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書き出し

ExacTrac®システムを用いた皮膚マーカーレス乳房照射のセットアップ方法の開発とその評価

丹羽, まい子 名古屋大学

2023.05.17

概要

学位報告4

別紙4
報 告 番










論文題目














ExacTrac®システムを用いた皮膚マーカーレス乳房照射の
セットアップ方法の開発とその評価
丹羽まい子

論 文 内 容 の 要 旨
1. 背景・目的
放射線治療は標的に放射線を集中させると同時に、周囲の正常組織の被ばくを最小限にしなけれ
ばならない。このため、より正確な治療を行うためには放射線治療計画 CT 撮影時と照射時の体位の
再現性が重要となる。乳がんへの放射線治療では従来は患者の皮膚に十字状の印を描き、それを
指標にセットアップをしていた。一方、その印を治療期間である 5 週間消えないように保持し続けなけ
ればならないため、生活の制限や精神的ストレスが患者に生じていた。さらに皮膚の伸縮や動きによ
って、体内構造物と皮膚の位置関係が変わってしまうというスキンシフトが生じ、セットアップの再現性
に限界があった。また Annual Young Survival Coalition (YSC) meeting での調査にて、乳房温存術後
照射を受けた女性のうち 70%が皮膚マーカーへ嫌悪感を抱いており、78%の女性が皮膚マーカーを
必要としない別の照射方法があるのであれば、そちらを選択したいとの集計のがされた。そこで近年
では皮膚マーカーを必要としない surface guided radiotherapy(SGRT)という方法の研究が進みつつ
ある。SGRT では光学式患者ポジショニングシステムを使用して患者の皮膚表面をスキャンし、治療計
画時の患者の体表面イメージと合わせこむことで、皮膚の印を必要としないで患者のセットアップを行
うことができる。しかし現段階では、印を付けたり、乳房内に金属マーカーを植え込まないとセットアッ
プ精度を維持できないとの報告がある。また、光学式患者ポジショニングシステム専用の装置を必要
とするが、高額であるため、まだ広くは普及していない。
そこで ExacTrac®システムを乳房照射に適用することを提案する。ExacTrac®システムとは,kV の X
線撮像システムと赤外線カメラによるナビゲーションシステムにより構成され、患者セットアップを従来
に比べ高精度かつ短時間に実施することができるシステムである。ExacTrac®システムは幅広い部位
の放射線治療に用いることができるため、現在多くの施設に導入されている。しかし ExacTrac®システ
ムは骨の構造を指標にして患者のセットアップを行う為、骨構造の乏しい乳房照射にはこれまでは使
われることはなかった。そこで乳房近辺の骨構造を指標としてセットアップを行い、その骨構造と乳房

の位置関係を補正する事により、ExacTrac®システムを乳房照射へ適用する。本研究の目的は、
ExacTrac®システムを用いる事によって皮膚マーカーを必要としない乳房照射のセットアップ方法を
確立し、そのセットアップ精度を明らかにすることである。このセットアップ方法により、皮膚マーカーの
保持のための生活制限やストレスがなくなり、さらにはスキンシフトに起因するセットアップの不確かさ
が軽減されることが予想される。
2. 方法
トヨタ記念にて乳房部分切除の乳房温存術後照射を行った患者を対象に①患者の皮膚に印を描き
それを目印にセットアップをする方法(従来法)と、②ExacTrac®システムを用いる事によって皮膚の
印を必要としない乳房照射のセットアップ方法(ExacTrac 法)の二つのセットアップ方法を実施しその
セットアップ精度を比較した。本研究での従来法、ExacTrac 法の手順を下に記す。
従来法:4 つの皮膚マーカーを使用する。技師によって、室内の位置決めレーザーに皮膚マーカー
を合わせるように患者のセットアップを行い、治療前に乳房を撮影して乳房の輪郭と肋骨の位置関係
が治療計画と合っているかを確認してから治療を行う。
ExacTrac 法:ExacTrac®システムによるセットアップでは照射野中心であるアイソセンターが照合画
像の中心として用いられる。しかし乳房照射のアイソセンターは乳房中心にあるため、患者の位置決
めのための照合画像に、肋骨や肩関節といった呼吸や腕の曲げ伸ばしで変動する骨構造が含まれ
てしまう。こういった骨構造による位置照合の間違いを防ぐために、仮想のアイソセンターを用いた。
仮想アイソセンターには治療計画 CT でアイソセンターと同スライス上の椎体を使用した。照射手順は
3ステップである。まず患者を寝台に寝かせる。従来法と同じように、体位は仰臥位で両手をブレスト
ボードの上にあげた状態である。ステップ1として、患者をアイソセンター近傍にセットアップする。この
ステップ1では乳房中心付近にアイソセンターが来るように目視で確認する簡単な位置合わせで十分
である。ステップ2では、治療計画 CT 画像から計算されたアイソセンターと仮想アイソセンターの位置
距離をもとに、患者を仮想アイソセンターへと移動する。そして仮想アイソセンターにて、ExacTrac®シ
ステムの画像照合による患者のセットアップを行う。2 つの k V の X 線装置で患者を撮影し、治療計
画 CT の画像と現在の患者の画像を照合することで、患者のセットアップを行う。仮想アイソセンター
でのセットアップ終了後、CT 画像から計算されたアイソセンターと仮想アイソセンターの位置距離をも
とに患者をアイソセンターへと移動する。
二つのセットアップ方法の比較には、患者透過後の治療用X線ビームデータを利用した。患者透過
後の治療用 X 線ビームから作成された実際の照射結果を表す積算線量画像を、治療計画装置から
あらかじめに予測される積算線量画像との比較を行い、その画像の一致率を計算することで、治療計
画通りに放射線治療が行われているかうかを解析した。解析には Gamma 解析を用い、従来法と
ExacTrac 法の患者の Gamma パス率の平均と標準偏差を算出した。Phantom 実験より Gamma 判定
基準 3%/3 mm を本研究の最適値として用いた。

