リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「気相液相界面培養法を用いたヒト腸管上皮in vitroモデルの確立」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

気相液相界面培養法を用いたヒト腸管上皮in vitroモデルの確立

田中, 恵理 東京大学 DOI:10.15083/0002006987

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 田中 恵理
本研究は、腸管上皮の極性を利用しやすいヒト腸管上皮 in vitro モデルの作成を目的と
し、大腸幹細胞およびヒト多能性幹細胞より気相液相界面培養法を用いたヒト腸管上皮 in
vitro モデルの構築について検討したものであり、下記の結果を得ている。
1.

大腸幹細胞をもちいて気相液相界面(Air-liquid interface: ALI)培養法による分化誘導を行
い、組織を評価したところ、丈の高い単層円柱上皮が見られ、免疫蛍光染色にて腸管上
皮のマーカーである CDH17 および杯細胞のマーカーである MUC2 の発現を認めた。こ
の結果より、既報と同様に ALI 培養法により大腸幹細胞の分化が誘導されることが確
認できた。

2.

続いて、汎用性の高い iPS 細胞からも同様のモデルの作成を試みることとした。iPS 細
胞から内胚葉へと分化を誘導する際、既報によって方法に違いが見られたが、3 日間
Activin A を添加するだけではなく、day1 に CHIR99021(GSK-3β 阻害薬)を添加すること
によって、より内胚葉のマーカーである CXCR4、SOX17、FOXA2 の発現が上昇し、効
率的に内胚葉へ誘導できることを確認した。内胚葉から中後腸への分化は CHIR99021
と FGF4 により誘導し、腸管上皮のマーカーである CDX2 の発現を確認した。

3.

ALI 培養を行い day55 の時点で組織を評価すると、腸管上皮と間質を併せ持った組織
構築が見られた。小腸のマーカーである CPS1 陽性、大腸のマーカーである SATB2 陰
性となり、主に小腸へ分化していると考えられた。

4.

間質の部分の細胞はすべて Vimentin 陽性であり主に線維芽細胞で構成され、一部には
Vimentin および α-SMA が陽性となる筋線維芽細胞が腸管上皮細胞を裏打ちするように
存在していた。

5.

本モデルの腸管上皮を構成する細胞を免疫染色で評価したところ、吸収上皮に発現す
る Villin、杯細胞に発現する MUC2、パネート細胞に発現する Lysozyme、腸管内分泌
細胞に発現する Chromogranin A が陽性となり、小腸の多様性に富んだ腸管上皮細胞へ
と分化していることが確認できた。また、iPS 細胞からこれらの腸管上皮細胞に至る
までの各分化段階における遺伝子発現の変化を定量 PCR で評価したところ、多能性幹
細胞および前腸のマーカーである SOX2 は中後腸へ分化して以降、iPS 細胞と比較し有
意に発現が低下し、CDX2 は中後腸以降に発現が上昇した。腸管幹細胞マーカーであ
る LGR5、BMI1 は中後腸の時点で最も発現が高値となった。そのほか各分化細胞のマ
ーカーである Villin、MUC2、CHGA、LYZ は、day25 での発現は少ないが、ALI 培養に

て分化誘導した後の day55 で発現が高値となった。
6.

本モデルの腸管上皮の極性を評価する目的として一般的なエクソソームの表面マーカ
ーである CD63 および CD9 で免疫組織化学染色を行った。その結果、CD63 は主に管
腔側、CD9 は基底膜側で染色がみられ、発現分布より本モデルの腸管上皮には明確な
極性があることが確認できた。これはヒトの生体組織における発現についての既報と
同様の結果であった。

7.

今回おもに使用したヒト正常 iPS 細胞株以外の細胞株でも同様に腸管上皮モデルが作
成できるか、その他のヒト正常 iPS 細胞株を用いて細胞分化、ALI 培養を行ったとこ
ろ、同様に腸管上皮組織を作成することができた。さらに、クローン病小腸大腸型お
よび小腸型患者由来の疾患特異的 iPS 細胞株を用いて同様の培養法を行ったところ、
こちらも腸管上皮組織の構築がみられ、その他の iPS 細胞株にも汎用できる培養法で
あることが確認できた。
以上、本論文は気相液相界面培養法を用いて極性が明確な腸管上皮の in vitro モデルを構

築し、さらに汎用性の高いヒト iPS 細胞から分化誘導を行うことで新規のモデルを作成する
ことに成功した。さらに、生体に近い多様な腸管上皮細胞と間質細胞により構成されている
ことが示された。このモデルは既存の腸管上皮オルガノイドで弱点となっている管腔側へ
のアプローチを容易にし、iPS 細胞の特性を生かした幅広い研究への応用を可能にする有用
なツールとなりうると考える。
よって本論文は博士(医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る