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大学・研究所にある論文を検索できる 「LAVA-Flex法を用いた高速頸部MRAの臨床応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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LAVA-Flex法を用いた高速頸部MRAの臨床応用

入江, 隆介 東京大学 DOI:10.15083/0002004986

2022.06.22

概要

【背景】脳血管障害の治療方針を決定する上で、頸動脈の評価は重要である。従来、頸動脈の評価には超音波検査の他、造影剤を用いた computed tomography angiography および magnetic resonance angiography(MRA)が低侵襲な検査法として広く用いられていたが、造影剤を用いる検査には小さくない侵襲性とリスクがあった。そのため、近年では非造影 magnetic resonance imaging(MRI)技術の開発が促進され、臨床の現場でます ます広く使用されるようになっている。頸動脈の評価には time-of-flight MRA(TOF MRA)が広く用いられているが、TOF MRA は画像の取得に数分程度の時間がかかることが一般的であり、その結果嚥下や身体全体の動きに起因するモーションアーチファクトの影響を受けやすい。急性期脳血管障害の患者や姿勢を維持するのが困難な患者の画像を撮影する場合、画質改善のために MRI 撮像時間を短縮することが望ましい。また、脳梗塞のリスク因子として頸動脈プラークの評価が重要であるが、TOF MRA は血流信号の可視化に重点が置かれており、それのみではプラークの評価に適さない。そのため、プラークの評価を目的とする場合には他のシークエンスを追加して撮像を行う必要があり、撮像時間の延長は避けられない。

本研究では、頸動脈 MRA の撮像時間を短縮するために liver acquisition with volume acceleration-flex(LAVA-Flex)法を適用した。LAVA-Flex は元々肝臓などの腹部臓器を撮像するための高速 MRI 撮像法として開発されたシークエンスであり、out-of-phase およびin-phase の画像を同時に取得し、water-only 画像および fat-only 画像を自動的に生成するため、一度の撮像で 4 つの臨床的に有用な画像を得ることができる。LAVA-Flex では、repetition time(TR)が従来の(conventional)TOF MRA(cTOF MRA)の約 6 分の 1 に設定されているため、撮像時間を大幅に短縮できる。MRA の撮像時間を短縮するために適用したという報告はこれまでになく、LAVA-Flex 法の複数の画像を取得できる点を頸動脈評価に活かす手法も報告されていない。LAVA-Flex のように TR が非常に短いシークエンスを MRA に応用するのは一般的でないが、血流の速い頸部であれば適用可能な可能性があると考えられた。

本研究の目的は、頸動脈 LAVA MRA を臨床で用いるために最適な撮像条件を検討し、頸動脈狭窄が疑われる患者において cTOF MRA の代替検査となり得る情報を提供できるかどうかを検討すること、また、頸動脈プラークを有する患者においてLAVA-Flex の複数のシークエンスを同時に取得できる特徴を活かして診断に有用な情報を得られるかどうかを検討することである。

【方法】7 人の健常被験者と 21 人の頸動脈狭窄が疑われて臨床医によって頸動脈 MRA の検査をオーダーされた患者を対象とし、すべての参加者に対して LAVA MRA および cTOF MRA の撮像を行った。撮像時間は LAVA MRA が 29 秒、cTOF MRA が 152 秒であった。まず LAVA MRA において血管内信号を描出するのに最適なフリップ角を決定するために、健常被験者においてフリップ角を変更して複数回の撮像を行った。予備的検討においてフリップ角を 13°と大きくすると動脈遠位部および分岐部の信号低下が目立っていたため、健常被験者の撮像ではフリップ角を 4°、7°、10°として撮像した。フリップ角を 4°とすると血管内全体の信号が弱く評価に適さなかったため、患者の撮像ではフリップ角を 7°、10°に設定した。

定量的評価として、MRA 画像軸位断の 6 つの断面に関心領域を設定し、血管内と脂肪の信号比(SIartery/fat)および血管内と筋肉の信号比(SIartery/muscle)を測定して各シークエンス間で比較した。視覚的評価として、最大強度投影法(MIP)画像を用いて頸動脈分岐部の形態に基づく画質評価、頸動脈分岐部における渦流による信号低下の評価を行った。頸動脈プラークを有する症例については LAVA MRA の water-only 画像、out-of-phase 画像、in-phase 画像、および cTOF MRA を用いて描出能を評価し、狭窄率を測定して比較した。

