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大学・研究所にある論文を検索できる 「変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術が足部に与える影響 - 放射線学的および生体力学的検討 -」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術が足部に与える影響 - 放射線学的および生体力学的検討 -

菊池, 直哉 筑波大学 DOI:10.15068/0002008032

2023.09.04

概要









論 文 題 目:
変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術が
足部に与える影響
−放射線学的および生体力学的検討−

指導教員:人間総合科学研究科

疾患制御医学専攻

山崎正志 教授



属:筑波大学大学院人間総合科学研究科
疾患制御医学専攻



名:菊池 直哉



的:人工膝関節全置換術(TKA)は末期変形性膝関節症(膝 OA)に対する

治療として確立しており、25 年以上の安定した治療成績が報告されている。一方、近
年になり内反型膝 OA 患者に内反型変形性足関節症が併発していることや、TKA 後に
足部痛が改善/増悪する例があることが報告されるようになり、整形外科医は現在まで
TKA を行う際に足部状態を考慮してこなかったことが指摘されている。膝の変形や手
術による下肢冠状面アライメント変化は足部アライメントも変化させ、ひいては痛みに
関連すると考えられている。しかし、そのメカニズムは未だ明らかにされておらず、そ
の解明のためには 2 つの課題がある。1 つ目は現在までの膝 OA 患者の病態評価・手術
計画・治療評価に用いられる下肢冠状面アライメント評価が足関節以遠を考慮していな
いことである。2つ目は TKA 手術前後の足関節に着目した関節の動的角度を表すキネ
マティクスや関節への力学的負荷を表すキネティクスを含めた生体力学的評価が行わ
れていないことである。
したがって本研究の目的は①内反型膝 OA 患者の HC line による下肢アライメント評
価と膝・足関節キネティクスの関連を検討すること、②内反型膝 OA 患者に併発した内
反型変形性足関節症の放射線学的、生体力学的特徴を検討すること、③内反型膝 OA 患
者に対する TKA が歩行時足部に与える影響を生体力学的に検討すること、④TKA 後の
足関節キネティクスと関連するアライメントパラメータを検討するとした。
上記目的のため、以下の 2 つの研究を行った。①、②を検証するために「研究1:内
反型膝 OA 患者における新たな下肢機能軸評価と下肢キネティクスの関連性の検討 ―
従来の下肢機能軸との比較― 」を行った。また、③、④を検証するために、
「研究2:
内反型膝 OA 患者に対する TKA が足部に与える生体力学的影響と放射線学的パラメー
タと足関節キネティクスの関連性の検討」を行った。
対象と方法:
研究 1
当院で膝関節手術加療を行われた内側型膝 OA 患者のうち、手術前に X 線評価と歩行
解析が行われた 21 名を対象とした。歩行解析は足部機能評価に特化したマーカー
(Oxfrod foot model)を用いた光学式三次元動作解析と床反力計を同期させて行われた。
X 線評価は、従来の股関節中心と足関節中心を結ぶ従来の機能軸(Hip to ankle line: 以
下 HA line)が脛骨近位関節面を通過する位置(%HA)および、足関節以遠を考慮した股
関節中心と踵骨接地点を結ぶ機能軸(Hip to calcaneus line: 以下 HC line)が脛骨近位
関節面を通過する位置(%HC)を計測した。さらに、HC line が脛骨遠位関節面を通過す
る位置(Mechanical ankle joint axis point: MAJAP)を計測した。外部膝内反モーメント、
外部足内反モーメントおよび外部足外反モーメントを歩行時間で積分した knee
adduction angular impulse(KAAI)、ankle inversion angular impulse(AIAI)および ankle

eversion angular impulse(AEAI)を算出した。膝関節の評価に%HA、%HC と KAAI の
相関を、足関節の評価に MAJAP と AIAI、AEAI の相関を評価した。
さらに変形性足関節症併発の有無により 2 群に分け、各群の X 線パラメータとキネテ
ィクスパラメータを比較した。
研究 2
当院で TKA が行われた内側型膝 OA 患者のうち、手術前と手術後 1 年に X 線評価と歩
行解析が行われた 16 名を対象とした。また、対照として、健常ボランティア 16 名を
対象とした。X 線評価は研究①に加え、下肢・足部・後足部の評価を追加した。また、
歩行解析は研究①のキネティクスに加え、キネマティクスデータも計測をした。
TKA 前後および健常者のキネマティクス/キネティクスデータの比較および TKA 後の
放射線学的パラメータとキネティクスパラメータの相関を検討した。


