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大学・研究所にある論文を検索できる 「Order and Topology in Nonequilibrium Quantum Dynamics」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Order and Topology in Nonequilibrium Quantum Dynamics

龔, 宗平 東京大学 DOI:10.15083/0002006284

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名



宗平

龔さんは本論文において新しい観点から量子系の非平衡ダイナミクスを理論的に研究
しました。非平衡ダイナミクスを引き起こす要因としては、周期外場による駆動、非エル
ミート性による散逸、および瞬時にハミルトニアンを切り替えるクエンチによる駆動の
三種類を考慮しています。また、そのような非平衡ダイナミクスによって引き起こされる
現象としては、近年とくに話題となっている「時間結晶」、時間発展を表す行列積の普遍
性分類、非エルミート系のトポロジーの普遍性分類、エンタングルメント・スペクトルの
トポロジーの普遍性分類です。
純粋に理論的な計算から大規模数値計算までを駆使して、幾つもの最先端の話題を幅
広く研究した優秀な博士論文です。また、理論の予測を実験によって検証する可能性につ
いて検討していることは特筆に値します。
量子系の非平衡ダイナミクスは量子基礎論や非平衡統計力学の分野で、前世紀から多
くの研究がありますが、実験で検証できる理論はあまりありませんでした。ところが近年
は冷却原子系などで実際に理論的予測を検証できるようになり、それを背景にした新し
い問題意識の研究が現れ始めています。そのような中でも最先端の話題を、龔さんはこの
博士論文で扱っています。
第1章のイントロダクションでまとめられているように、第2章から第5章までの各
章ではそれぞれ、以下のような要因で駆動される非平衡ダイナミクスと、それによって引
き起こされる新しい物理を議論しています。
第2章:周期外場と散逸
:離散的「時間結晶」
第3章:周期外場
:時間発展の行列積ユニタリーの対称性分類
第4章:非エルミート性による散逸:非エルミート系のトポロジーの対称性分類
第5章:クエンチ
:エンタングルメント・スペクトルのトポロジー
最後に第6章でまとめと今後の展望が示されています。詳細な計算を示す四つの補遺が
付けられています。以下に第2章から第5章の各章の内容を詳しく述べます。
第2章で龔さんは、周期外場による離散的「時間結晶」の形成を議論しています。もと
もと「時間結晶」は、何らかの理由によって時間方向の並進対称性がより低い並進対称性
へと落ちる現象です。その可能性は連続的な時間並進対称性を持つ平衡状態では否定さ
れていますが、ここでは周期的な外場駆動のもと、駆動周期の整数倍の振動が見られる場
合を扱っています。このような対称性の破れは、通常は散逸によって弱められると考えが
ちですが、龔さんは散逸によって対称性の破れが促進される場合を理論的に提案し、数値
的に確認しました。

第3章で龔さんは、周期外場による時間発展の対称性を、行列積ユニタリーという観点
から分類しました。時間発展はユニタリー行列で表されるからです。これまでに、空間方
向への転送行列の積で表される状態のトポロジーによる普遍性分類は行われていました。
それに対して龔さんは、時間方向の転送行列の積で表される状態のトポロジーによる普
遍性分類を行いました。これによって、フロッケカイラル相を含むフロッケトポロジカル
相の統一的な分類理論を与えました。
第4章で龔さんは、散逸によるダイナミクスを表す非エルミート量子系の対称性によ
る分類を行いました。非エルミート系では、通常の量子力学でのエルミート共役が複素共
役と転置に分かれることに注目し、通常のエルミート量子系の対称性とは異なる非エル
ミート量子系の対称性に基づいたトポロジーの分類を行いました。その分類に当たって
は、複素平面上に分布する固有値に対する「エネルギーギャップ」を新たに定義した点も
評価できます。特に非自明で最も簡単な非エルミート系の例として「羽田野-Nelson 模型」
の固有値分布に表れるトポロジーを示しました。
第5章で龔さんは、クエンチによって引き起こされる非平衡ダイナミクスのトポロジ
カルな側面を議論しました。クエンチとは、量子系のハミルトニアンのパラメーターを瞬
時に変化させることを指します。ある量子系の基底状態に対してクエンチを加えると、ク
エンチ後のハミルトニアンに対しては高い励起状態まで含んだ状態が一般には現れます。
その状態のダイナミクスのトポロジーを、その系のエンタングルメント・スペクトルから
知ることを提案しました。エンタングルメント・スペクトルにおける準位交差が乱れに対
して安定であることを数値的に確認しました。
以上の四つの成果はそれぞれ既に有力な学術誌に公表されています。第2章は濱崎立
資氏と指導教員である上田正仁氏との共同研究、第3章は海外留学時の指導者である
Christoph Sünderhauf 氏・Norbert Schuch 氏・J. Ignacio Cirac 氏との共同研究、第4
章は蘆田祐人氏・川畑幸平氏・高三和晃氏・東川翔氏・上田正仁氏との共同研究、第5章
は上田正仁さんとの共同研究ですが、いずれも龔さんが主導し、主体となって行った研究
であると認められます。
以上のことから、この博士論文における龔さんの研究成果は博士(理学)の学位を授与
するに相応しいものであると判断します。

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