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Evaluation of segment 4 portal vein embolization added to right portal vein for right hepatic trisectionectomy: A retrospective propensity score-matched study

Ito, Jun 伊藤, 準 名古屋大学

2020.06.01

概要

【緒言】
門脈塞栓術(portal vein embolization; PVE)は、広範囲肝切除術施行後に生じる肝不全を回避するための術前処置として広く行われている。切除予定肝の門脈枝を塞栓することにより塞栓葉の体積は減少する一方、残存予定肝の体積は増大する。肝右3区域切除術は、肝右2区域(前区域+後区域)に加え内側区も切除されるため、最も切除範囲の大きい肝手術である。肝右3区域切除前の門脈塞栓術において、肝右2区域の門脈塞栓に加え内側区の門脈枝(P4)の塞栓を追加する手法が報告されているが、P4塞栓の有無で残存予定肝である肝外側区の増大の程度に違いがあるかどうかは報告により差がある。P4の塞栓はやや煩雑で、また残存予定肝である外側区への塞栓物質迷入の危険性もあり、肝右3区域切除術前の門脈塞栓でP4を塞栓するべきかどうかについてコンセンサスは得られていない。

【対象及び方法】
2010年1月から2019年4月の間に胆道癌に対する肝切除術前の門脈塞栓術(経皮経肝で施行し、塞栓物質にゼラチンスポンジと金属コイルを使用)を施行した症例を後方視的に検討した。肝右3区域切除前の右葉門脈+P4を塞栓した症例(R3PVE)38例、肝右2区域切除前の右葉門脈を塞栓した症例(R2PVE)140例を対象に、塞栓前後の肝体積をCT画像を基にワークステーションを使用して計測した。R3PVE群とR2PVE群の間でベースの患者因子・肝体積を揃えるため、年齢・性別・body mass index(BMI)・糖尿病の有無・背景肝障害の有無・総ビリルビン値・アルブミン値・血小板値・プロトロンビン時間・塞栓前全肝体積・塞栓前外側区体積の計11項目を共変量とした傾向スコアマッチング(1:1マッチング)を施行した。主要評価項目として、門脈塞栓前後の外側区の体積変化をマッチング後の2群間で比較した。外側区体積変化の指標として、外側区体積の増加量、および外側区体積の増加率を2群間で比較した。また、PVE後の肝体積増大の指標として近年用いられることの多い、Degree of Hypertrophy(DH:標準肝体積を基に計算した、肝増大の程度)と、Kinetic Growth Rate(KGR:門脈塞栓施行から塞栓術後肝体積測定CTまでの期間を計算に入れた指標)も2群間で比較した。また副項目として右3区域門脈塞栓に伴う合併症、肝切除術後の肝不全の有無・在院日数もマッチング前の患者群で検討した。

【結果】
マッチングの結果、両群からそれぞれ28例が抽出された。年齢の中央値はR3PVE群が67歳、R2PVE群が68歳であった(p=.768)。男性の数はR3PVE群が18人、R2PVE群が16人であった(p=.785)。その他、共変量としてマッチさせたBMI、糖尿病の有無、背景肝障害の有無、採血での肝機能もそれぞれ両群間で差はなかった。肝障害があったのは7例(R2PVE群が4例、R2PVE群が3例)で、5例が慢性肝炎、2例が脂肪肝であり肝硬変の症例はなかった。PVE~肝体積計測CTの期間は、R3PVE群が26日、R2PVE群が19日であり、R3PVE群で有意に長かった(p=.006)。PVE前の全肝体積の中央値は、R3PVE群が1206cm3、R2PVE群が1155cm3で(p=.466)、PVE前の外側区体積はR3PVE群が300cm3、R2PVE群が278cm3であった(p=.238)。PVEによる外側区体積の増加量は、R3PVE群で有意に大きかった(R3PVE:146cm3vsR2PVE:70cm3;P<.001)。外側区の増加率もR3PVE群で有意に大きかった(52.4%vs32.3%;P=.010)。DH(11.9%vs5.8%;P<.001)、KGR(3.1%/weekvs2.0%/week;P=.042)についても、それぞれR3PVE群で有意に大きかった。また、両群間のPVE~肝体積計測CT期間の違いの影響を補正するために重回帰分析も施行したが、外側区体積の増加量(p=.002)、外側区の増加率(p=.038)、DH(p=.005)、KGR(p=.030)のいずれもR3PVE群で有意に大きかった。

