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大学・研究所にある論文を検索できる 「NICUから退院する乳児の児童虐待リスクアセスメントシートの開発と妥当性の検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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NICUから退院する乳児の児童虐待リスクアセスメントシートの開発と妥当性の検証

龜山, 千里 筑波大学

2021.08.02

概要

【研究目的】
本研究では、新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit、以下NICU)に入院している乳児の児童虐待リスクを早期に発見するためのリスクアセスメントシートを開発し、妥当性の検証を行うことを目的とした。この目的を達成するために、研究1〜3を段階的に展開した。各研究の目的は以下となる。研究1:児童虐待のリスク要因を明らかにする。研究2:児童虐待リスクアセスメントシートを開発し、内容妥当性を検証する。研究3:児童虐待リスクアセスメントシートの信頼性と虐待リスク把握可能性について検証する。

【研究方法と結果】
研究1:NICU入院児の児童虐待のリスク要因−面接内容の質的分析−
児童虐待のリスク要因を探索することを目的に、インタビュー調査を実施した。対象者は、関東圏内の総合周産期母子医療センターに勤務し、かつNICUで過去に虐待事例に関わった経験のある看護師19名とした。半構造化インタビューを行い、インタビューデータの逐語録を作成し、質的分析した。その結果、児童虐待のリスク要因として9のカテゴリー、39のサブカテゴリーが抽出された。また、児童虐待リスク評価は、NICU入院1週間後と新生児用コット移床後の2つの時期で行うことが好ましいこと、時期ごとのリスク要因は、「子どもの特性」、「親の特性」、「家族・社会的サポート」に分類されることが明らかとなった。

研究2:NICUから退院する乳児の児童虐待リスクアセスメントシートの開発−表面妥当性・内容妥当性の検討−
先行研究と研究1で抽出された児童虐待のリスク要因を統合し、NICUから退院する乳児の児童虐待のリスクアセスメントシート(Assessment of Child Abuse Prevention for Neonatal ICU、以下ACAP-neo)(原案)を作成した。さらに、ACAP-neo(原案)について専門家からの意見を基に内容妥当性と表面妥当性を検討した。ACAP-neo(原案)の評価時点は、児童虐待リスク評価を退院支援が開始される入院1週間後と、急性期を脱し、育児技術習得支援が始まる新生児用コット移床後の2時点に設定した。リスクアセスメント項目は、入院1週間後19項目、新生児用コット移動後13項目、全32項目とした。各項目の評価は、NICU看護師が簡便に評価できるように2件法を採用した。内容妥当性は、NICUの専門家である医師1名、新生児集中ケア認定看護師1名、NICU経験年数10年以上の看護師8名、合計10名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。各項目に対して、「とても同意できる」から「とても同意できない」の6件法で同意率を算出した。32項目すべてにおいて90%以上の同意が得られたため、全項目を採用した。表面妥当性は、NICU経験年数10年以上ある看護師7名、小児看護専門看護師1名、新生児集中ケア認定看護師2名に対して、無記名自記式質問紙調査を行い、所要時間の測定とともに、項目数の量、不明瞭な箇所、重複している箇所、不足している箇所について回答を得た。回答をもとに、重複している項目を1つに統合し、また主語を明確にし、判断に迷う項目は判断基準を設けた。この結果、項目の追記・修正が必要であった項目は8項目、判断基準を追加した項目は6項目、削除した項目は1項目となり、入院1週間後19項目、新生児用コット移動後12項目、全31項目となった。

研究3:NICUから退院する乳児の児童虐待リスクアセスメントシートの開発−判別妥当性・内的一貫性・評価者間信頼性の検討−
ACAP-Neo(原案)の判別妥当性と信頼性を検討した。判別妥当性について、被虐待児群と一般児群の2群に分け、ACAP-neo(原案)の合計得点をMann-WhitneyのU検定で分析した。看護師13名の評価は、ACAP-neo(原案)の総合合計得点、入院1週間後19項目の合計得点、新生児用コット移床後12項目の合計得点において被虐待児群の方が有意に高いことが示された。また、被虐待児症例を用いて、ACAP-neo(原案)31項目における看護師13名の評価の一致率を算出し、29項目において概ね判別可能であったという結果が得られた。一致率が低い2項目は、調査手法の限界であったと考えた。信頼妥当性は、NICUで5年以上の勤務する看護師13名が、電子カルテを時系列で読みながら、ACAP-neo(原案)を用いて20症例(被虐待児10症例、一般児10症例)を評価したデータを用いて分析を行った。内的一貫性は、ACAP-neo(原案)全31項目のクロンバックα係数がα=.978で、入院1週間後19項目はα=.969、新生児用コット移床後12項目はα=.974であり、すべて十分な内的一貫性を有していた。評価者間信頼性は、級内相関係数がACAP-neo(原案)全31項目はr=.774、入院1週間後19項目はr=.708、新生児用コット移床後12項目はr=.745であり、高い信頼性が確認できた。

【総括】
本研究では、NICUから退院する乳児の児童虐待リスクアセスメントシートを開発し、その妥当性を検証した。その結果、ACAP-Neoが開発され、入院1週間後と新生児用コット移床後の時点で児童虐待リスクが把握できる可能性が示唆された。ACAPNeoの活用法として、院内外の多職種との連携において共通のツールとして用いることが可能となる。これにより多職種が共通の視点で児童虐待のリスクを把握し、NICU入院中からの予防的支援を実施できることが考えられる。今後の課題として、ACAPNeoを全国のNICUでも活用できるように、様々な地域のNICUで使用していただき、地域特性を踏まえた項目を精選し、一般化していくことが挙げられる。

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