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大学・研究所にある論文を検索できる 「VWF-Gly2752Ser, a novel non-cysteine substitution variant in the CK domain, exhibits severe secretory impairment by hampering C-terminal dimer formation」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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VWF-Gly2752Ser, a novel non-cysteine substitution variant in the CK domain, exhibits severe secretory impairment by hampering C-terminal dimer formation

岡本, 修一 名古屋大学

2022.12.22

概要

【緒言】
von Willebrand factor(VWF)は、主に血管内皮細胞で産生され、血管損傷部位での血小板粘着や流血中での第Ⅷ因子の維持に関わる多量体(multimer)構造を呈する糖蛋白質である。VWFのmultimer構造は止血機能に必須の構造であり、cysteine残基を介したdisulfide(S-S)結合によって形成される。VWF monomerが小胞体においてC末端(CK domain)のS-S結合を介してC-terminal dimerを形成後、Golgi体への移送を経てN末端(D´D3domain)のS-S結合を介しN-terminal dimer形成することでmultimer構造を生じる。血中に分泌されたVWFはA Disintegrin-like and Metalloproteinase with Thrombospondin type I motifs 13(ADAMTS13)によってmultimerが適切な大きさに切断されることで血栓形成性が調節される。

VWFの量的・質的異常によって止血障害をきたす疾患がvon Willebrand disease(VWD)である。VWDは3病型に大別される。最重症型のType3VWDは、血中VWF抗原量(VWF: Ag)<5%で強い出血傾向を呈する。その分子病態は多様であるが、例えばCKdomainのcysteine残基にmissense変異を生じると、C-terminal dimerに関わるS-S結合が破綻しtype3VWDを生じることがある。しかしCK domainにおけるcysteine残基以外のmissense変異がtype3VWDの病因となった例は報告されていない。

【目的】
VWFサブユニットのCK domainにおける新規変異であるVWFc.8254G>A(p.Gly2752Ser)をホモ接合体で有するtype3VWDの1例について、変異VWFの分子病態について検討を行った。

【対象および方法】
患者は49歳男性、幼少期の繰り返す鼻出血を機にVWDと診断、血中VWF:Agは検出感度未満と報告されていた。国際血栓止血学会によるISTH/SSC出血評価スコアは8点と他のtype3VWD患者に比して出血傾向は軽度であった。

患者由来検体を用いた検討
遺伝子解析は、患者血液からDNAを抽出しNext generation sequenceとSanger法によって行った。患者血中VWF蛋白について、enzyme linked immune sorbent assay(ELISA)によるVWF: Ag測定、SDS-agarose電気泳動とWestern blotによるmultimer解析を行った。血管内皮細胞におけるVWFの発現状態は、患者末梢血単核球から樹立したendothelial colony forming cell(ECFC)の免疫蛍光染色を行い、共焦点顕微鏡で観察した。

変異遺伝子の強制発現実験による検討
野生型VWF(VWF-WT)を一過性に発現させるベクターであるpSVVWF1をもとに変異型ベクター(pSVVWFG2752)を作製し、COS-7細胞またはHEK293細胞に一過性に導入してrecombinant VWF (rVWF)の強制発現系を構築した。発現したrVWFについて、ELISA法による細胞外分泌量の測定とmultimer解析、小胞体/Golgi体との細胞内共局在について免疫蛍光染色を行い検討した。

本研究は名古屋大学医学部生命倫理委員会の承認を得て行った(承認番号2015-0391、2016-0477)。

【結果】
患者由来検体を用いた検討患者はVWFc.8254G→A(p.Gly2752Ser)変異をホモ接合体で有し、父・母・長男・次男はヘテロ接合体で有していた(Figure1A-B)。combined annotation dependent depletion (CADD)とGrantham scoreはそれぞれ32点、56点で本変異がVWFの構造や機能に与える影響は比較的強いと考えられた。

患者血中VWFの検討では、健常人の1.2%(0.12g/mL)のVWF: Agが検出された。multimer解析では高分子量域から中分子量域が広範に欠損し、monomerとdimerから成る特徴的な構造を呈した(Figure1C)。

ECFCの免疫蛍光染色では、微量ながら核周囲に限局したVWFの発現を認めた(Figure2)。

病因遺伝子の強制発現系による検討
強制発現系における検討では、rVWF-Gly2752Serは患者血中VWFと同様に細胞外分泌が著しく低下し(Figure3A)、multimer構造は高分子量域から中分子量域にかけて広範に欠損していた(Figure3B)。HEK293細胞を用いてrVWFと小胞体/Golgi体との細胞内局在の程度を検討したところ、rVWF-Gly2752SerではrVWF-WTに比して小胞体と強く共局在していたが、Golgi体との共局在はほとんど認めなかった(Figure4)。CK domainにおいてGly2752はSer2756と水素結合を形成する(Figure5A)。Gly2752Serはcysteine残基の直接的な障害はないが、Ser2756との水素結合の破綻がC-terminal dimerizationの障害に影響している可能性が考慮された。Ser2756をalanineに置換したrVWF-Ser2756Ala、rVWF-Gly2752Ser-Ser2756Alaについてmultimer解析を行ったところ、Gly2752Ser変異の病態にGly2752-Ser2756間の水素結合の破綻が関与していることが示された(Figure5B)。

【考察】
VWFc.8254G>A(p.Gly2752Ser)変異では,multimer構造が広範に障害された微量のVWFが検出され、病型分類はtype3VWDであった。

rVWF-Gly2752Serの検討では、小胞体からGolgi体への細胞内移送障害によってGolgi体におけるN-terminal dimerの形成不全を生じ、multimer構造の形成が障害されていると考えられた。また、Gly2752-Ser2756との水素結合の破綻が病態に関与していることが示唆された。

【結語】
Type3VWDの新規変異であるVWFc.8254G>A(p.Gly2752Ser)変異は、CK domainにおけるC-terminal dimerの形成障害と、それに伴う小胞体からGolgi体への細胞内移送障害によって重度の細胞外分泌障害を呈した。

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