リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「SPATIAL DISTRIBUTION PATTERN OF THE ELECTROMYOGRAPHIC POTENTIAL IN THE VASTUS MEDIALIS AND LATERALIS MUSCLES FOR THREE KNEE FLEXION ANGLES DURING ISOMETRIC KNEE EXTENSION」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

SPATIAL DISTRIBUTION PATTERN OF THE ELECTROMYOGRAPHIC POTENTIAL IN THE VASTUS MEDIALIS AND LATERALIS MUSCLES FOR THREE KNEE FLEXION ANGLES DURING ISOMETRIC KNEE EXTENSION

小宮 諒 広島大学

2021.03.23

概要

SPATIAL DISTRIBUTION PATTERN OF THE
ELECTROMYOGRAPHIC POTENTIAL IN THE VASTUS
MEDIALIS AND LATERALIS MUSCLES FOR THREE KNEE
FLEXION ANGLES DURING ISOMETRIC KNEE EXTENSION

小宮



(医歯薬保健学研究科

保健学専攻)

【緒言】
大腿四頭筋は、歩行やランニング、ジャンプなどの動作に必要不可欠であるため、その
機能を理解することは大切です。また、ケガ後のリハビリテーションやケガ予防の観点か
らも重要となります。大腿四頭筋の中でも、外側広筋(VL)と内側広筋(VM)の機能の
違いがよく議論されています。前田らは、VM では慢性前十字靭帯再建術者と健常者で電
気刺激に対する筋の収縮反応や速度が異なるが、VL は両群で同様の筋の収縮反応や速度
を示したと報告しています。Gallina らは、膝蓋大腿骨関節症候群の患者で、VL と VM
の運動制御が問題となる可能性があることを示しました。これらの報告は、VL と VM の
筋機能の違いを理解することの臨床的な意味を示唆しています。
表面筋電図(SEMG)は、筋機能の違いを理解するために使用される方法のひとつで
す。SEMG 信号は、電極の下で動員されたモーターユニット(MU)の活動電位の総和で
あるため、SEMG 振幅の増加は、MU の活性化、すなわち、モータユニットのリクルート
および/または発火のパターンの変化を反映していると解釈されてきました。これまでに報
告された EMG 法では、針やワイヤー電極を用いて局所的に使用されていましたが、これ
らの方法は侵襲性が高く、得られる情報も制限されていました。一方で Multi-channel
surface electromyography(MEMG)は、複数の電極を使用して広範囲で MU の活動を
非侵襲的に評価することができます。この MEMG では、特定の筋での SEMG の空間分布
に関する情報を得ることができます。理学療法士などの専門家は、臨床場面で筋肉の活動
を評価し、適切な治療や運動指導を行っており、MEMG を使用することで、臨床場面で
より有用な結果が得られるようになると考えられます。
最近の MEMG に関する研究では、収縮強度にかかわらず、VM と VL の MU の動員が類
似していたことが報告されています。しかし、de Souza らは、VM の筋線維が遠位部から
近位部に向かって横方向に配向するようになってきていることから、VL と VM の間で MU
の平均発火率が異なるのではないかと指摘しています。また、de Souza らの研究で得られ
た知見は、VL と VM の筋活動の違いだけでなく、遠位部と近位部の筋活動の違いを理解す
ることも重要であることを示唆しています。しかし、これらの研究では、膝の屈曲角度の違
いによる VL と VM の筋機能の違いは考慮されておらず、膝の屈曲角度の影響や収縮力に
よる違いについては、さらに検討する必要があると考えられます。
双極表面筋電図を用いて膝の角度と筋活動を報告した研究では、VL と VM の筋電図活動
は膝屈曲角度 90°で 75°、50°、15°よりも高くなっていました。このことから、空間筋機能
に関係なく、膝屈曲角度 90°では他の膝屈曲角度よりも VL および VM の筋活動が増加する
と考えられます。Gallina らは、マルチチャンネル SEMG を用いて異なる膝屈曲角度の空
間的な VM の筋活動を報告し、筋内の最大振幅の領域は関節角度によって異なり、振幅分
布は 30°よりも 90°の方が遠位に局在している可能性について言及しています。この報告か
ら、VM の遠位部と近位部では異なる活動が生じていることが予想されます。さらに、
Gallina らが報告した VM の活動の変化は、VL でも起こる可能性がありますが、これはま

