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大学・研究所にある論文を検索できる 「Laboratory experiments and telescope observations toward understanding physicochemical properties of Europa's surface materials」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Laboratory experiments and telescope observations toward understanding physicochemical properties of Europa's surface materials

丹, 秀也 東京大学 DOI:10.15083/0002006687

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名



秀也

本論文は、木星衛星エウロパ表面における塩化物の分光学的・地球化学的研究にもとづ
いた、エウロパ内部海の化学組成についての研究成果をまとめたものである。
本論文は5章からなる。第1章は、イントロダクションであり、木星衛星エウロパの内
部に存在すると考えられている海の化学組成や酸化還元状態に関する現状理解が限定的
であることが述べられている。それに続き、エウロパ表面に見られるカオス地形には、内
部海水が起源と考えられる塩化物が存在することが述べられている。その上で、本研究の
目的は、エウロパ表面の望遠鏡分光観測、塩化物の電子照射実験、反射スペクトルの混合
モデル計算により、エウロパ表面の塩化物の種類と粒径を推定し、エウロパ内部海の化学
組成とカオス地形の形成過程を含む地球化学的・地質学的プロセスを定量的に論ずるこ
とであることが述べられている。
第2章はカオス地形の望遠鏡分光観測について述べられている。すばる望遠鏡近赤外
線撮像分光装置を用いて、高波長分解能の空間分解反射率スペクトルを得た。エウロパ表
面の反射スペクトルには水和塩による顕著な吸収特徴は見られなかったことから、水和
塩の存在量の上限を 10%以下と見積もっている。これは従来の観測でエウロパの反射率
の低さを説明するのに必要な塩化物の量(~20-40%)と比較して、かなり低い値であるこ
とから、エウロパの塩化物は、NaCl や NaClO4 などの無水塩である可能性が高いこと
を結論づけている。
第3章は、エウロパ表面での塩化物の化学変化を論ずるために、高エネルギー粒子や太
陽紫外線の照射を模擬した電子・紫外線照射装置を新たに開発し、水氷と塩化物の混合物
に対して照射実験を行なっている。また、長岡技術科学大学極限エネルギー密度工学研究
センターの電子線加速器を用いた MeV 電子線の照射実験も行なっている。従来の研究で
は、これらの照射により塩化物が酸化される可能性が指摘されてきたが、実験の結果で
は、温度、エネルギー源、氷中の酸化剤の存在など様々な実験条件にかかわらず、ClO4
と ClO3 の生成はみられなかった。このことから、エウロパの表面に蓄積された NaClO4
の上限量は、水氷に対して 2 mol%以下であり、エウロパでは NaCl が主要な塩化物であ
ると結論づけている。
第4章は、電子照射した NaCl の光学定数を求め、エウロパ表面の観測スペクトルと混
合スペクトルモデルの比較により、NaCl の粒径と量比の推定を行なっている。非照射
NaCl の混合物では観測スペクトルの再現性が悪いが、照射した NaCl の混合物では観測
スペクトルをよく再現できることを示しており、エウロパ表面の照射 NaCl の存在量は
40〜50%、粒径は数 µm 以上であると見積もっている。粒径が大きいことは、表面の塩
化物が内部海からのプルームなどによって直接もたらされた可能性を棄却し、氷地殻内
の塩水貯留層を介してもたらされたことを示唆している。
第5章は、以上の結果にもとづいて、エウロパ内部海について地球化学・地質学的視点

で論じている。カオス地形における主要な塩化物が NaCl であることから、内部海の Na
イオン/Mg イオン比を 10 以上と見積もっている。熱力学的平衡計算の結果から、そのよ
うな Na リッチな海水を実現するためには、海底での水−岩石反応における水/岩石比が 15
以下であると結論づけている。このような低い水/岩石比の説明として、活発な火成活動
によって海底岩石が更新されている可能性や海水が海底下の深い領域まで浸透し、海水
と岩石が反応している可能性が挙げられている。
本研究は多角的アプローチによりエウロパ内部海の化学組成に定量的制約を与えたも
のであり、極めて高い独創性と科学的達成度が認められる。
なお、本論文第2章は、関根康人氏・葛原昌幸氏との共同研究であり、第3章は、関根
氏に加え、菊池崇志氏・末松久幸氏・羽馬哲也氏・高橋嘉夫氏との共同研究であり、第4
章は、関根氏・葛原氏に加え、黒川宏之氏との共同研究であるが、論文提出者が主体とな
って発案、観測、実験、解析を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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