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大学・研究所にある論文を検索できる 「4NQO発癌モデルマウスを用いた舌癌発生過程における血管の改変」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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4NQO発癌モデルマウスを用いた舌癌発生過程における血管の改変

白銀, 陽一朗 大阪大学

2021.03.24

概要

【研究目的】
癌組織屮の血管は、癌細胞への酸素や栄養の供給を通じて、癌の進展や維持に関わっている。これまで、ロ腔癌では、血管新生と血管構造異常がみられることが報告されているが、上皮異形成(dysplasia)や上皮内 癌(CIS)からなる早期病変における血管の変化に関しては不明な点が多い。そこで本研究では、4NQ0(4- Nitroquinoline-N-oxide)化学発癌モデルを用いて、正常の舌粘膜から、早期病変であるdysplasiaやCISを経て扁平上皮癌(SCC)の形成に至る発癌過程における血管の改変を解析し、早期病変とSCCにおける血管変化の特徴と発癌過程との関係について検討した。

【方法】
1.4NQ0化学発癌モデル:生後6週のC57BL/6J雌マウスに4NQ0を4NQ0含有飲用水として16週間自由飲水させた後、4NQ0非含有飲用水に変更し、4NQ0非含有飲川水への変更日を0週として、3週目から15週目まで3週間毎に舌を採取し、各実験に使用した(以降、4NQ0 3週、6週、9週、12週、15週と記す)。以下の血管走行と構造解析、細胞増殖能解析、血管透過性解析、低酸素領域の検出、血管新生関連遺伝子の発現解析には、早期病変のみが出現する4NQ0 6週と、SCC病変が常に出現する4NQ015週マウスの舌を用いた。

2. 肉眼的解析、組織切片の作製と組織学的解析:4NQ0 3週、6週、9週、12週、15週に採取した舌より、PFA固定パラフィン包埋切片を作製した。4NQ0発癌モデル実験により得られた病変は、まずヒトSCCの診断基準に従い、正常粘膜(Normal)、3段階 dysplasia (mild、moderate、severe dysplasia)、CIS、およびSCCに分類し、次に、SCCの早期病変であるdysplasiaとCISを2段階分類により、Low-grade dysplasia (L- Grade)、High-grade dysplasia (Η-Grade)に分け、本実験では、Normal、L-Grade、Η-Grades SCCの4段階の分類を用いて以後の解析・評価を行った。なお、Controlは、4NQ015週と同じ週齢の4NQ0非投与マウスから採取した舌を指し、必要に応じてControlをNormalと表記する。

3. 免疫組織化学的染色(免疫染色)、蛍光免疫染色:免疫染色は、一次抗体として、ウサギ抗CD31抗体、ウサギ抗ERG抗体、ウサギ抗VEGF抗体を用いてペルオキシターゼ標識し、免疫反応部位を3,3’- diamino­ benzidine (DAB)により検出した。蛍光免疫染色には、一次抗体として、ウサギ抗CD31抗体、ウサギ抗ERG抗体、マウス抗α-SMA抗体を用いて蛍光標識し、免疫反応部位を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。

4. MVDの測定、血管幅径の測定:置Dおよび血管幅径の測定は、抗CD31抗体を用いて免疫染色した4NQ0 3週、6週、9週、12週、15週マウスの舌組織切片を用いて行った。血管の同定は、赤血球を容れるCD31陽性反応を示す管腔構造物とし、MVDの算出には、間質の血管数および間質面積(mm2)を用いた。またSCCにおいて各 SCCの表層領域および浸潤先端である深層領域における、MVDと血管幅径の解析を同様に行なった。

5. 血管走行および構造の解析:早期病変およびSCCにおける血管走行を正常粘膜の血管走行と比較するため、4NQ0 6週と4NQ015週およびControlマウスを安楽死させた後に、墨汁混合液を左心室より注入し、組織透明化処理を行った。透明化した舌組織は、全焦点画像撮影機能を使用して撮影して解析した。

6. 血管内皮細胞における細胞増殖能解析:血管内皮細胞の増殖活性の解析は、血管内皮細胞マーカーである ERG陽性細胞における核内へのEdUの取り込みを検出することにより行った。4NQ0 6週、15週およびControlマウスを用い、安楽死の2時間前に、EdUを腹腔内へ投与して舌を採取し、ERGに対する蛍光免疫染色を行った後に、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、EdUとERGに陽性の増殖血管内皮細胞を解析した。

7. 血管透過性の解析:血中アルブミンと結合する性質を有するEvans Blue色素(EBD)を用いて、正常粘膜、早期病変(L/H-Grade)およびSCCにおける血管透過性を、組織学的・定量的に解析した。

8. Pimonidazoleを用いた低酸素領域の検出:病変における低酸素領域を検出するため、4NQ0 6週と4NQ015週およびControlマウスに対して、安楽死の1時間前に低酸素領域の細胞に取り込まれるpimonidazoleを腹腔内投与後、その取込を免疫染色にて検出した。

