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書き出し

Microscopic Theory of Thermoelectric Transport in Magnetic Fields:Application to Dirac Systems

コニェ, ヴィクトル アートル 東京大学 DOI:10.15083/0002006285

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

コニェ ヴィクトル

アートル

本論文は、磁場中の熱電輸送の理論を特にディラック電子系について展開したもので、以
下の6章からなる。
第1章では、序論として、本研究の背景となる磁気輸送に関する一般論、およびディラッ
ク電子系について概論を述べている。磁気輸送は古くから物性物理学における重要な問題
である。一方、ディラックは相対論と量子力学の要請から電子の波動関数が満たすディラ
ック方程式を導いた。これは真空中の電子に関する相対論的な方程式であるが、固体中の
バンド構造にもディラック方程式と同様の構造が生じる場合があることが認識され、ディ
ラック電子系と呼ばれるようになった。ディラック電子系における磁気輸送についても多
くの先行研究があるが、近年多数の新しいディラック電子系物質が見出されたこともあ
り、ますます興味が高まっている。
第2章では、準備として、磁場中の電子系の理論のレビューを行っている。特に、結晶中
の一般的なブロッホ電子系について、磁場を印加したときの固有状態や電流などの表式を
まとめている。また、実際の物質で重要になる不純物の効果のグリーン関数法による扱い
にも触れている。
第3章では、磁気輸送の一般論をレビューしている。線形応答理論により、さまざまな輸
送係数をグリーン関数により表すことができる。これを用いて、低温極限でゼーベック係
数の満たすモットの式や、熱伝導度と電気伝導度のあいだのヴィーデマン・フランツ則が
磁場中でも成立していることが確認できる。
第4章と第5章では、論文提出者の原著論文に基づいたオリジナルな研究成果が報告され
ている。第4章では、弱磁場領域におけるホール伝導度と縦伝導度を、線形応答理論に基
づき磁場の1次の範囲で求めている。ここで用いた定式化は福山らによる先行研究に基づ
いたものであるが、特に、エネルギー分散の傾いたワイル点に適用して新しい具体的な結
果を求めている。ワイル点は、ギャップのない(ゼロ質量)ディラック電子の2つのカイ
ラル成分をエネルギーもしくは運動量空間で分離したときに生じるものであり、近年多く
の物質系で実現され、場の理論から導かれる予言の観点からも非常に注目されている。相
対論的なディラック粒子あるいはワイル粒子の場合、ローレンツ不変性から分散関係が一
意に決定される。しかし、物質中では、ローレンツ不変性は要請されないのでさまざまな
分散関係の変化が可能である。特に、ディラック点あるいはワイル点における分散関係全
体が傾く可能性があり、実際にそのような物質も見出されているため物性物理で重要な問
題である。エネルギー分散の傾いたワイル点を持つ系における弱磁場領域での磁気輸送に
ついては、半古典ボルツマン理論による先行研究がある。しかし、論文提出者は、線形応
答理論による系統的な研究により、この問題における電気伝導度は運動量空間のベリー曲
率の寄与と、軌道磁気モーメントの寄与の和で与えられ、両者がともに重要であることを
示した。先行研究の結果はこのうちベリー曲率の寄与分のみに相当するため、本論文にお
いて重要な寄与が見出されたことになる。
第5章では、質量を持つ(ギャップのある)ディラック電子系の磁気輸送を、相対論的な
模型の範囲で系統的に研究している。この系は、ディラック質量(ゼロ磁場でのギャッ

プ)と、磁場に比例するラーモアエネルギーの2つのエネルギースケールを持つ。これら
の大小によって、電気伝導度やゼーベック係数などは磁場に関して異なるスケーリングを
示す。強磁場極限でラーモアエネルギーが支配的な場合は実験・理論ともに多数の先行研
究があるが、本論文でこれらを統一的に記述することができた。また、ディラック質量が
支配的な領域を中心に新たなスケーリング則も導いた。ディラック質量が支配的な領域で
は、縦伝導度およびホール伝導度は(ラーモアエネルギーが支配的な領域と同じく)磁場
に反比例するが、ゼーベック係数は磁場の2乗に比例し、ラーモアエネルギーが支配的な
領域とは異なるスケーリングを示す。
第6章では、全体のまとめが行われ、今後の展望が述べられている。
以上のように、本論文では、磁気輸送に関する線形応答理論を整備し、これをディラック
電子系に応用することで、新しくいくつかの興味深い知見を得ている。特に、エネルギー
分散の傾いたワイル点を持つ系において磁気輸送に軌道磁化由来の成分が存在することを
明らかにし、またディラック質量を持つディラック電子系において輸送係数の磁場に関す
る新たなスケーリング則を導いた。ディラック電子系は実験的にも興味が持たれている物
質であり、本論文の理論的な成果は学術的に意義が高いものである。なお、本論文は小形
正男氏との共同研究に基づいているが、本人の寄与は主体的で十分であると認められる。
よって、論文審査委員会は全員一致で博士(理学)の学位授与が適当であると結論した。

参考文献

113

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