原発性アルドステロン症における術後アウトカム予測因子および病因腫瘍径と臨床所見の関連についての解析

概要

［課程－２］
審査の結果の要旨
氏名 中井 一貴
本研究は、二次性高血圧の原因として特に頻度が高い疾患である原発性アルドステロン
症（PA）の治療選択に関わる局在診断についての新たなエビデンスの創出を試みたもので
あり、下記の結果を得ている。
1. PA 局在診断のための標準的検査方法である副腎静脈サンプリング（AVS）の結果に基
づき片側副腎摘除術を受けた患者において、Primary Aldosteronism Surgical
Outocomes（PASO）の基準に則った術後アウトカムと非手術側副腎の AVS データが
関連しており、術後にアルドステロンが正常化しなかった群では非手術側副腎のアル
ドステロン絶対値やアルドステロン/コルチゾール比が高いことを示した。一方で最も
多用される AVS 診断指標である lateralization index は、術後アウトカムと有意な関
連がみられなかった。非手術側副腎 AVS データは術後の高血圧残存とも関連してお
り、既報の高血圧残存関連因子と同等に関連していることを示した。
2. アルドステロン産生腺腫の腫瘍径とアルドステロン産生能は、正の相関がないことが
報告されていたが、本研究で AVS により片側性を診断した充分な症例数を対象に解析
を行ったところ、腫瘍径が大きい群でアルドステロン産生能が高いことを示す結果を
得た。また、腫瘍径とアルドステロン産生能の指標に、有意な正の相関があることを
示した。
以上、PA 手術症例の AVS データにおいて、非手術側副腎のアルドステロン絶対値およ
びアルドステロン/コルチゾール比が PASO 基準の術後アウトカムに関連していること、
および片側性 PA の症例で病側最大腫瘍径が大きいとアルドステロン産生能が高いことを
示した。本研究結果が、PA の実臨床において、AVS データに基づいて術後アウトカムを
考慮した手術適応判断を行うことや、副腎腫瘍径とアルドステロン産生能という非侵襲的
に得られる臨床情報に基づいて手術適応病型の可能性を推測することに貢献すると期待で
きる。
よって本論文は博士（ 医学 ）の学位請求論文として合格と認められる。