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大学・研究所にある論文を検索できる 「難治性心不全診療における栄養・代謝マーカーの臨床的検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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難治性心不全診療における栄養・代謝マーカーの臨床的検討

齊藤, 暁人 東京大学 DOI:10.15083/0002002401

2021.10.13

概要

【背景】
我が国では高齢化社会を迎え心不全の患者数は急速に増えており、社会問題となりつつある。一方で心不全治療の進歩に伴い、従来の内科的治療に抵抗性の難治性心不全や小児期以後の予後が飛躍的に向上した先天性心疾患の成人期に対する心不全治療など、より問題が多岐にわたり複雑化している。これら特殊な状況下での栄養・代謝と心不全の関連は不明であり、次の2つの研究を行った。

【研究Ⅰ】
植込型補助人工心臓装着患者における術前CONUT(controlling nutritional status)スコアの予後予測マーカーとしての有用性

<目的>
従来の心不全治療では薬物治療が基本となり、β遮断薬、レニン—アンギオテンシン系阻害薬、抗アルドステロン薬などが用いられる。デバイス治療による心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy: CRT)も一定の有効性があったが、これらの内科的治療では対応できない症例も少なからずあった。そのような内科的治療抵抗性の重症心不全に対して外科的な補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)治療が次なる治療手段であり、昨今その症例は飛躍的に増えてきている。しかしVAD治療においては心血管イベントのほかに血栓症や出血合併症、感染症といったVAD特有の合併症があり、より複雑である。我が国におけるVADの適応は重症心不全症例の心臓移植の橋渡し的治療に限定されているが、深刻なドナー不足のため使用期間も長期化する一方であり、さらには心臓移植の待機的治療ではないDestination therapyとしての適応も検討されており、今後ますます症例数の増加が見込まれる。従って、VAD治療の適応拡大に向けて、どのような患者状態でVAD治療を受けるのがよいかということは検討すべき急務である。そこで筆者は、重症心不全患者の栄養状態に着目した。栄養指標のスコア化は循環器診療における有用性の報告がなされている。多くのメタ解析により低栄養が心不全の入院期間や再入院、合併症、死亡率との関連が言われている。複数ある栄養評価法のうち、血清アルブミン値、総リンパ球数、総コレステロール値の3つのバイオマーカーをスコア化しその総和(0-12点)から正常、軽度、中等度、重度の4段階で栄養障害を評価するCONUTスコアは比較的簡便かつに栄養状態を評価できる評価法である。今回はCONUTスコアを用いて植込型VAD装着手術前の栄養状態を評価し、術後の予後との関係について検討を行った。

<方法・結果>
2014年から2016年の間に東京大学医学附属病院で植込型VAD装着手術を受けた18歳以上の患者、連続63名を対象として術前の患者背景および術前のCONUTスコアを算出し、CONUTスコア<5点(正常および軽度栄養障害群)とCONUTスコア≧5点(中等度及び重度栄養障害群)の2群に分けて、術後の経過、合併症、死亡について調査した。平均フォローアップ期間は23.9ヶ月であった。結果、高CONUTスコア群では低スコア群と比較すると有意に全死亡が多かった(高CONUTスコア群: 6(25.0%) vs 低CONUTスコア群: 1(2.6%), p=0.006)。全出血に関しても高CONUTスコア群で有意に多かった(高CONUTスコア群: 12(50.0%) vs 低CONUTスコア: 7(18.0%), p=0.007)。Kaplan-Meier曲線による生存曲線でも全死亡および全出血の発生率に関して有意に高CONUTスコア群で高かった。全死亡を予測する指標として、CONUTスコアのROC曲線(Receiver operating characteristic curve)を描くとカットオフ値は5となり、曲線化面積(Area under the curve: AUC)は0.782であった。

【研究Ⅱ】
成人先天性心疾患における呼気一酸化窒素測定の有用性の探索

<目的>
これまで、先天性心疾患患者のうち成人期を迎えることができたのは半数に満たなかったが、ここ半世紀の心臓外科治療および内科的治療の発展のため、現在は乳児期を過ぎた先天性心疾患患者の90%以上が成人となっているとされる。それらの患者の中に複雑な心血管構造や血行動態を持つ患者も多く存在し、簡便に病態を把握することは難しい。改善したとはいえ依然として予後の悪い、成人の先天性心疾患患者の病態把握に有効なマーカーを探ることは非常に意義深いものと考えられる。一酸化窒素(nitric oxide: NO)は心血管疾患と関わりの強い物質であるが、その半減期の短さゆえ血中の濃度を直接的に計測することは困難である。一方で呼吸器疾患において、呼気中のNOを計測し診断に利用する方法が広まってきている。呼気NO測定は非常に簡便に検査が可能ということもあり、下気道の慢性炎症を伴う気管支喘息をスクリーニングする方法として臨床応用されており、その有用性はアメリカ胸部医学会/ヨーロッパ呼吸器学会のガイドラインにも明記されている。この呼気NO測定について、過去には心不全や肺高血圧といった循環器疾患との関連をみた報告があり、血行動態や肺血管障害との関連が示唆されている。そこで、今回筆者は成人先天性心疾患の病態と呼気NO値に何らかの関係を見出すことができないかを検討した。

<方法・結果>
2016年8月から2018年8月の間に東京大学医学部附属病院に入院し、半年以内に血行動態を評価する目的で心臓カテーテル検査を実施していた患者または同検査を行う目的で入院したACHD患者連続28名と17名の健常ボランティアを対象に呼気NO測定を行った。測定方法はAmerican Thoracic Society (ATS)/ European Respiratory Society (ERS)2005 guidelineに準拠して、呼気NO測定機器であるNIOX VERO®を用いた。カルテ情報よりカテーテル検査を含めた諸検査所見および患者背景を採取し、呼気NO値との関係を検討した。28名のACHD患者のうち心房中隔欠損症の患者が8名と最も多く、7名の心房中隔欠損症患者と1名の心室中隔欠損症患者を除いて何らかの心臓手術を受けていた。患者の平均年齢は31.7±6.0歳であり、17人に健常者の平均年齢は30.4±6.2歳であり、ACHD患者における呼気NO値の中央値(四分位範囲)は11.6±10(8-14)ppbであり、健常者の中央値は14(11-20)ppbであり、有意にACHD群で低値を示していた(p=0.043)。ACHD患者の病態について、呼気NO値の中央値10ppbで2群に分けて(呼気NO値≦10ppbと>10ppb)解析を行うと、チアノーゼを伴う患者は有意に低呼気NO群(呼気NO値≦10ppb群)に多かった(低呼気NO群: 8(50%) vs 高呼気NO群: 1(8.3%), p=0.020)。チアノーゼを予測する呼気NO値についてROC曲線を描くとカットオフ値は10ppbとなり、AUCは0.702であった。平均肺動脈圧や肺血流量、体血流量といったカテーテル検査所見との有意な関連は得られなかった。

【結論】
植込型補助人工心臓手術後の予後予測を目的とした術前の栄養スコアリングおよび成人先天性心疾患の病態と関連を示した呼気NO値は栄養・代謝マーカーとして難治性心不全診療に有用であると考えられる。

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