リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「木材加工用薄丸のこの振動制御に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

木材加工用薄丸のこの振動制御に関する研究

竹山, 顕 名古屋大学

2021.11.15

概要

丸のこは木材および木質材料の加工に広く用いられている工具である。丸のこは薄い円板状工具であるため、その面外方向(横方向)へ変形しやすい性質がある。特に歩留まりの向上や切りくずの削減を目的に歯厚を薄くした場合に、これまでの技術では解決できない切削振動問題が発生する。振動が発生すると切りロが広がることで材料の損失が発生してしまい、歯厚を薄くした目的に反して生産能率が下がり、生産コストが上昇する。また、丸のこによる木材および木質材料の加工においては一般的に丸のこの周速は3000〜5000m/minにおよぶ、高い回転数のもとで使用される。そのため、その空転騒音が場合によっては100dB(A)を超えるほど大きくなる場合があり、作業者の大きなストレスとなる。

 第1章では、丸のこの動的安定性、切削振動、空転騒音に関する従来の研究を整理した。これらの研究成果により近年では大幅に丸のこの切削振動・空転騒音は低減してきている。しかしながら、丸のこを実際に使用している木工作業現場では、依然として切削振動や騒音が発生しており、未解決の問題が残されている。そこで、本論文では、丸のこの切削振動、および、空転騒音について、従来技術では解決できていなかった問題を取り上げ、その発生メカニズムの解明について研究した。

 第2章では、木材縦挽き用丸のこを薄くした場合に、振動抑制を目的に設けた内部スリットに粘弾性樹脂を注入された丸のこであっても発生する切削振動について検討した。この切削振動を歯部振動と称し、高周波域で発生する切削振動についてFEM解析を用いてモード解析を行い、振動発生条件および木材表面の振動マークを予測した。つづいて切削実験によってその理論を実証した。得られた結論は次のとおりである。
(1) 歯室を設けた丸のこの高次の固有振動モード周波数は円板と異なり、歯室とその数によって低い周波数に収束する。台金の薄い丸のこにおいてはさらに低い周波数となり、歯数の比較的少ない縦挽き用丸のこでは、実用回転数におけるのこ歯の通過周波数によって高次の振動モードは励起される。
(2) 歯部振動は、歯数の2分の1の節直径数を持つ振動モードである。歯部のみが動き、内部スリットを設けた台金部はほとんど動かないため、内部スリットによる振動抑制効果が発揮されない。
(3) 歯部振動はのこ歯通過周波数の2倍と振動モードが一致する付近の丸のこ回転速度で発生する_励振動である。
(4) 切削実験において振動が発生した条件での木材切断面上のトウースマークパターンは、解析の結果から予測した歯部振動によるトウースマークパターンとよく一致し、歯部振動発生理論を実証できた。

 第3章では、第2章においてその発生メカニズムが明確になった歯部振動について、歯部振動が顕著に発生する仕上げ用薄丸のこを用いて、歯室形状(歯室深さおよび歯のピッチ)の変更による振動発生範囲およびその振動周波数の傾向を切削実験によって把握した。その結果得られた結論は次の通りである。
(1) 歯室深さを深くすることで歯部振動の振動周波数は低くなった。これは歯部のみが動く歯部振動モード周波数が低減したことによるものである。歯数が同じである場合、歯室深さを深くすることにより歯部振動は低い回転数域で発生し、歯室深さを浅くすると歯部振動は高い回転数域で発生する。この事実より、歯室深さを変えることによって、歯部振動発生の回転数範囲をコントロールできる可能性をえた。
(2) 歯のピッチをランダムピッチにすることで歯部振動の発生領域は狭くなり、さらに歯のピッチの差を大きくしていくと歯部振動を抑制することができた。歯のピッチをランダムにすることで、加振源としての歯の通過周波数が安定しないことに加えて、歯が交互に規則的に変位する歯部振動の継続が困難になって振動が抑制された。

 第4章では、第2章、第3章でえた結論から、歯部振動を抑制するための設計方法を確立し、新設計方法により創成した木材縦挽き用薄丸のこの切削性能について述べた。設計方法の指針として旋盤加工などで発生する再生びびり振動の発生条件を用いた。得られた結論は次のとおりである。
(1) 進行波周波数を歯の通過周波数で割った端数値が0.5〜1.0以内の場合に、歯の側縁からの力によって再生びびり型の自励振動である歯部振動が発生する。
(2) 歯部振動をすべての回転数で抑制するためには、歯室深さおよび歯のピッチによって端数値を歯ごとに設定した場合、すべて0.5〜1.0の範囲に入ることを避け、0〜0.5の範囲のものを含むことが望ましい。そこで、歯のピッチの不規則性Rpが40%以上、歯室深さの不規則性Rlが20%以上、あるいはRpが20%以上かつRlが10%以上となるように設計することで歯部振動の抑制が可能となる。

 第5章では、丸のこの台金に十分な内部減衰があっても、丸のこ空転時に発生してしまう大騒音について検討した。空転している丸のこの歯室によって発生する空気渦とカバー内の空気の固有振動数の共鳴音の発生を明らかにした。得られた結論は次のとおりである。
(1) 丸のこカバーがない場合には風切り音のみが発生する丸のこであっても、丸のこカバー内で空転させることによって共鳴音が発生する。また、丸のこを囲わずに鉄板の間を空転させても共鳴音は発生する。
(2) カバー内共鳴音の周波数は、カバーのない場合の風切り音のピーク周波数に一致した。丸のこの歯室によって発生する空気渦の周波数がカバー内共鳴音の励起周波数であることがわかった。
(3) 丸のこカバー内で空転させた場合に発生した共鳴音周波数は、カバー内空気の音響解析によってえられた、丸のことカバーの間の空気の音圧モード周波数とよく一致した。既往研究で議論されてきた、空気の渦と丸のこの固有振動数の共鳴による騒音ではなく、空気の渦とカバー内空気の共鳴による騒音であることを示した。
(4) アクリル製丸のこの共鳴音周波数は、鉄製丸のこと同じであった。このことからも、発生した共鳴音は丸のこの材質ではなく、丸のこの歯室形状に起因する空気の渦が共鳴音の励起周波数であることを裏付けることができた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る