公共喫煙所の間仕切り変更前後における大学生の受動喫煙に関する実態調査
概要
わが国における喫煙に起因する年間死亡数は、能動喫煙によって約 13 万人、受動喫煙により約 1万 5 千人と推計されている 1)。近年、受動喫煙は肺がんや虚血性心疾患等、様々な疾患との因果関係が明らかとなり、受動喫煙による健康影響が問題とされている 2)。
健康増進法の一部を改正する法律(以降は改正健康増進法と略す)の施行前である、平成 29 年度の調査によると、わが国における受動喫煙を有する者の割合は、場所別では「飲食店」において 42.4%と最も高く、次いで「遊技場」37.3%、「路上」31.7%がいずれも 3 割を超えており、これらの場所では受動喫煙対策が充分ではないことが明らかにされている 3)。改正健康増進法の施行により、「第二種施設」に分類される「飲食店」「遊技場」については、原則屋内禁煙が義務化される一方、「路上」は「屋外」として今回の法規制対象外であることから、今後も非喫煙者がタバコ煙に曝露される場所となる可能性が高い。改正健康増進法には、「受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等に特に配慮」し、屋外であっても「望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」とされている。従って、未成年者が半数を占める大学の通学路に設置された屋外喫煙所においても、受動喫煙を生じさせることのないような配慮が必要である。屋外であっても、1 人の喫煙者の 4 メートル以内では、急性の健康被害が起きる濃度の直径 2.5µm 以下の微小粒子状物質(PM2.5)ならびに発がん物質に晒されることから 4)、タバコ煙の影響を回避するには、喫煙者から半径 7 メートル以上離れる必要があるとされている 5)。しかし、屋外喫煙所より発生する PM2.5 濃度を測定し、非喫煙者が曝露される受動喫煙を評価した報告は、国内外いずれにおいても限られている 6)。また、屋外喫煙所の間仕切りは、灌木を植えたプランターを配置する植栽式と比較して、ガラスパネルを用いた塀状式の方がタバコ煙の漏出抑制が高いと考えられるが、実際にタバコ煙の漏出を抑制しているかどうか、PM2.5 濃度を測定した報告は我々が知る限り見当たらない。
そこで今回、大学生の受動喫煙防止対策の推進に寄与することを目的に、通学路上にある屋外公共喫煙所の間仕切り変更前後における、大学生の受動喫煙状況に関する実態調査ならびに塀状式公共喫煙所付近の PM2.5 濃度について測定した。