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大学・研究所にある論文を検索できる 「Morphology, localization, and postnatal development of dural macrophages」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Morphology, localization, and postnatal development of dural macrophages

佐藤, 威仁 名古屋大学

2021.05.26

概要

【目的】
脳を包む3つの髄膜のうち、硬膜は最も頭蓋骨側に存在する組織であり、脳実質を物理的に保護する役割をもつ他、近年新たにリンパ管の存在が明らかとなったことで、脳神経系との免疫学的な関連性が指摘されている。硬膜組織には神経細胞や肥満細胞のほか、血管周囲にマクロファージが存在していることがすでに報告されている。しかし、この硬膜内マクロファージの形態と局在は明らかではなく、現在までに詳細な報告はされていない。また、その成長に伴う変化の報告に関してもこれまでに存在していない。そこで本研究ではマウスの硬膜内マクロファージの形態学的特徴について、組織学的に電子顕微鏡や免疫染色を用いて検討した。また、成獣マウスのマクロファージに加え、生後0日からのマクロファージの生後発達過程、特に形態的な特徴についても同様に比較検討し解析した。

【方法】
生後0、7、14、28、56(成獣)日齢のC57BL/6雄マウスを用いた。マウスをソムノペンチル腹腔内投与にて深麻酔後、Zamboni液にて心腔内に注射針を穿刺し灌流固定を行った。頭部離断後、脳実質を摘出したあと頭蓋骨から硬膜組織を攝子で鋭的に剥離し、後固定を行った上でスライドガラスへ薄く進展させて張り付けることでWholemount標本を作製した。その後、マクロファージマーカーCD206抗体に加え、血管内皮細胞マーカーCD31抗体、周皮細胞マーカーNG2抗体、線維芽細胞マーカーPDI抗体、肥満細胞マーカーc-Kit抗体を用いて多重免疫染色を行い、硬膜内マクロファージと血管周囲に存在する細胞の位置関係を共焦点レーザー顕微鏡(FV10i)を用いて観察し分析した。また、肥満細胞に関しては、トルイジンブルー染色を行い光学顕微鏡で観察を行った。その後共焦点レーザー顕微鏡で撮影した画像を、画像解析ソフトIMARIS®を用いて三次元立体構築後、硬膜内マクロファージの形態を数値化し、生後発達における変化を解析した。各群の値は平均値±平均誤差で示し、統計処理はノンパラメトリック検定であるKruskal-Wallis testを、それぞれの群間の多重比較はBonferroni法を用いて行った。検定に際しては、統計ソフトであるR(version3.3.1)およびEZR(Saitama Medical Center, Jichi Medical University)を使用して行った。値はP<0.05を有意差ありとした。免疫組織化学実験に加え、透過型電子顕微鏡を用い、硬膜内マクロファージと血管周囲構造(周皮細胞、線維芽細胞、神経線維)との位置関係を詳細に観察した。

【結果】
過去の知見と同様に、成獣の硬膜内には血管に沿うように紡錘形のマクロファージが分布していた。そして電子顕微鏡の検討から、硬膜内マクロファージは直接血管とは接触しておらず、その間には周皮細胞や線維芽細胞が介在することが明らかとなった。また、硬膜内マクロファージに近接する線維芽細胞の突起が、硬膜内を走行する神経線維を取り囲むことも判明した。肥満細胞に関しては、トルイジンブルー染色では血管に近接している所見が見られたが、電子顕微鏡での観察では血管やマクロファージとの位置関係に明らかな規則性はみられなかった。

生後発達過程の硬膜内マクロファージの形態と局在の解析から、マクロファージの形態は幼若期では球形に近いが、成長に従い有意に長径が長くなり生後28日齢を境として桿状になり血管に沿うようになることが示された。(P0 versus P28, P0 versus P56p<0.01)。硬膜血管の形状も生直後の個体と成獣では大きく異なっていた。成長に伴い血管の分岐数は減り、複雑な構造から単純な構造へと有意に変化していた(P0 versus P28, P0 versus P56p<0.01)。

【考察】
本研究において、蛍光免疫染色において脳硬膜内のマクロファージは生後発達に伴い形状変化することを証明した。また同様に、脳硬膜内の血管構造においても成長に伴い明らかな形状変化、すなわち発達に伴い表面積の低下と血管網の単純化をきたす事も判明した。

これらの結果から、生後発達において、硬膜内マクロファージの形態や局在が変化する時期と、血管の形状が変化する時期は一致していたことから、硬膜内マクロファージと血管は相互的に作用している可能性、すなわち硬膜血管網形成成熟に関わる可能性が示唆された。また、成獣マウスでは、硬膜内マクロファージは血管に沿って局在するが、電子顕微鏡での検討では血管とは直接接しておらず、その間には周皮細胞や線維芽細胞が介在していたことから、硬膜内マクロファージは周皮細胞や線維芽細胞を介して血流や血管透過性を制御する機能を持っている可能性が考えられた。また、その位置関係から、血管からの異物の侵入に対する防御ラインとしての機能を有する可能性についても同様に示唆された。

【結語】
硬膜内マクロファージの生後形態変化に加え、局在や周囲の細胞との位置関係を明らかにした。脳硬膜に存在するマクロファージと硬膜血管との相互作用、またその周囲に存在する種々の細胞における生理学的な関係については今後のさらなる検討が待たれるが、今回得られた知見は、硬膜内マクロファージの機能を明らかにする上で重要な基礎データになると考えられる。

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