマーだけでなく、CNX-CRT ヘテロダイマーについても形成することが示された。

続いて、CNX のシャペロン機能に対する ERp29 の影響を評価した。CNX-ERp29 複合体の表面疎水性、疎水性ペプチドとの結合性、タンパク質の熱凝集に対する抑制能力の 3 種の性質に関する評価を実施した。この結果、CNX-ERp29 複合体のシャペロン能力は CNX 単体と同程度であった。このことから、ERp29 を介したシャペロンのダイマー化はCNX のシャペロン機能の制御を目的としていないことが示された。またこのとき、ERp29 のシャペロン能力が非常に小さいことが示された。過去の報告で、ERp29 のホモログが特定のタンパク質に対するシャペロン能力を有することが報告されているため、ERp29 のシャペロン能力の有無についてさらなる検討を行うこととした。モデルとして、一般的なタンパク質とは異なる凝集体(線維)を形成する Amyloid 1-42 (A1-42)を使用した。ERp29 の共存条件でA1-42 の線維化を行い、アミロイド線維の形成を評価したところ、A1-42 の線維化の抑制が確認された。このことから、ERp29 が特異的なタンパク質に対してシャペロンとして機能する可能性が示された。さらに、CNX がERp29 の安定性に寄与することを予想し、ERp29 の熱安定性を評価した。50℃における ERp29 溶液の濁度を観察したところ、ERp29 溶液の経時的な濁度上昇が認められた。また、ERp29 溶液の濁度上昇は、共存する CNX の濃度に依存して抑制された。このことから CNX が ERp29 の熱安定性に寄与していることが示された。

本研究では、ERp29 が CNX と複合体を形成することを明らかにした。また、ERp29 を介してシャペロンがダイマーを形成していることを示した。CNX がERp29 を介してダイマー化する理由についてはさらなる検討が必要であるが、本研究で我々が見出した CNX-ERp29 複合体の形成は、ストレス状態においても ERp29 が安定に存在できる可能性を示している。

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参考文献

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