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大学・研究所にある論文を検索できる 「放射線治療の線量分布検証における機械学習および畳み込みニューラルネットワークを用いた新たな検証方法の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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放射線治療の線量分布検証における機械学習および畳み込みニューラルネットワークを用いた新たな検証方法の開発

戸森 聖治 東北大学

2021.03.25

概要

【目的】
近年では放射線治療の技術が発展しており、中でも IMRT(intensity modulated radiation therapy;強度変調放射線治療)が普及しつつある。IMRT は従来の照射方法と比較して遮蔽物が複雑な動きをするため、治療計画装置にて計算された線量分布が再現できるのかを患者ごとの治療計画にて検証することが推奨されている。しかしながらこの検証結果を得るまでに多大な時間を要するため、臨床の業務負担の一因となっている。この問題を解決するために、近年では治療計画装置からの情報を用いて検証結果を予測する手法が報告されているが、実際の治療の照射を完全に再現した照射による実測かつ推奨される解析の条件設定下にてデータ収集された手法の報告がないのが現状である。本研究では実際の照射を完全に再現した照射法かつ推奨の条件に沿った解析による検証結果のデータを用いつつ、人工知能技術のひとつである機械学習および畳み込みニューラルネットワークを用いた、新たな線量分布検証方法の開発とその実現可能性について調査した。

【方法】
本研究では IMRT を用いた前立腺の治療に焦点を当て、2015 年から 2017 年に仙台医療センターにて治療を行った患者から、前立腺および精嚢への照射の IMRT 治療計画を対象に 60 症例を無作為に収集した。放射線治療計画装置にて治療計画を行い、照射方法は 6MV の X 線による固定多門 IMRT の 7 門照射を行った。検証の実測には、検証ファントムと GAFCHROMIC EBT3 film (以下、フィルム)を使用した。矢状断の線量分布を取得し、治療計画時の線量分布と比較を行い、二次元ガンマ解析を行うことで、検証結果の GPR (gamma passing rate;ガンマパス率)を得た。解析における正規化方法は global を、ガンマ閾値は 2%/2 mm、2%/3 mm、 3%/2 mm、3%/3 mm の 4 つを用い、それぞれの検証結果を得た。

予測モデルの開発には、深層学習のひとつである CNN(Convolutional neural network;畳み込みニューラルネットワーク)を用いて作成した。このモデルは平面線量分布、体積値、各門の MU 値を入力し、様々な層を通過したのちに 4 つのガンマ閾値における GPR を予測する。データセットの 60 症例のうち、訓練データおよび検証データとして 40 症例を、残りの 20 症例をテストデータとして用いた。モデルのパラメータ等の決定とモデルの訓練は 5 分割交差検証法にて行い、その後モデル平均を行うことで汎化性能を向上させて、最終的に検証データに対して予測させた場合の検証データ結果と、テストデータに対して予測させた際のテストデータ結果を得た。

【結果】
実測の GPR 値と予測の GPR 値の散布図の結果には直線性が見られ、実測と予測の GPR 値には、4 つの閾値全てにおいて強いあるいは中間程度の相関係数を観測できた。実測の GPR 値と予測の GPR 値の相関係数は、検証データ結果では 2%/2 mm では 0.73、3%/2 mm では 0.72、2%/3 mm では 0.74、3%/3 mm では 0.65 となった。一方で、テストデータ結果ではそれぞれの相関係数は 2%/2 mm では 0.62、3%/2 mm では 0.56, 2%/3 mmでは 0.51、3%/3 mm では 0.32 であった。2%/2 mm のガンマ閾値を除くすべてのガンマ閾値において、実測 の GPR 値と予測の GPR 値の平均値の差、および中央値の差は 1%以下であった。

【結論】
本研究で開発した CNN モデルによる GPR 予測の結果、実測の GPR 値と予測の GPR 値の間には強い、あるいは中間程度の相関関係が観測され、本手法の臨床における実現可能性を示すことができた。入力データには平面線量分布、体積値、各門の MU 値を用いており、これらは治療計画装置から容易に収集することが可能であり、モデルの訓練も通常の PC にて実行できることから、普及性にも優れていると考えられる。今回の研究を通して、線量分布が GPR 予測において有用であることが示され、機械学習および畳み込みニューラルネットワークが患者ごとの IMRT 治療計画の線量分布検証に有用であることが示された。