だ研究されていません。
したがって、膝関節角度の違いが VL および VM の筋活動に及ぼす影響、膝関節角度お
よび収縮強度の違いが VL および VM の筋機能に及ぼす影響を検討することで、VM およ
び VL の筋機能の理解を深めることができます。本研究では、等尺性収縮時の最大随意収縮
(MVC)30%、50%、70%の 3 つの収縮強度について、3 つの膝屈曲角度(30°、60°、90°)
での空間的な筋活動電位の分布パターンを比較することを目的としました。その結果、(1)
膝屈曲 90°での VL および VM の筋活動は膝屈曲 30°および 60°よりも高く、(2) VM の筋活
動電位の分布パターンは膝屈曲角度によって異なるという仮説を立てました。

【方法】
対象
健常な成人男性 16 名(年齢:22.8±1.4 歳、身長:170.9±6.3 cm、体重:61.1±5.0 kg、
体格指数:21.0±1.7 kg/m2)が参加しました。研究開始前には書面による同意を得まし
た。下肢の損傷および/または神経筋疾患を有する参加者は除外しました。本研究は広島大
学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施しました(承認番号 E-1171)

研究デザイン
各参加者は、3 つの膝屈曲条件(30°、60°、90°)で、最大収縮強度(maximum
voluntary contraction:MVC)の 30%、50%、70%の条件で等尺性膝関節伸展運動を実施
しました。測定手順として、対象へ MEMG 用の電極を配置した後、Biodex System
(Biodex System 4、Biodex Medical Systems、NY、USA)を用いて、等尺性膝伸展の
MVC トルクを測定しました。各参加者は、股関節を 90°に屈曲させた状態で、30°、60°、
90°膝関節屈曲時の等尺性膝伸展運動を行いました。各膝伸展角度での MVC を用いて、膝
伸展持続課題時の目標トルクを算出しました。その後、5 分間の休息と 10%MVC で 10 秒
間の等尺性収縮を練習した後、各膝屈曲角度で 30%、50%、70%MVC で 10 秒間の等尺性
収縮を行いました。すべての参加者は、前方に配置されたモニターから、膝伸展力によっ
て加えられたトルクの視覚的フィードバックを受け実施しました。すべての収縮強度につ
いて、5 秒間かけて目標のトルクに到達させ、10 秒間そのトルクを維持する形で実施しま
した。
筋活動の記録
電極グリッドを用いて右の VL と VM の MEMG 信号を記録しました。電極シートは、
左上隅に電極を持たない 13 列 5 列 64 個の電極(直径、1 mm、電極間距離、各方向 8
mm)で構成されています(ELSCH064NM2、OT Bioelettronica、トリノ、イタリア)。
電極配置部位に対応する部位に導電性ペースト(エレフィックス Z-181BE、日本光電工

業、東京、日本)を塗布した後、生体接着シート(KITAD064NM2、OT
Bioelettronica)で VL と VM 上の皮膚に電極シートを貼り付けました。
図1の左図は、電極シートの配置領域を示す図である。VL の電極シートは、上前腸骨
棘と膝蓋骨の外側面との間の線に対して膝蓋骨の外側面から 15%の位置が最下端になるよ
うにして 30°の角度をつけて貼付しました。VM の電極シートは、上前腸骨棘と膝蓋骨の
内側面との間の線に対して膝蓋骨の外側面から 15%の位置が最下端になるようにして 50°
の角度をつけて貼付しました。アース電極は右脚の腓骨頭と膝蓋骨に貼付しました。
MEMG 信号は、2048 Hz でサンプリングされ、12 bit のアナログ-デジタル変換器
(EMG-USB2+、OT Bioelettronica)でデジタル形式に変換されました。
記録された単極表面筋電図信号は、バンドパスフィルタリング(10~500 Hz)後に、解析
ソフトウェア(Matlab 2018b、Math works GK、MA、米国)に入力された。隣接する
アレイ(n = 59)の双極表面筋電図信号を 64 個の電極から得ました。
MVC の信号については、各膝の屈曲角度で 2 秒間保持した際の信号を収集し、59 個の
信号の root mean square(RMS)を計算しました。
各等尺性膝伸展動作持続課題の信号は、各収縮強度および膝屈曲角度ごとに、MEMG 信
号を 1~9 秒にわたって収集しました。
その後、59 個の信号の RMS、近位部に対する遠位部の RMS 比、変動係数(CoV)

