有無線融合ネットワークの将来と光ファイバ伝送の役割
概要
第5世代携帯電話システム(5G)の実用化が端緒につき、 高速大容量、低遅延、多接続といった3つの特徴を生か した様々な応用が期待されている[1]。一方で、これらの すべてを実現するためには莫大な電波資源が必要となる。電波資源逼迫の課題を解決するために、電波で接続する 区間を極力短くし、サイズの小さいセルを多数用いるこ とが必要とされている。莫大な数の多数の基地局が必要 という指摘もある[2]。基地局間をつなぐモバイルバック ホール、リモートアンテナユニットをつなぐモバイルフ ロントホールの重要性がより高まっていくことは間違い ない[3]。基地局間の接続には我が国を含む東アジアでは 光ファイバが広く用いられてきた。
一方、需要が小さい郊外などでは途上国を中心に固定無線による接続が依然として用いられている [4-6]。モバイルバックホール、フロントホールに要求される伝送容量の増大が続いていたこともあり、最近では固定無線のシェアが低下し、光ファイバの利用が全世界で広がる傾向にあったが、5G では東アジアにおいて光ファイバのシェアが低下に転じるという予測がある[7]。これは、5G においては必要となる基地局、リモートアンテナユニットの数が爆発的に増えるため、光ファイバ伝送が普及している東アジアにおいても、すべてで接続することは困難となることを示唆しているものと思われる。
我が国おいてもすべてを光ファイバで接続することが困難となる可能性が高く、基地局もしくはリモートアンテナユニットの配置間隔は最短で照明器具と同程度の 10メートル程度となるであろう。テラヘルツ波やミリ波による高速固定無線がこれらを接続する手段の有力候補の一つとなり得る。もちろん、光ファイバ通信の役割が低下することはなく、必要となる光ファイバリンクの数は絶対数では増加を続けることは間違いない。すでに、 Beyond 5G や 6G についての議論が始まりつつあるが、これらのシステムでは光ファイバ通信と短距離高速固定無線がシームレスに融合したネットワークが必須となると考えている。
本稿ではミリ波・テラヘルツ帯を用いた高速無線通信 システムの研究動向や有無線融合システムの研究開発例 について紹介し、将来期待される役割について議論する。