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大学・研究所にある論文を検索できる 「Verification system for intensity-modulated radiation therapy with scintillator」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Verification system for intensity-modulated radiation therapy with scintillator

安藤 康晴 広島大学

2021.01.29

概要

Verification system for intensity-modulated radiation therapy with
scintillator
(シンチレータによる強度変調放射線治療の検証システム)

Yasuharu Ando1 ・ Kentaro Miki2 ・ Jun Araki1 Masato Tsuneda3 ・
Hiroshi Kiriu1 ・ Teiji Nishio3 ・ Yasushi Nagata2
1 Hiroshima City Asa Citizens Hospital, Hiroshima, Japan
2 Hiroshima University Hospital, Hiroshima, Japan
3 Tokyo Women’s Medical University, Tokyo, Japan

【背景】放射線治療において、強度変調放射線治療 (Intensity-modulated radiation therapy、
IMRT)は、正常組織の照射線量を抑えつつ、腫瘍に放射線を集中することができる画期的な
照射技術である。これにより従来の手法である 3D-CRT よりも合併症の軽減を行いつつ、高
い腫瘍制御率を実現することできることが、これまでいくつか報告されている。IMRT の線
量分布は複数の小さな照射野で構成されているため、3D-CRT に比べて照射方法が複雑にな
る。そのため治療開始前に実施する治療計画の検証を、患者個別に行う事が、American
Association of Physicists in Medicine(AAPM)のタスクグループによって推奨されている。そ
れを受け、我が国でも IMRT を実施する多くの施設が、治療開始に先立って患者個別の治療
計画の検証を実施している。これらの検証を実測で行う場合、X 線検出器として、主に電離
箱、chromodynamic film、半導体、またはゲル線量計等が使用されている。これらの内
chromodynamic film は、高い空間分解能を有するために、空間的に複雑な線量分布を検証す
るのに適している。しかし照射後、データを安定化させるためには暗室にて数時間、保管す
る必要があり、使い捨てで再利用ができないなど、取り扱いや測定効率、コストの面で短所
がある。半導体検出器を平面または空間上に多数配置した多次元検出器も同様に線量分布
測定に広く使用されており、高い線量直線性、線量率安定性を持ち、三次元線量再構成が可
能であることを特長としている。しかしコストや半導体素子の温度依存性に考慮して、隣接
する各半導体モジュールはおおよそ 1 cm 程度の間隔が設けられていることが多い。したが
って、欠落する空間のデータは隣接する検出器で補間する必要があり、空間的に複雑な線量
分布を測定するには不十分な場合がある。そこで本研究では高い分解能と高い測定効率を
両立し、リアルタイムに IMRT の検証を行うための新しい線量測定システムを、円盤型に成
型したプラスチックシンチレータ (BICRON 408、直径 18 cm、厚さ 3 mm)、円柱型のファン
トム、および charge-coupled device (CCD)カメラを用いて開発し、その性能を検証した。
【方法】水で満たした円柱型ファントム内に固定されたディスク型プラスチックシンチレ
ータをリニアックの寝台上部に配置し、isocenter をシンチレータの中心に揃えた。CCD カ
メラは、シンチレータ表面から頭尾方向に 88 cm の距離に配置した。円柱型ファントムの
CT 画像を予め取得し、治療計画システムに取り込んだ。X 線照射によるシンチレータ光は
CCD カメラで撮像し、tagged image file format (Tiff)形式のファイルフォーマットで保存して、
線量分布解析ソフト (DD-SYSTEM、R-TECH、Japan)に入力した。照射した線量とシンチ
レータ光との相関付けを行う、線量変換テーブルを作成し、シンチレータ光の分布を線量分
布へ変換できるようにした。線量変換テーブルは、照射やサイズを 1×1cm2 から 10×10cm2
とし、1 cm 毎にそれぞれ作成した。臨床で実際に用いた IMRT の治療ビームを円柱型ファ
ントムに照射し、その際に撮像されたシンチレータ光分布を線量変換テーブルにより線量
分布に変換し、治療計画で計算された線量分布と比較を行う事で、本システムの性能の検証
を行った。IMRT の照射野を構成する各フィールド、及びフィールドを構成する各セグメン
トにおける不整形な照射野は、クラークソン法によって等価な正方形照射野に変換した。X
線照射により発生したシンチレータ光が水中で拡散する事により、円柱型ファントム内の

