レドックスナノ粒子とヒト歯髄由来神経系細胞による虚血性脳卒中に対する再生医療の開発
概要
目的:
本研究はレドックスナノ粒子が移植細胞の生存・生着にとって厳しい非寛容な移植環境を改善することができ、レドックスナノ粒子と細胞治療を組み合わせることで移植細胞の生存・生着率を向上させる事ができると仮説を立て、検証することを目的とした。
対象と方法:
歯髄幹細胞から分化誘導した神経系細胞を使用した。
In Vitroで低酸素培養+再灌流を行うことで、活性酸素を発生させ脳梗塞周囲領域の仮想モデルとして使用した。細胞生存アッセイ、アポトーシス評価、スーパーオキシドと炎症性サイトカイン発生評価を行うことでレドックスナノ粒子の効果を検討した。また、電子スピン共鳴法と蛍光免疫染色を使用して、レドックスナノ粒子の培養細胞での動態評価を行った。
In Vivoで遠位中大脳動脈閉塞による脳梗塞モデルマウスの脳内に直接レドックスナノ粒子と神経系細胞を移植することで、移植細胞の生存率の評価と細胞の分化の評価を行った。
結果:
In Vitroでレドックスナノ粒子を使用することで細胞生存率の向上、アポトーシスの抑制、スーパーオキシドと炎症性サイトカインの発生の抑制が見られた。動態評価ではレドックスナノ粒子は細胞質内に見られ、酸化還元反応に寄与していた。
In Vivoではレドックスナノ粒子はスーパーオキシドを消去することで移植環境を改善した。またレドックスナノ粒子を併用することで移植42日後の移植細胞の生存率を向上させた。生存した神経系細胞には未熟・成熟神経細胞が含まれていた。
考察:
レドックスナノ粒子は活性酸素種を除去することで脳梗塞周囲巣の厳しい非寛容な移植環境を改善することができた。またレドックスナノ粒子は移植細胞の生存率を向上させた。我々が開発したレドックスナノ粒子は移植前の事前準備が必要なく、単に混合するのみで使用することができる簡便さがあり、虚血性脳卒中の細胞治療に有用である可能性があった。
結論:
レドックスナノ粒子は脳梗塞周囲巣の活性酸素種を除去することができ、移植環境を改善することができた。移植環境を改善したことで、移植神経細胞の生存率を向上させることができ、今後神経再生に役に立つ可能性がある。