リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「医療観察法病棟における重症長期入院因子の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

医療観察法病棟における重症長期入院因子の検討

武田 直也 山梨大学

2021.03.23

概要

目的
司法精神医学は、他害行為の既往を持つ精神障害者の診断と治療に特化した精神医学の重要な領域の 1 つである。他害行為の既往を持つ精神障害者に特化した制度である医療観察法の下で設立された医療観察法病棟では、平均入院期間は 18 ヶ月と想定されていたが入院が長期化している課題があり、退院の阻害要因を解明する研究が求められている。そこで、厚生労働省が長期入院に関連する精神的および身体的状態を表現するために策定した、精神症状、行動障害、生活障害、身体合併症の 4 つの大項目で構成される「重度かつ慢性」の暫定基準が、日本の医療観察法病棟における長期入院に関連しているかどうかを統計学的に明らかにする。

方法
医療観察法病棟の入院期間が 2014 年 1 月 10 日現在、1 年 6 か月を越える 210 人を登録し、厚生労働省によって定められた「重度かつ慢性」暫定基準による評点を実施した。評点から 1 年半、2 年半、 3 年半後の転帰を調査し、入院と暫定基準の各項目との関連を Cox 回帰分析で統計学的に検討した。さらに、入院と患者の年齢、性別、精神症状、行動障害、生活障害、および身体合併症、調査日までの入院年数との関連を調べるために、上記 7 項目を組み込んだ総合分析を Cox 回帰分析にて行った。医師による臨床判断との比較も行った。これらの分析は、毎年の結果に基づいて繰り返し実行された。閾値は、すべての分析について複数の補正なしで P<0.05 に設定された。現在の研究に対して、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会によって承認が与えられた(倫理委員会承認番号 A2014-004)

結果
暫定基準のうち、精神症状では陽性症状(概念の統合障害等 6 項目の合計スコア)、概念の統合障害、猜疑心、幻覚による行動、興奮、非協調性、不自然な思考内容、合計スコアが、行動障害では衝動性、 B 項(行動障害のうち、自傷他害に関連しない失禁等 18 項目)、ストレス脆弱性が、生活障害では地域生活障害(食事等 6 項目の合計スコア)、生活リズム、服薬管理、対人関係、社会的適応を妨げる行為(電話の利用等 3 項目の合計スコア)、電話の利用、買い物、日常生活能力の程度、日常生活障害 4以上が、毎年入院と有意に関連していた。さらに、精神症状のうち、陽性症状、概念の統合障害、猜疑心、合計スコアが、行動障害ではストレス脆弱性が、生活障害では地域生活障害、社会的適応を妨げる行為、電話の利用、買い物、日常生活能力の程度、日常生活障害 4 以上が 3 年半後で p<0.01 であり、特に有意差が強かった。総合分析では、精神症状および生活障害が 1 年半、3 年半後の入院と有意に関連していたことを示し、生活障害のみ 2 年半後も入院と有意に関連していた。一方、年齢、男性、行動障害と身体合併症の基準、調査日までの入院年数は、調査中の入院と関連しなかった。登録後 3 年半の時点で精神症状のハザード比は 0.682(95%信頼区間 0.473 – 0.984)であり、生活障害のハザード比は 0.668(95%信頼区間 0.463 – 0.963)であった。3 年半後の「重度かつ慢性」暫定基準の感度は 0.600、特異度は 0.654 であり、医師の退院可能性の感度は 1.000、特異度は 0.205 であった。

考察
本研究は、日本で長期入院した医療観察法病棟患者の特徴を解明した最初の研究であった。
今回の調査結果において、厚生労働省による暫定基準のうち、精神症状における陽性症状、合計スコア、生活障害における地域生活障害、社会的適応を妨げる行為は毎年有意に入院と関連しており、なおかつ 3 年半後も強い有意差を示したことから、これらは特に重要性が高い合計項目と考えられた。

総合分析において、入院期間と関連するのは、暫定基準のうち、精神症状、及び生活障害の 2 つの大項目であった。残りの行動障害、身体合併症については入院期間と関連しなかったが、日常臨床経験からすると、評価時点の重症度やそれに伴って必要とされるケア密度と関連していることが予想された。したがって、「重度かつ慢性」暫定基準は、上記の 4 つの領域の評価項目から構成されるべきであろう。

医師による臨床的判断との比較では、「重度かつ慢性」暫定基準は感度は下回るものの特異度が高く、医師による臨床判断でスクリーニングしたうえで、入院期間が長期化する患者を特定する上で有用であると考えられた。

結論
厚生労働省によって定められた「重度かつ慢性」暫定基準の 4 つの大項目のうち、入院と関連するのは精神症状、生活障害の 2 つの大項目であった。残りの行動障害、身体合併症については入院とは関連しないものの、重症度と関連することが考えられた。また、「重度かつ慢性」暫定基準は、医師による臨床的判断よりも感度は下回るものの特異度が高く、医師による臨床判断でスクリーニングしたうえで、入院期間が長期化する患者を特定する上で有用であると考えられた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る