照射野外においても若干の光が観察されたため、照射野外で観察される光量を数点測定し、
シンチレータ光分布の全体から差分することで補正を行った。既存の検証システムとの比
較として、当院で治療を行った限局性前立腺癌の患者 6 名分の IMRT 治療計画を使用し、そ
の線量分布を本システム及び chromodynamic film を用いて測定し、結果を比較した。比較方
法として、各ピクセルの絶対線量差 (dose difference, DD) およびガンマ解析を用いた。ガン
マ解析では処方線量の 10%以上照射された領域を対象とし、2 mm の dose to agreement (DTA)
と 3%の DD を基準とした。本研究の特徴の一つとして、IMRT の合算線量を検証するのみ
ならず、フィールド毎、およびセグメント毎の個別検証を行った。
【結果】本研究で採用した光の拡散補正を行うことにより、エネルギー10 MV、照射野 7×
7 cm2、isocenter 中心に 60 cGy を照射した場合に、chromodynamic film を用いた測定結果と
の差分で、照射野周辺領域の最大誤差が 7.7 cGy から 3.9 cGy まで改善された。本システム
で測定した IMRT の合算線量の DD の平均値と標準偏差、ガンマパス率は、6 名分の治療計
画の平均値でそれぞれ 0.8 cGy、4.5 cGy、および 97.4%であり、chromodynamic film を用い
た検証と同等の精度であった。フィールド毎の個別線量分布検証において、DD の平均値と
標準偏差、ガンマパス率は、1 人分の IMRT 線量分布を構成する 7 つのフィールドの平均値
でそれぞれ 0.2 cGy、1.2 cGy、および 93.9%だった。セグメント毎の個別線量分布検証にお
いて、DD の平均値と標準偏差、ガンマパス率は、1 つのフィールドを構成する 9 つのセグ
メントの平均値でそれぞれ−0.03 cGy、0.2 cGy、および 93.9%だった。
【考察】ディスク型シンチレータ、円柱型ファントム、および CCD カメラを用いた新しい
IMRT 検証システムは、chromodynamic film と同等の精度を発揮し、IMRT の合算線量のみ
ならず、フィールド毎、およびセグメント毎の個別検証を、一度の連続した IMRT 治療ビー
ムの照射から得られるデータのみを用いて可能であることを確認した。実際の臨床におい
ては、IMRT の線量分布に計算と実測でやや乖離がみられた場合においても、合算線量で評
価を行っているため原因の特定が困難である場面にしばしば遭遇する。本システムを用い
れば、フィールド毎、セグメント毎の解析が可能となるので、乖離を引き起こしている原因
を追究できる可能性がある。これはより深い IMRT の線量分布への理解につながり、今後の
IMRT 技術の向上に寄与するものと思われる。
本システムは可視光をシグナルとして用いる性質上、他の光源が常にノイズ源となるこ
とに注意が必要である。本研究では高エネルギーX 線を水中へ照射する事により発するチ
ェレンコフ光を、複数の照射野サイズで取得した線量変換テーブルによって補正し、また水
中での可視光の拡散を、照射野外で観測される微弱な光量を用いて補正した。今後更なる精
度が求められた場合には、新しく補正用のデータやハードウェアを導入し、補正に関して再
考する必要がある可能性がある。製品化を視野にする場合は利便性も考慮して、遮光された
ファントムと CCD カメラの一体化システムを設計するなどし、治療室内の外部光源に対す
る対策も考慮が必要である。
本システムはディスク型シンチレータをアキシャル面に設置する設計上、アキシャル面

における分解能は高い一方、頭尾方向への測定に関しては都度、寝台を動かしての測定が必
要である。すなわち 3 次元空間の線量分布測定は課題の一つである。平面配置型半導体検出
器パネルをコロナルまたはサジタル面に設置した状態での、補完による 3 次元分布再構成
は既出であるので、本システムでも同様の手法にて、3 次元測定が可能であるかどうかは、
今後の課題である。
【結論】本研究は、計算された線量分布と測定された線量分布に存在する差異の根本的な要
因の特定に寄与し、より正確で安全な IMRT ひいては放射線治療の精度向上に貢献する、非
常に有用な成果であると思われる。

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