右3区域門脈塞栓が施行された全38例のうち、外側区に塞栓物質が迷入した症例はなかった。門脈塞栓に関連した合併症を生じたのは2例で、1例は肝穿刺時の動脈損傷、1例はPVE後の胆汁漏形成であったがそれぞれ治療によりその後は大きな問題なく経過していた。

マッチング前の全178例のうち、肝切除が施行されたのはR3PVE群で38例中30例、R2PVE群で140例中105例であった。このうちISGLS分類でGradeB以上の術後肝不全を認めたのはR3PVE群で9例(30%)、R2PVE群で28例(27%)あり(P=.817)、術後在院日数の中央値はR3PVE群が22日、R2PVE群が26日であった(P=.188)。R3PVE群は右3区域切除で侵襲が大きいにも関わらず術後肝不全の有無、術後在院日数ともR2PVE群と比較し有意差はなかった。

【考察】
門脈P4塞栓の有用性評価のためR3PVEとR2PVEの間で肝外側区増大の程度を比較した報告はいくつかあり、R3PVEの方が外側区増大が大きかったとするものや、R3PVEとR2PVEで有意な差がなかったとするものがある。これらの先行研究では、PVE前の肝体積の条件が2群間で揃っていない、肝体積測定時にCTの肝領域をマニュアルでトレースしている、各報告の中で異なる塞栓物質を使用した症例が混在している、といった点がみられ、これらが結果に影響している可能性がある。本研究では、傾向スコアマッチングによりR3PVE群とR2PVE群の背景因子が揃っており、肝体積はワークステーションを使用し計測し、また塞栓物質を含めPVEの手技は全症例で統一されている。これらの条件のもとで、外側区の増大はR3PVE群のほうがR2PVE群より有意に大きいことが示された。

本研究は、肝右3区域切除術予定患者の中でP4塞栓ありとなしの群を比較したのではなく、肝右3区域切除前の右葉門脈+P4塞栓群と肝右2区域切除前の右葉門脈塞栓群を比較したものである。2群間での予定術式の違いに伴う背景患者因子の違いがPVEによる肝体積増大に影響している可能性があるため、背景因子を揃えるべく傾向スコアマッチングを施行した。PVEによる肝増大に影響を与える因子は複数報告されており、PVE前の残存予定肝の体積は最も影響の大きい因子のひとつである(塞栓前の残存予定肝が小さいほうが増大しやすい)。本研究では、残存予定肝体積を含めPVE前の複数の因子を過去の報告から選出し、共変量として用いて傾向スコアマッチングを行うことで両群の条件を一致させた。本研究では、肝体積増大の指標として外側区の増加量・増加率に加えDHとKGRも比較した。DHとKGRは肝切除後の肝不全の発症と相関する指標として報告され、近年PVE後の肝体積増大を検討する際に用いられることが多い。特にKGRが2%/week以上であることが、肝不全のない術後経過と最もよく相関したと示されている。今回、KGRに関してもR3PVE群のほうがR2PVE群より有意に大きかった(3.1%/weekvs2.0%/week)。

本研究のLimitationとして、単施設・後ろ向き研究であり傾向スコアマッチングでは調整されないような潜在的な選択バイアスの可能性があること、胆道癌症例に限定していること、肝体積測定の際に肝内血管・胆管と肝に浸潤した腫瘍の分を肝体積から差し引いていないこと、2群間で肝切除の術式が異なるためP4塞栓の有無と術後経過や予後の関連は正確には評価できないことが挙げられる。

【結語】
肝右3区域切除術前の門脈塞栓時に、右葉門脈に加えP4を塞栓することで、右葉門脈の塞栓のみと比較し残存予定肝体積をより増大させる。

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