modified entropy を計算した。図1の右図に示すように、59 個の RMS を遠位部と近位部

とで分割し、近位部に対する遠位部の RMS 比を算出しました。近位部に対する遠位部の
RMS 比は、遠位部の RMS/近位部の RMS によって算出されました。
CoV は、59 個の RMS 値の標準偏差を平均値で除した値として算出し、また modified
entropy は下記の式に基づき算出しました。
59

E = − ∑ 𝑝(𝑖)2 𝑙𝑜𝑔2 𝑝(𝑖)2
𝑖=1

統計学的解析
データは EZR(自治医科大学埼玉医療センター)を用いて解析を実施しました。収集さ
れたデータは、平均値 ± 標準偏差または中央値(最小-最大)で表示しました。
データの正規分布は、Shapiro-Wilk 検定を用いて確認した。MVC と各収縮強度におけ
る RMS は、反復測定による分散分析を用いて分析し、事後検定として Bonferroni 法を用
いました。
また、
遠位部と近位部の RMS 比については、
CoV と modified entropy を KruskalWallis 検定を用いて解析し、事後検定として Steel-Dwass 法を用いました。すべての統計
学的解析において、有意水準は p < 0.05 としました。
【結果】

図2は、各膝関節角度における 30%MVC に対する MEMG から得られた振幅をカラー
スケールに変換したものを示し、表1は、各膝屈曲角度および収縮強度における VL およ
び VM の RMS 値を示しています。
各収縮強度では、VL と VM のどちらも膝屈曲 90°で膝屈曲 30°および 60°よりも RMS
が有意に高かい結果でした (p < 0.001)。表2は、各屈曲角度および収縮強度における遠
位部と近位部の RMS 比を示します。
VL では、遠位部と近位部の RMS 比は、50%MVC および 70%MVC で膝屈曲 90°で膝
屈曲 30°よりも有意に高い結果でした (p < 0.01)。VM については、各収縮強度におい
て、膝屈曲 30°および 60°よりも膝屈曲 90°で高い結果となりました (膝屈曲 30° vs 膝屈
曲 90°:p < 0.01;膝屈曲 60° vs 膝屈曲 90°:p < 0.05) 。CoV および modified
entropy の結果を図 3~6 に示します。
VM の modified entropy は、すべての収縮強度で膝屈曲 30°よりも膝屈曲 90°で有意に低
い結果となりました(30%MVC および 70%MVC:p < 0.01;50%MVC:p < 0.05)
。ま
た、CoV はすべての収縮強度で膝屈曲 30°よりも膝屈曲 90°で有意に大きい結果となりま
した (30%MVC および 70%MVC:p < 0.01;50%MVC:p < 0.05) 。一方、VL の CoV
および modified entropy は、すべての膝屈曲角度および収縮強度において有意な差を認め
ませんでした (p > 0.05) 。
【考察】
本研究では、膝屈曲 90°での VL および VM の各収縮強度の膝伸展時の RMS は、膝屈
曲 30°および 60°の RMS よりも有意に高い結果でした。Zabik と Dawson は筋電図信号の
RMS が膝関節角度に依存しないことを報告しており、また Babault らは膝屈曲 35°での
筋電図時の RMS が膝屈曲 55°および膝屈曲 75°よりも高いことを報告しています。
しかし、これらの研究はサンプル数が少ないこと、筋活動の計算方法に限界がありまし
た。対照的に、これらの制限を克服して、我々の研究と同様の結果を得た研究がありま
す。これらの先行研究から、空間筋活動はバイポーラ筋電図を用いた筋活動と同様の傾向
を示しており、本研究の測定方法で得られた結果が正しいことが示唆されます。
VM の遠位部と近位部の RMS 比は、各収縮強度で膝屈曲 30°および 60°よりも膝屈曲
90°で高くなっていました。本研究で得られた VM の結果は、膝屈曲角度が大きくなるほ
ど最大振幅の領域が遠位に局在し、近位部に比べて遠位部の筋活動が増加していることを
示唆していると考えられます。VL に関して、本研究では 50%MVC と 70%MVC の膝屈曲
30°と 90°のみで差を認めました。この結果は、関節角度以外にも収縮強度が高くなること
で VL の近位部と遠位部の筋活動に影響を与えていることを示しています。実際には、
VM においても収縮強度が結果に影響を与えている可能性があるが、VM では近位部と遠
位部で筋線維の走行に違いがあることや、膝の屈曲角度の変化による羽状角の変化など
が、VM の結果に直接影響を与えていると考えられます。