【結果】血管内と脂肪の信号比は、皮下脂肪が少ない若年健常被験者の頸部下部では LAVA MRA と cTOF MRA において有意な差が検出されなかったが、患者においては LAVA MRA の SIartery/fat が常に cTOF MRA より有意に大きかった。血管内と筋の信号比について、フリップ角 10°の LAVA MRA は cTOF MRA と比較して頸動脈近位で有意に大きく、頸動脈分岐部で同等、遠位では有意に小さい SIartery/muscle を示した。これらの定量的評価の結果から、LAVA MRA の撮像に最適なフリップ角は 10°であると考えられた。

視覚的評価において、LAVA MRA は頸動脈狭窄の形態を cTOF MRA と同等に評価することができ、渦流による信号低下も同等であることが示された。頸動脈プラークの評価において、LAVA MRA は複数のシークエンスを合わせて診断することによって cTOF MRAよりも有意に優れていることが示された。頸動脈狭窄率の比較において、LAVA MRA と cTOF MRA の計測結果に有意差はなかった。

【考察】LAVA MRA は定量的・視覚的評価のいずれにおいても頸動脈分岐部周辺では cTOF MRA と同等の結果を示した。LAVA-Flex の water-only 画像は脂肪抑制像であるため背景信号が十分に抑制され、MRA 画像の画質向上につながったと考えられる。

本研究の新規性は、頸動脈 MRA にLAVA-Flex 法を適用することで従来法と比較して約 5 分の 1 と大幅に撮像時間を短縮したにも関わらず頸動脈分岐部周辺の診断的情報は同等であることを示し、複数の画像を同時に取得する特徴を活かすことでプラーク評価についてはより有用である可能性を示した点である。1 回の撮像をわずか 29 秒で行うことができる LAVA-Flex 法を適用すると時間短縮の効果は非常に大きく、さらに急性期脳血管障害患者や鎮静されていない小児患者などの身体の動きが激しい患者の検査における有用性が期待される。

LAVA MRA では 4 つの画像が出力されるため、MIP 画像だけでなくこれらの画像を参照することによって cTOF MRA よりもプラークについて多くの情報を得ることができる。プラークの形態、特に外側縁は、out-of-phase 画像および water-only 画像においてより鮮明であることが多かった。石灰化または線維化を伴うと思われる低信号のプラーク は、第 2 の化学シフトアーチファクトを生じない in-phase 画像で評価しやすかった。ま た、壁在血栓やプラーク内出血の有無を判断するのに重要な T1 強調像での高信号が water-only 画像において他のシークエンスより明瞭に描出された。頸動脈プラークの質的評価に関しては、プラークの病理との対比ができていないことが課題の 1 つである。しかし、壁在血栓やプラーク内出血の存在を示唆するT1 強調像での信号変化は cTOF MRA では知り得ない情報であり、より時間のかかるプラークイメージング用の MRI 撮像の適応判断の材料にするなど、臨床的価値は高い。

高度に狭窄した動脈が cTOF MRA よりも LAVA MRA の water-only 画像においてより明瞭に描出される症例があり、血管壁の評価能が高いことや、短い echo time によって体動の影響が抑えられたことによると思われた。これは LAVA MRA の大きな利点である。一方で、高度狭窄した部位の血流ジェットに起因すると思われる信号欠損が LAVA MRA において cTOF MRA より強くみられる症例があり、解決すべき課題である。今後は血流信号の画像化に最適化されたパルスシークエンスを作成することにより画質の改善が期待される。

【結論】LAVA-Flex を使用した頸動脈 MRA は、従来の TOF MRA の約 5 分の 1 の時間で画像を取得することができる。LAVA MRA は、頸動脈分岐部周辺の評価において cTOF MRA と同等の診断的情報を提供することができ、プラークの評価についてはより有用な情報が得られた。

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