9. 血管新生関連遺伝子の発現解析:4NQ0 6週と4NQ015週およびControlマウスよりLaser microdissection法にて、Controlマウスより舌被覆上皮および粘膜固有層を、4NQ0 6週マウスより早期病変および粘膜固有層を、4NQ015週マウスより筋肉組織を避けてSCC病変をI:皮成分と周囲間質を含めて採取し、血管新生関連 遺伝の網羅的解析を行った。

10. 統計処理:いずれの検定もKruskal-Wallis検定を用いて統計学的有意差が確認された後、Dunn’ s multiple comparisons testにて多重比較を行った。p く 0.05を有意とした。

【結果】
1.4NQ0化学発癌モデル:4NQ0化学発癌モデルマウスから採取した舌を肉眼的に観察したところ、4NQ0 6週より舌粘膜に白色病変が出現し、4NQ0 9週と12週に白色粗造粘膜が認められ、4NQ015週には結節状腫瘤が見られた。4NQ0投与後の時間経過に伴って、L-Grade、H-Grade、SCCが順次発生することが確認された。

2. MVDの解析:各病変におけるMVDを算出した結果、NormalからL/H-Gradeを経てSCCへと進展するに伴ってMVDの増加が認められ、各病変における血管幅径を計測したところ、NormalからL/H-Gradeを経てSCCへと進行するに伴って血管幅径のばらっきが大きくなることが示された。またsee内において腫瘍の深層領域と比較して表層領域で血管幅径が増大していることが明らかとなった。

3. 血管走行および血管構造の解析:血管走行を墨により可視化したところ、正常舌粘膜の間質乳頭部にループ状の毛細血管(intrapapillary capillary loops: IPCL)が見られ、L-Grade領域では、幅径が太いIPCLが高 密度でみられ、H-Grade領域においては、各IPCLの湾曲部付近では、蛇行や拡張が観察された。SCCにおいては、大小様々な幅径の血管が不規則に分岐・吻合したり、湾曲する像が認められた。血管構造を免疫組織学的に解析したところ、L-Grade/H-Gradeの病変内の血管には、α-SMA陽性の血管周皮細胞が欠落する像が見られ、SCC病変内には、管腔構造を示さないCD31陽性細胞の分布が多数認められた。

4. 血管内皮細胞増殖についての検討:EdU投与後2時間で採取した舌組織にてERG陽性細胞とEdU陽性細胞を同定した結果、ControlおよびL/H-Gradeの領域では、血管を含めた間質成分にEdU取り込み細胞は認められなかった。一方、4NQ015週のSCC領域では、間質にEdU取り込み細胞が見られ、それらはERG陽性の血管内皮細胞であった。

5. 血管透過性異常についての検討:血管外に漏出したEBDを定量的に解析したところ、病変の進展に伴い血管外に認められるEBD量が増加していた。血管外に漏出したEBDを形態学的に解析したところ、ControlマウスのNormal粘膜には、EBDの蛍光は観察されないのに対して、4NQ0 6週のL/H-Grade領域の間質にわずかなEBDの蛍光が認められ、4NQ015週のSCC領域の間質では、より多くのEBDの蛍光発色部が確認された。

6. 低酸素状態とVEGF発現:Controlマウスでは、舌粘膜にはpimonidazoleの取込は検出されず、VEGF発現も検出されなかった。L-Gradeにおいてはpimonidazoleの取込およびVEGF発現が認められた。SCC領域においては、上皮と間質細胞にVEGF発現が認められる一方、pimonidazoleの取込は、SCCの表層領域で見られるものの、SCCの浸潤胞巣ではpimonidazoleの取込領域は認められなかった。

7. 血管新生関連遺伝子の変化:Hifraの発現は、NormalからL/H-Grade. SCCと徐々に上昇する傾向が見られた。Vegfaの発現は、NormalからL/H-Grade、SCCと徐々に上昇した。

【結論】
本研究では、ヒトの舌扁平上皮癌の早期病変から扁平I:皮癌に至る過程で観察される各病変における血管の改変過程を検討するため、4NQ0化学発癌モデルマウスを用いて、正常の舌粘膜から早期病変(L-Grade、H- Grade)を経てSCCへと進展する各段階の病変における血管の構造および機能的解析を行なった。その結果、 正常粘膜からL-Gradeへと進展した段階から、既に病変の上皮細胞は低酸素状態に陥り、血管誘導因の発現 上昇とともに、MVDの増加、血管走行と血管構造の異常、血管透過性亢進などの異常が起こっていることが明らかになった。これらの異常は形態学的観点からヒトの上皮異形成における血管異常に近似していることから、血管に着目した新たな診断検査法の開発や血管を標的とする治療法の開発に、本モデルを利用できると考えられる。

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