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大学・研究所にある論文を検索できる 「マカクサル由来腸管オルガノイド培養系の樹立と機能的なマカク腸管tuft細胞の作出」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マカクサル由来腸管オルガノイド培養系の樹立と機能的なマカク腸管tuft細胞の作出

稲葉, 明彦 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24827

2023.07.24

概要

マカクサル由来腸管オルガノイド培養系の樹立と
機能的なマカク腸管 tuft 細胞の作出
稲葉 明彦
京都大学大学院 理学研究科 生物科学専攻

背景
口腔を介して間接的に外部環境と接している腸内には、生体恒常性を維持するために外
界の異物を認識する機能が発達している。腸管上皮にわずかに存在する tuft 細胞は、腸内寄
生虫を認識して自然免疫系を活性化する働きを担っている。外部環境や食性に応じた多様
性を呈する腸内環境において、腸管 tuft 細胞は生物固有の環境に最適化された異物認識機能
を発達させていることが予想される。特に、ヒトやヒトの近縁種における同細胞の知見は、
霊長類間における腸管機能の違いや進化様式を理解する重要な手がかりになると考えられ
る。しかしながら、現状ヒトを含む霊長類では、個体を用いて腸内の希少細胞種を解析する
ことは難しく、また、ヒト由来の in vitro 解析系は汎用性や取扱いに課題が残っている。そ
こで本研究では、非ヒト霊長類であるマカクサルに着目し、
「非ヒト霊長類における腸管上
皮細胞の新規 in vitro 解析系の樹立」と「同培養系を用いたマカク腸管 tuft 細胞の分子発現
プロファイルの解析」の2点を目標に研究を行った。

方法
アカゲザル(Macaca mullata)及びニホンザル(Macaca fuscata)の腸管組織から単離した
幹細胞画分を Wnt3a, R-Spondin, Noggin などを含む培地条件で培養することによりオルガノ
イドの樹立を試みた。続いて、作出したマカク腸管オルガノイドの培養条件を、Wnt3a など
の増殖因子を除いた分化培養条件、および生体内で tuft 細胞の分化に関わる Th2 サイトカ
イン(IL-4 / IL-13)を用いた培地条件に変更して、その影響をトランスクリプトーム解析、
免疫組織化学染色及び高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC/MS)により解析した。

結果
マカクサルから採取した十二指腸から結腸までの腸管各部位の幹細胞画分を培養した結
果、増殖性を示す細胞体(マカク腸管オルガノイド)を作出することに成功した。さらに分
化培地条件への切替えによって、これらの細胞において分化細胞関連遺伝子が発現するこ
とが分かった。IL-4 および IL-13 を作用させたオルガノイドにおけるトランスクリプトーム
解析の結果、コントロール群と比較して tuft 細胞関連遺伝子や免疫応答関連遺伝子の発現量

が顕著に増加することが確認された。その一方で、マウスの tuft 細胞において報告されてい
る IL-25 を含む一部の遺伝子は検出されなかった。また、IL-4 および IL-13 の添加により、
acetylcholine(ACh)の合成酵素である Choline acetyltransferase(ChAT)の遺伝子発現量が上
昇しており、腸管組織とオルガノイドの免疫染色の結果から、この ChAT が tuft 細胞特異的
に発現することを確認した。さらに、HPLC/MS 解析により、IL-4 を添加したオルガノイド
では遺伝子発現と一致して、ACh 量が顕著に増加していることが分かった。

考察
本研究では、先行研究で報告されているヒト腸管オルガノイドの培養条件を参照して、マ
カクサルの腸管上皮幹細胞を培養した結果、マカク腸管オルガノイドの樹立に成功した。培
養過程において、マカクサル由来の腸管オルガノイドがヒト由来のものと同等の栄養要求
性を示したことから、マカクサルの生体内に存在する腸管上皮幹細胞の性質がマウスより
もヒトに近いものである可能性が示唆された。さらに分化培養の結果、この培養系が自己増
殖能と成熟細胞への多分化能を有することが確認した。これらのことから、マカク腸管オル
ガノイド培養系は、マカクサルの腸管上皮細胞の機能解析において有用な in vitro 解析系に
なることが示唆された。
Th2 サイトカインを添加したマカク腸管オルガノイドにおいて tuft 細胞関連遺伝子や免
疫応答関連遺伝子の発現量が顕著に増加していた結果は、同培養系において IL-4 および IL13 シグナルが tuft 細胞および杯細胞の分化誘導を促進することを示しており、これはマウ
ス生体の腸管上皮細胞における知見と一致していた。さらに、IL-4 および IL-13 を添加した
オルガノイドでは幹細胞関連遺伝子の LGR5 遺伝子が減少するとともに分泌系列の細胞関
連遺伝子群の発現量が増加していたことから、Th2 サイトカインが腸管上皮幹細胞あるいは
前駆細胞に作用して、それらの細胞の分化極性を著しく変動させたことが推察された。した
がって、マカクサルの生体内でも Th2 サイトカインが腸管上皮細胞の分化を制御している
可能性が示唆された。また、ACh 解析の結果は、マカク腸管オルガノイド中に ACh 合成能
を有する tuft 細胞が存在することを示している。一方で、Th2 サイトカインを添加したオル
ガノイドにおいて発現変動した tuft 細胞関連遺伝子において、マウス tuft 細胞における機能
遺伝子の一部が含まれなかったことは、ヒトにおける知見と一致しており、近縁種における
同細胞の機能解析の重要性を示唆した。
総じて、本研究で樹立したマカク腸管オルガノイドは、ヒトの近縁種であるマカクサルに
おいて腸管上皮細胞機能を解析する新たな手段として、ヒトを含む霊長類における腸管 tuft
細胞機能の多様性、さらには腸管機能の多様性の理解に貢献することができる。 ...

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