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大学・研究所にある論文を検索できる 「Study on n-3 polyunsaturated fatty acid-binding phosphatidylglycerol : enzymatic synthesis and biofunctional evaluation [an abstract of entire text]」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Study on n-3 polyunsaturated fatty acid-binding phosphatidylglycerol : enzymatic synthesis and biofunctional evaluation [an abstract of entire text]

陳, 莉萍 北海道大学

2020.03.25

概要

ホスファチジルグリセロール(PG)は優れた両親媒性を有する酸性リン脂質であり、近年では抗ウィルス活性が報告されるなど、新たな機能性に関する研究が進められている。特に、PGの機能性発現には、結合する脂肪酸が大きく影響することが推察されており、健康機能が知られるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのη- 3 系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)が結合したn-3 PUFA-PGの高い機能性が期待される。

このようなn-3 PUFA-PGは微細藻類や細菌などによって生合成されることが知られているが、生産性やコストの問題から実用化には至っていない。そこで本研究では、EPAやDHAを高含有するサケ卵脂質を基質として、ホスホリパーゼD( PLD) を用いたリン酸基転移反応によるn-3 PUFA-PGの合成法を検討した。さらに、n-3 PUFA-PGの新たな健康機能性を見出すため、活性化マクロファージに対する炎症性因子の過剰産生に対する抑制効果、並びに肥満糖尿病マウスに対する脂質代謝改善効果に関して検討を行った。本研究で新たに見出された成果は、以下の通りである。

1. 従来のPLDによるリン酸基転移反応では、精製したホスファチジルコリン( PC) を基質とした反応が検討されているが、本研究では産業的な展開を考え、サケ卵総脂質および粗リン脂質分画物を用いた至適反応条件にっいて詳細な検討を行った。その結果、有機溶媒と水による二層系での反応に加え、安全性に優れた水分散系での反応において、96%以上の高い収率でn-3 PUFA-PGの合成が可能となった。特に、サケ卵総脂質を基質とした場合、その中に含まれるアスタキサンチンが抗酸化物質として働き、精製したサケ卵PCよりも効率的にリン酸基転移反応が進行することを推察した。

2. 合成したη-3 PUFA-PGの新たな機能性として、活性化マクロファージに対する炎症因子の過剰産生に対する抑制効果を見出すとともに、n-3 PUFA-PCよりも強い効果であることを明らかにした。さらに、抗炎症機能の発現機構として細胞内におけるNrf-2転写因子の活性化によることを解明した。

3. 滕臟酵素による人工消化系でのn-3 PUFA-PGの加水分解率を測定した結果、同一の脂肪酸が結合するn-3 PUFA-PCと比較して高い脂肪酸分解率が示された。この結果は、n-3 PUFA-PGがn-3 PUFAの生体利用性に優れた構造であることを示唆するものである。

4. η- 3 PUFA-PGを肥満/糖尿病ΚΚ~τΓマウスに経口投与した結果、血清中の総コレステロールおよびnon-HDLコレステロ ール濃度が低下することがわかった。特に、同量のEPA及びDHAを含むトリアシルグリセロール( TAG) の投与では、HDLコレステロールの低下が認められるのに対しn-3 PUFA-PG投与では低下が認められず、コレステロール代謝調節への優位性を見出した。また、肝臓の中性脂質蓄積に対する抑制効果を明らかにした。

以上、本研究では優れた健康機能が期待されるn-3 PUFA-PGのPLDを用いた合成法を確立するとともに、新たな機能性として様々な生活習慣病の発症基盤となる炎症に対する抑制効果および肥満マウスに対する血清総コレステロール、肝臓脂質の低下による脂質代謝改善効果を明らかにした。特に、これらの効果は同棣のn-3PUFAが結合するPCやTAGよりも優れており、n-3 PUFA-PGの高い機能性を示す成果である。本研究で得られた成果は、新たな健康機能性脂質の創生と水産脂質の高次利用をはかるうえで、極めて有用な知見である。