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Differences in characteristics of carpal tunnel syndrome between male and female patients

Mitake, Tatsunori 三竹, 辰徳 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
手根管症候群は、上肢の最も頻度の高い絞扼性神経障害である。手根管症候群と相関する医学的状況には、年齢、性別、妊娠、肥満、糖尿病、血液透析、甲状腺機能低下症、関節リウマチなどが報告されている。また、Balci と Utku は、メタボリックシンドローム患者は手根管症候群の発生率が高く、重症例が多いことを示した。

様々な因子の中で、特に性差は手根管症候群の危険因子であることが知られている。しかし、手根管症候群の臨床症状における診断的および予後的価値に関する性差はあまり注目されてこなかった。同様に、手根管症候群患者における基礎疾患と性差の間の相関はまだ検討されていない。本研究では、女性の手根管症候群患者の病態は男性の手根管症候群患者とは異なると仮定した。本研究の目的は、男性と女性の患者間の特徴の違いを検出し、手根管症候群の予防に新しい洞察を加えることである。

【方法】
著者らは、2008 年から 2018 年の間に当院を含めた 4 つの関連病院で手根管症候群のために内視鏡的または直視下に手根管開放術を受けた患者 829 人の 829 手を後向きにレビューした。橈骨遠位端骨折の患者は除外した。

手根管症候群の診断は、正中神経の分布に沿った異常感覚の病歴と誘発試験陽性に基づき行った。診断を確定するため、神経伝導検査を行った。患者は最初、副子固定、薬物療法および/または手根管内ステロイド注射により保存的に治療された。保存的治療に抵抗性の患者には手術を施行した。さらに手根管症候群の診断を確実にするために、術後の改善群と非改善群を区別し、改善群のみを解析して男女比較を行った。

アウトカムの評価:
年齢、性別、術前夜間痛の存在、母指球筋萎縮、術前ピンチ力を収集した。過去の文献レビューに基づき、手根管症候群の併存疾患としてばね指、糖尿病、血液透析、高脂血症、高血圧、肥満を含む六つの病態を評価した。

電気生理学的検査も行った。男性群と女性群の正中神経の遠位潜時と感覚伝導速度を比較した。電気生理学的検査は Padua 分類に従って評価した。

【結果】
本研究では手根管手術を受けた 829 手を評価した。電気生理学的データが不足していた 156 手を除外した。さらに手根管症候群の診断を確実にするために、手術後に改善しなかった 26 手を除外した。したがって、残った 647 手の術後の改善群のみを解析して男女比較を行った(表 1)。男性と女性の群の間で年齢の有意差は認められなかった。加えて、ばね指、高脂血症および肥満の有病率における有意差は 2 群間で認められなかった。糖尿病、血液透析および高血圧の有病率は、女性群よりも男性群で有意に高かった(それぞれ、P<0.01、P<0.01、P=0.03)。一方、非改善群の糖尿病の有病率は男性で 42.9%、女性で 31.6%であった。術前夜間痛の発生率は男性群で 39.4%、女性群で 31.5%であった(P=0.06)。一方、母指球筋萎縮の存在は、男性群よりも女性群で有意に高かった(P<0.01)。

図 1 に基礎疾患の合併数を示す。基礎疾患の合併数の分布に有意差を認めた(P<0.01)。女性群の 28%は基礎疾患を有していなかった。

術前の電気生理学的検査結果を表 2 に示す。女性患者 454 手中、263 手(57.9%)はPadua分類の中等度のサブグループに分類され、男性患者は 48.7%で中等度のサブグループに、31.6%で重度のサブグループに分類された。

【考察】
基礎疾患に関連する過去の報告との比較
著者らは、屈筋腱鞘の腫脹による手根管内圧の上昇が手根管症候群の最も可能性の高い病理学的メカニズムであると考えている。基礎研究では、Jinrok らは特発性手根管症候群の患者 10 例の腱鞘滑膜下結合組織について検討した。手根管症候群患者の典型的な病理所見には血管増殖、血管肥大、壁肥厚を伴う血管閉塞があることを報告した。

加齢と糖尿病に関連して、糖化最終産物(AGEs)は様々な臓器、特に関節組織に蓄積し、関節組織を損傷することが観察されている。Ying-Ju らの報告では、AGE は滑膜血管新生と炎症を有意に誘導した。他の可能性は糖尿病が手根管に腱鞘炎を引き起こすことであった。

尿毒症は慢性腎機能障害に起因する代謝性疾患である。過去の報告では、尿毒症が血液透析と腹膜透析を受けている患者で手根管症候群と関係することを示している。別の研究では、若年集団では併存疾患が手根管症候群とより強く関連することが報告された。手根管症候群の原因は β2‐ミクログロブリンのみならず、滑膜炎やアミロイドーシスによる手根管の圧迫も考えられる。

高血圧は手根管症候群に関連する一般的な医学的問題でもあり、Edwards らは高血圧が皮膚感覚閾値の上昇および感覚活動電位の振幅の減少を介して、感覚神経伝導を障害する可能性があることを報告した。

本研究では、糖尿病、血液透析および高血圧の有病率は女性群よりも男性群で有意に高かった。厚生労働省の 2016 年の報告によれば、正常集団における糖尿病の有病率は男性で 16.3%、女性で 9.3%であった。著者らの研究では、手根管症候群患者における糖尿病の有病率は男性群で 41.5%、女性群で 19.6%であり、これらは正常集団の 2倍以上であった。一方、正常集団における高血圧の有病率は男性で 34.6%、女性で 24.8%であり、高血圧の合併は手根管症候群患者で特異的ではなかった。

考えられる女性の手根管症候群の原因
特に閉経前後の女性における手根管症候群の発生率が高いため、女性に対する特異的危険因子および閉経に関連するホルモン変化の役割が示唆されてきた。しかし、 Toesca らは手根管症候群患者から得た横手根靭帯と滑膜組織の両方でエストロゲン受容体 α(ERα)の発現およびプロゲステロン受容体(PR)を観察したが、ER および PR陽性細胞の数に男女群間で統計的有意差は認められなかった。さらに、Mohammadiらは、横手根靱帯における ER の発現および血清エストロゲン濃度が対照群と比較して症例群で有意差がないことを報告した。したがって、手根管症候群と女性ホルモンの変化との関連については否定的である。

電気生理学的および臨床所見:性差に関する過去の報告との比較
諸家の報告によると、男性における電気生理学的検査の重症度が女性より有意に高いことを示した。浮腫は手根管症候群の初期段階を意味し、神経上膜肥厚は神経の慢性変化の徴候である。男性は女性よりも術後の転帰が悪く、高齢患者および喫煙者も同様であることが示されている。Bland らの報告によると、手根管症候群は女性に多くみられるが、男性および高齢者では重度であった。著者らの所見は Bland らの所見と一致した。

本研究は、Padua 分類の重症度が男性群と女性群の間で異なることを示した。Severeのサブタイプは女性よりも男性で多かった。糖尿病の有病率が男性群でより高いと考えると、男性における神経伝導速度の不良は糖尿病性神経障害と関連する可能性がある。

【結語】
男性の手根管症候群は糖尿病や透析による神経障害との関与が示唆された。女性は基礎疾患がほとんどなくても手根管症候群を発症していた。今後は縦断研究により糖尿病と手根管症候群の因果関係を明らかにする必要がある。

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