果:

研究 1
KAAI は 1.8 ± 0.7 Nm/BW.Ht*s 、 AIAI は 0.24 ± 0.2 Nm/BW.Ht*s で あ っ
た。%HA、%HC、MAJAP はそれぞれ 4.9±22.4、2.8±27.0、39.8±30.7 であった。
KAAI は%HA、%HC と有意に負の相関があった(r=-0.68、p=0.001、r=-0.81、p<0.001)。
AIAI は MAJAP と有意に負の相関があった(r=-0.55,p=0.009)。
変形性足関節症あり群と変形性足関節症なし群における X 線パラメータとキネティク
スパラメータは、それぞれ変形性足関節症あり群は変形性足関節症なし群に比べ
MAJAP が有意に小さく、KAAI と AIAI が有意に大きかった。

研究 2
キネマティクスについて、TKA 後は TKA 前より立脚期を通じて、膝関節が外反し、脛
骨の外傾が是正され、後足部が脛骨に対して外がえししていた。TKA 後は健常者より
立脚期に膝関節が外反し、立脚初期に後足部が脛骨に対して外がえししていた。
キネティクスについて、TKA 手術前後および健常者の下肢キネティクスはそれぞれ、
KAAI が 1.7 ± 0.81, 0.99 ± 0.40, 1.15 ± 0.39 (%BW.h.s)で、AIAI が 0.20 ± 0.11,

0.10 ± 0.11, 0.14 ± 0.10 (%BW.h.s)で、
AEAI が 0.12 ± 0.15, 0.27 ± 0.16, 0.13 ±
0.09 (%BW.h.s)であった。KAAI, AIAI, AEAI とも手術前後で有意に異なった。TKA 前
と健常者では KAAI に有意差があった。
TKA 後と健常者では AEAI に有意差があった。
術後の放射線学的パラメータとキネティクスパラメータの相関については,KAAI と相
関する放射線学的パラメータはなく,足関節冠状面キネティクスについては KJLO が
AIAI(r = -0.68, p = 0.007 )と AEAI(r = 0.56, p = 0.039 )と相関した。


察:

研究 1
KAAI、AIAI は立脚期全体を通じた膝関節・足関節内側荷重負荷を意味する。HC line
によるアライメント評価は HA line を用いるより膝関節キネティクスと相関が強く、足
関節キネティクスと相関を認めた。足関節以遠の変化を捉えた結果、より正確にキネテ
ィクスを反映したと考えられた。さらに、内反型変形性足関節症の併発する群では
MAJAP が小さく、AIAI が大きかったことから、HC line は内反型膝 OA 患者の膝関節
および足関節の評価に生体力学的的観点から有用である可能性がある。
研究 2
TKA により冠状面生体力学的パラメータは変化し、健常者と異なる点があった。また、
足部キネティクスと相関があったパラメータは KJLO であった。KJLO は一般に、健常
者であれば 0°であると報告されている。つまり、脛骨近位関節面が床面と平行になる。
本研究シリーズで TKA は大腿骨・脛骨とも機能軸に垂直に骨切りを行なう mechanical
aligned TKA を行ったが、この方法では KJLO が正になることが報告されており、非生
理的なアライメントと指摘する声もある。
本研究では TKA 後のキネマティクスが健常者より膝内反角が小さく、後足部が脛骨に
対し外がえししていること、TKA 後の AEAI は健常者より大きく、KJLO に相関があっ
たことから、mechanically aligned TKA のアライメントが健常者のアライメントと異な
る点を足部外がえしで代償していることが考えられた。


論:

内反型変形性膝関節症患者において、足関節以遠を考慮した新たな下肢機能軸は、冠状
面膝関節・足関節キネティクスと相関があった。
人工膝関節全置換術により、冠状面足関節キネティクスは内がえし負荷が減少し、外が
えし負荷が増加した。また、人工膝関節全置換術後の冠状面足関節キネティクスは脛骨
近位関節面と床面のなす角と相関があった。

本研究は、人工膝関節全置換術後の足関節の症状を理解する上で有用な基礎データとな
る。今後、放射瀬線学的パラメータ、生体力学的パラメータ、臨床データとの関連を明
らかにするさらなる研究が必要である。 ...

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