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大学・研究所にある論文を検索できる 「Foraging strategy and social behavior of a snake (Lycodon semicarinatus, Colubridae) feeding on sea turtles」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Foraging strategy and social behavior of a snake (Lycodon semicarinatus, Colubridae) feeding on sea turtles

Matsumoto, Kazumasa 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23739

2022.03.23

概要

一般的に、爬虫類は他の脊椎動物に比べて社会性が低いとされる。爬虫類の中でも、ヘビは最も社会性が乏しく、野外において社会行動が定量的に観察されたことはほとんどない。しかし、ヘビの食物としては特殊なウミガメを採餌する種において、社会行動を示唆する現象が先行研究によって報告された。本研究では、ヘビの社会行動を定量的な観察に基づいて解明するために、沖縄島でウミガメを採餌するアカマタを対象に野外調査を実施した。
 アカマタは、中琉球の島々に生息する夜行性のヘビである。ほとんどの陸生小型脊椎動物を食べる広食性であり、砂浜ではウミガメの卵および孵化幼体を採餌する。第1章では、ルートセンサスと定点ビデオカメラ撮影を用いて、砂浜にパッチ状に分布するウミガメの産卵巣を利用するための採餌行動を調べた。その結果、アカマタは採餌するのに適した産卵巣を砂浜で探し回る採餌戦術のみを使うことが観察され、単一採餌戦略者であることが確認された。一方、慶良間諸島では、砂上に出てくる孵化幼体を待ち伏せる採餌戦術も併用する混合採餌戦略者であることが報告されている。したがって、アカマタの採餌戦略には地理的変異があることが示された。また、産卵巣で採餌に成功しなかった場合、常に約5分でその産卵巣を放棄する行動が観察された。この決まった時間でパッチを諦める行動は、最適採餌理論の一つとして予測されている理論モデルである‘Giving-up time rule’を支持した。
 ウミガメの産卵巣には複数のヘビが集まり、個体間干渉が頻繁に生じる。第2章では、この個体間干渉を定点ビデオカメラによって撮影し、定量的な野外データに基づいてアカマタの社会行動を評価した。その結果、アカマタは以下の5つの社会システムを発現させていることが分かった。1,なわばり制:ウミガメの産卵巣上でコンバットダンス(儀式的闘争)によって他個体を排除して、餌資源を防衛した。2,順位制:産卵巣の占有者に攻撃するか否かは相手によって異なった。その意思決定は、相手のにおいに基づいた個体認知が関係していると考えられた。3,順番待ち行動:占有者に攻撃せずに離れたヘビは、相手が食べ終わるまで近くで待機した。4,専門化(社会的な集団による採餌は、一部の個体が特定の役割を担うことで、集団に属するメンバー全体の利益が増す):大型のヘビが産卵巣で採餌することで、地中の卵群まで通じるトンネルが形成された。これを利用することで、その他の多くの個体が大きな利益を得た。5,社会的忌避:産卵巣で孵化幼体を捕獲すると、それを咥えたまま植生帯内へと持ち去った。これは、他個体との過度な接触を避けるためと考えられた。
 第3章では、アカマタによる集団形成を明らかにするために、複数のヘビの移動パターンと行動圏をラジオテレメトリー法によって追跡した。その結果、ヘビの年間の活動域は基本的に内陸部の森林内であったが、ウミガメの産卵期(4月から9月)には砂浜をしばしば訪れることが分かった。さらに、砂浜では複数のヘビが集中する場所が稀に発生し、小集団が短期的に形成された。この集団形成には、トンネルが掘られているなどの特定の条件を有した産卵巣が関与していることが示唆された。
 本研究は、単独性のヘビが一時的な小集団の中で社会行動を発現していることを定量的な野外観察に基づいて示した。この発見は、ヘビの社会性を再評価する機会だけでなく、動物の社会研究においてヘビが特別な役割を担う可能性があることを示した。例えば、特定の条件下でのみ社会行動を発達させるヘビは、“どのように動物の社会が誕生するのか?”という問いの解決の一助になると考えられる。