リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「就労女性の労働生産性向上のための更年期症状マネジメントプログラムの開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

就労女性の労働生産性向上のための更年期症状マネジメントプログラムの開発

橋本 恵子 東北大学

2021.03.25

概要

【背景】更年期症状は、労働生産性に影響することが報告されている。少子高齢化が進む中、女性の労働 力の増加とそれに伴う就労更年期女性の増加を鑑みると、就労女性において更年期症状をマネジメントして、労働生産性を維持させることが重要である。そのためには、まず日本における更年期前後の就労女性の更年 期症状やその対処行動の実態、更年期症状と労働生産性の関係を明らかしたうえで、就労女性に合った更年 期症状のマネジメントプログラムを開発する必要がある。更年期症状は、心理的社会的要因が複雑に絡み合 って発症することから、様々な症状を包括して扱える支援として認知行動療法が有効である。そこでインタ ーネットベースの認知行動療法を基軸とした更年期症状マネジメントプログラムを開発することとした。本 研究の目的は、【研究 1】更年期前後の就労女性の更年期症状の実態と労働生産性への影響を明らかにする。【研究 2】インターネットを用いた認知行動療法を取り入れた更年期症状マネジメントプログラム(Menopause Symptoms Management Program: MSM プログラム)を開発し、プログラムの有効性と、普及に向けた実施可能性の検討を行うことである。

【研究 1:方法】45~65 歳の就労女性 599 名を対象に、基本属性、更年期症状、労働生産性(プレゼンティーズム)、ワーク・エンゲイジメント、職業性ストレスを用いて、ウェブ調査を実施した。個々の更年期症状より、複合した症状の結果が仕事に関連している可能性があることから、保有する更年期症状群数ごとに 4 群(0-1 群、2 群、3 群、4 群)に分け、参加者の属性、職業性ストレス、ワーク・エンゲイジメント、プレゼンティーズムを比較した。さらにプレゼンティーズムに関連する要因の検討を行った。

【研究 1:結果】参加者の平均年齢は 54.2±5.8、60.6%は閉経後であった。更年期症状 0-1 群に比べ、その他の群は要介護者がいる、疾患がある、定期的な運動習慣がない者の割合が有意に高かった(p<0.05)。重回帰分析の結果、プレゼンティーズムは保有する更年期症状群数と負の関係があった(β=-0.13, p< 0.001)。また、心理症状(β=-0.161、p<0.001)、身体知覚症状(β=-0.150、p<0.001)もプレゼンティーズムと負の関連があった。

【研究 2:方法】40~60 歳未満の大学病院看護職を対象に、前後比較試験を実施した。介入は、更年期症状の知識と対処方法の学習、職場での心理症状の対処方法の習得・実践で構成した MSM プログラムであった。心理症状の対処方法は、認知行動療法のコラム法を使用した。介入の効果評価は、更年期症状、プレゼンティーズム、更年期症状の対処行動について、ベースライン調査(T1)を基準として、プログラム実施直後調査(T3)とフォローアップ直後調査(T4)の結果を比較した。また更年期症状の改善・コラム法実施回数に関連する要因の検討を行った。

【研究 2:結果】研究参加者 21 名のうち 4 名が、仕事による多忙を理由に参加を辞退し、T4 まで追跡できた 17 名を解析対象とした。プログラムを完遂した 17 名の年齢の中央値(範囲)は 49.0(40-59)歳、閉経前 4 名(23.5%)、閉経周辺期が 4 名(23.5%)、閉経後は 9 名(52.9%)であった。T1、T3、T4 での変化を比較したところ、プレゼンティーズムは、T1 と比較して T4 で得点が増加していた。対処行動は、T1 と T4の 2 時点で違いは認められなかった。コラム法実施回数を、更年期症状とプレゼンティーズムの T1 から T4の変化の間で相関係数を算出したところ、コラム法の実施回数は、心理症状(ρ=-0.641, p=0.014)、血管運動症状(ρ=-0.579, p=0.030)で負の関連、年齢で正の関連があった(ρ=0.657, p=0.004)。Green Climacteric scale (GCS)の合計得点と各症状の T1-T4 の変化を従属変数とした重回帰分析では、心理症状の T1-T4 の変化は、コラム法の実施回数との間に負の関連傾向が認められた(β=-0.415, p=0.094)。

【考察】本研究により、保有する更年期症状群数、更年期症状の中でも心理症状や身体知覚症状の重症度と、プレゼンティーズムが関連することが明らかとなった。保有する更年期症状群数の多さは、疾患があること、運動習慣がないこと、職業ストレスが高いことが関連していたことから、疾患のコントロールや健康的な生活習慣により健康を維持すること、就労環境を整え職業性ストレスを軽減することにより、更年期症状とプレゼンティーズムが改善する可能性が示唆された。また、日本人就労女性は更年期症状の中でも心理症状の有病率が高いという特徴が明らかとなったことから、更年期症状とプレゼンティーズムの改善には、心理症状の対処方法の習得が有用であろうと考えた。

MSM プログラムの介入の結果、プレゼンティーズムが向上したことから、労働生産性が回復している可能性が示唆された。またコラム法の実施は、心理症状の改善につながった。今後は、更年期女性全般に利用可能なプログラムにするための改善を加える必要がある。そのうえで症例数を増やし、看護職以外の就労更年期女性において効果を確認する必要がある。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る