本研究では、膝屈曲 30°、60°、90°と複数の収縮強度(30%、50%、70%MVC)で等尺
性膝伸展時の CoV と modified entropy を比較しました。VM では、膝屈曲 30°と 90°で、
収縮強度に関わらず CoV と modified entropy のどちらも違いがあることが確認されまし
た。modified entropy の減少と CoV の増加は、電極グリッド内の空間的な MEMG で得ら
れる活動電位分布の不均一性の増加を示唆しています。今回の結果について VM と VL の
間の解剖学的な違いと MU の発火頻度の違いは、我々の結果を説明するのに役立つかもし
れません。VL の生理的断面積は VM の約 2 倍であり、VL は VM よりも大きな力を生み
出すための筋線維の配列となっています。De Souza らは、VL と VM で MU からの平均
発火率が異なる理由として、筋線維の配列や筋の生理的断面積の違いを報告しています。
VM では、遠位部よりも近位部の方で筋厚は大きく、膝屈曲角度が大きくなると筋厚が減
少することが報告されています。また、遠位部の方が近位部よりも筋線維のなす角度が大
きく、膝屈曲角の増加に伴ってこの角度が減少することが報告されています。これらの要
因により、本研究では VM の筋活動の空間分布に違いが生じた可能性があります。一方、
VL では、膝屈曲角度の違いが筋活動の空間分布に影響を与えないことが示されました。
筋線維配列や筋厚の変化は、VM のように膝屈曲角の変化により受ける影響が大きくない
可能性があると考えられます。しかし、VL のこの要因を理解するためには、膝屈曲角の
変化に伴う筋形態の変化を調べる必要があります。
これらの結果の違いは、膝関節角度の浅い屈曲角度に起因する膝蓋骨脱臼や膝前十字靭
帯損傷の治療を検討するための非侵襲的な評価方法として、今後の臨床現場で役立つ可能
性があります。しかしながら、本研究にはいくつかの限界があります。膝関節の屈曲角度
の変化に伴う VL と VM の筋活動の空間分布に違いが見られましたが、本研究の結果は、
特定のタスクと限られた算出項目であるため、解釈に限界があることに注意する必要があ
ります。VM と VL の筋機能の違いを理解するためには、より詳細な解析と実際の運動環
境に近い環境での測定が必要と考えます。
また、本研究の結果は膝屈曲 30°、60°、90°で得られたものであり、他の膝関節角度で
の結果は不明です。最後に、本研究の参加者は健康な人であったので、今後の研究課題
は、前十字靭帯再建術後患者や膝蓋骨脱臼患者など、他のグループへの本研究結果の適用
可能性を示す必要があると考えます。
【結論】
本研究では、VM と VL の 3 つの膝屈曲角における MEMG より得られた筋活動電位の
分布パターンを比較しました。その結果、VL の筋活動分布パターンは膝関節角度によっ
て差がないことが示された。対照的に、VM の筋活動分布パターンは膝屈曲 30°と 90°の間
で異なっていた。この結果は、VL と VM の筋機能を評価するための異なる方法での評価
が必要となる可能性を示しており、今後の膝関節疾患者やアスリートの治療計画に役立つ
可能性があります。

図1

図2

図3

図4

図5

図6

表1

表2