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大学・研究所にある論文を検索できる 「移植細胞への血栓由来物の混入が骨髄単核球を使った脳梗塞再生医療の治療効果を阻害する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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移植細胞への血栓由来物の混入が骨髄単核球を使った脳梗塞再生医療の治療効果を阻害する

沖中, 由佳 神戸大学

2022.02.16

概要

【背景】
実験動物を使った非臨床試験において、脳梗塞に対する骨髄単核球細胞の静脈内投与の神経機能再生効果は国内外の多くの施設より示されてきた。骨髄単核球細胞は、造血幹細胞とともにリンパ系、骨髄系、赤血球系などの未分化・分化細胞など様々な細胞集団を含んでおり、単球系細胞による神経保護や、CD34 陽性造血幹細胞による神経再生の促進など、様々な作用機序が、骨髄単核球細胞による脳梗塞治療効果に関連していることが報告されてきた。しかし、脳梗塞患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験において、一定以上の治療効果は報告されているものの、治療に全く反応しない“No-Responder”の存在が知られていた。また、心筋梗塞に対する骨髄単核球細胞の冠動脈投与の臨床試験においても、手作業で分離した細胞は二重盲検試験で有効性が示されたが、自動細胞分離装置(SEPAX2)を用いて分離した細胞は治療効果がないことも報告されてきた。骨髄単核球細胞を使った臨床試験では、No-Responder が一定以上の頻度で発生し、かつその理由も不明であることにより、その普及が妨げられてきた。
そこで本研究では、骨髄単核球細胞を使った脳梗塞再生医療の No-Responder 発生原因の可能性として、移植細胞に混入する血栓由来物に着目した。ヒト骨髄吸引液は、粘性が高く、脂質、結合組織、巨核球の存在により、血栓が形成されやすい。また手作業での分離工程では血栓由来物の除去は可能であるが、自動細胞分離装置(SEPAX2)では除去できない。血栓由来物が投与されると、脳梗塞周辺領域のマイクログリアの過剰な活性化を引き起こし、脳梗塞後の機能回復に悪影響を及ぼす炎症反応を惹起する可能性があると考え、移植細胞に混入する血栓由来物の治療効果に与える影響について検討を行った。

【方法】
脳梗塞モデルとして、脳梗塞障害領域再現性および長期生存率に優れている中大脳動脈永久閉塞モデルを採用し、ヒト細胞の移植実験には CB-17 重症複合型免疫不全(Severe combinedimmunodeficiency: SCID)マウスを、マウス細胞の移植実験にはその Wild type マウスを用い、脳梗塞作成 48 時間後に尾静脈より細胞投与を行った。ヒト細胞を使った細胞移植実験では、①手作業での分離工程で血栓由来物を除去した骨髄単核球細胞、②自動細胞分離装置(SEPAX2)で分離した骨髄単核球細胞、③コントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、を用い、(a)脳梗塞領域での血管再生・維持効果[細胞移植 24 時間後]、(b)脳梗塞周辺領域での炎症反応に対する作用[細胞移植 24 時間後]、(c)脳組織の再生促進の指標でもある脳梗塞後の脳委縮の抑制効果[細胞移植 30 日後]、の検証を行った。また、マウス細胞を使った細胞移植実験では、①血栓由来物を含まない骨髄単核球細胞、②血栓由来の骨髄単核球細胞、を用い、脳梗塞周囲領域でのマイクログリアによる移植細胞の貪食およびその活性化[細胞移植 20分後]を検証した。

【結果】
移植に用いたヒト細胞の解析では、手作業で分離した骨髄単核球細胞に比べ、自動細胞分離装置で分離した細胞には、血栓由来と考えられる非常に多くの赤血球や血小板などの混入が観察された。細胞移植 24 時間後の脳梗塞領域での血管再生・維持効果の検証では、自動細胞分離装置で分離した細胞にもその治療効果が観察されたが、脳梗塞周辺領域における活性化マイクログリアの検証では、自動細胞分離装置で分離した細胞投与により、炎症反応の増悪が観察された。さらに細胞移植 30 日後において、手作業で分離した骨髄単核球細胞群では、脳委縮の抑制効果が観察されたが、自動細胞分離装置で分離した細胞投与では、その治療効果は観察されなかった。すなわち、自動細胞分離装置で分離した細胞は、脳梗塞領域の血管再生・維持効果は有するものの、炎症反応の増悪により治療効果がキャンセルされることが示された。
また、血栓由来のマウス骨髄単核球細胞の移植の実験では、投与細胞がミクログリアに貪食されること、および貪食したミクログリアの活性化が観察された。

【考察】
本研究の結果より、移植細胞への血栓由来物の混入が、マイクログリアの活性化を介して骨髄単核球を使った脳梗塞再生医療の治療効果を阻害することが、明らかになった。骨髄単核球を使った再生医療では No-Responder の発生や自動細胞分離装置で分離した細胞の効果がないこと等が問題となり、普及が妨げられてきたが、本研究でその原因の一つが解明されたことにより、今後はその発展が期待される。脳梗塞後の再生や炎症反応において、ミクログリアは重要な役割を担っているが、その起源は、活性化したマクロファージの侵入および脳ミクログリアの活性化などが示唆されている。本研究では、血栓由来細胞投与 20 分後には脳梗塞周囲に多くの活性化ミクログリアが観察されており、その起源は局所的なミクログリアの活性化の促進と考えた。また本研究の成果は、急性期脳梗塞患者に対する機械的血栓除去術が、組織プラスミノーゲン活性化因子による血栓溶解療法と比較して、血栓の体外除去により脳での炎症増悪の抑制効果が期待できることを示唆しており、そのような視点からの今後の臨床研究が期待される。

【結論】
本研究により、骨髄単核球細胞を使った脳梗塞治療にとって血栓由来物の混入防止が重要であり、今後の臨床試験においては、その混入防止が重要な課題の一つであることが判明した。

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