3. 結果および考察
Gamma 解析の結果、Gamma パス率の平均は従来法で 86.0±10.2%、ExacTrac 法で 90.9±6.9%で
あった。この結果より、本研究で新しく開発した ExacTrac 法は従来法と変わらない精度で実際に患者
のセットアップを行うことが明らかとなった。本研究での Gamma パス率は、治療機器起因の誤差と患
者起因の誤差を含んでいる。特に、患者の呼吸は照射中にも胸郭が 2.0±0.7 mm 動くことが知られ
ている。積算線量画像での誤差は乳房の辺縁で大きくなったことからも、患者の呼吸による誤差の影
響が大きいことが示唆される。
従来法の Gamma パス率は、治療の終わりに従って低くなる傾向にあった。これは乳房の変形やスキ
ンシフトの影響が大きくなっていくためであり、従来法は放射線技師が患者の体を捻って整位するた
めその影響が大きくなった。また Gamma 解析の結果を照射前の画像と重ね合わせて、線量差の出て
いる部位を確認することで、次の日の整位に役立てることができた。
さらに乳房の体積が 500 ml 以上、500 ml 以下の 2 グループに分類して Gamma パス率の変化を分
析したところ、500 ml 以上のグループの方の Gamma パス率が低い傾向であった。これは大きい乳房
の方が、照射による形の変化や毎回の患者セットアップによる乳房のねじれの影響が大きいので、セ
ットアップの再現性が悪くなるためである。従来法では技師が手で患者の体を捻って角度を直すため、
この影響は大きくなる。
しかし ExacTrac 法では毎度の治療で、画像照合のための k V 画像撮影として 0.551 mGy の追加
線量が照射されるため、このことも考慮して使用されることが勧められる。
4. 結論
本研究で新しく開発した ExacTrac 法は皮膚マーカーを必要としない乳房照射のセットアップ方法と
して、従来法と同等以上のセットアップ精度を誇ることが証明された。
ExacTrac®システムは現在多くの施設に導入されているため、この ExacTrac 法が皮膚マーカーを必
要としない乳房のセットアップ方法の一つとして、広く広がることが期待される。

この論文で使われている画像

参考文献

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16

謝辞

本研究の遂行及びに本論文の作成にあたって、研究に従事する者としての基本的な心構えや投稿方法、

論理的思考力の養い方などを終始ご指導ご鞭撻を賜りました名古屋大学大学院医学系研究科 小森雅孝

准教授に深く感謝するとともに、心より御礼申し上げます。

本研究で進めるにあたり、TrueBEAM を提供し実験を進めせてくださったトヨタ記念病院に厚く御礼申し上

げます。

最後に応援し支え続けてくれた家族に心から感謝申し上げます。

17

付録

Gamma 解析について

Gamma 解析とは、2 つの線量画像を比べてその相違を線量誤差である Dose Difference (DD)、位置誤差

である Dose to Agreement (DTA)の2視点から比較することのできる画像解析方法である。Low らによって

1998 年に提案され、線量誤差 DD と位置誤差 DTA を複合して評価することができるため、放射線治療の

画像解析ではよく利用されている[A1-3]。この Gamma 解析を用いることによって、線量誤差の出やすい線

量勾配が急な領域に対しても位置誤差を考慮して評価することができ、線量誤差の出にくい緩やかな領域

と同じように線量分布全体を定量的に評価することができる。

評価点から Gamma 判定基準(ΔDD/ΔDTA)内全ての点での gamma indexγ‘を式 1 で計算し、その最

小値を Gamma indexγとする。ΔDD は処方線量に対しての判定線量(%)、ΔDTA は評価点からの距離

(mm)で表される。

そして、Gamma パス率は線量分布の全点に対して Gamma index が Pass(γ≦1)、Fail(γ>1)かを集計し、

Pass した点の数の割合で表される。Gamma 判定基準(ΔDD/ΔDTA)を変化させることで評価点を判断す

る任意点の数が変わるため、Gamma パス率は大きく変わる。各施設の治療機器の精度管理状態や、解析

する画像の解像度によって最適な Gamma 判定基準(ΔDD/ΔDTA)は変わるため、各施設において最適

値を決定する必要がある。

!!

!$%&'()*

Gamma index γ` = !"

# +"

△!!

DD =

評価点での線量値"任意点での線量値

処方線量

(A1)

△!+,

(%)

△DD = DD 判定基準値(%)

Distance = 評価点から任意点までの距離(mm)

△DTA = DTA 判定基準値(mm)

Fig.A1

Schematic representation of the theoretical concept of the gamma index

18

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19

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