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書き出し

日本人糖尿病患者における位相角の決定因子に関する検討

村前, 直和 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Determinants of Phase Angle in Japanese
Patients with Diabetes

村前, 直和
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8715号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485899
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Determinants of Phase Angle in Japanese Patients with Diabetes

日本人糖尿病患者における位相角の決定因子に関する検討

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
糖尿病・内分泌・総合内科学分野総合内科学部門
(指導教員:小川

渉 教授)

村前 直和

【背景と目的】
生体インピーダンス分析(BIA)法は、生体に微弱な交流電流を流してインピーダンスを測定
することにより、身体構成成分を推定する方法で、医療や栄養評価、スポーツなどさまざまな分
野に用いられている。BIA 法で実際に測定されるインピーダンスは電流を妨げる抵抗成分の総称
で、脂質成分など細胞内外の抵抗であるレジスタンス(R)と細胞膜に特有の抵抗であるリアク
タンス(Xc)に大きく分けられる。生体電気インピーダンス分析法で得られる位相角(Phase

angle、以下 PhA)は、Xc のアークタンジェントを R で割った値(アークタンジェント
(Xc/R×180/π)
)として算出される。PhA は細胞膜の健康状態を反映し、トランスサイレ
チンなどの栄養指標と正の相関があり、また癌患者や集中治療患者の予後予測因子としての
有用性が報告されている。
一方、糖尿病患者は健常者に比べて PhA が小さく、2 型糖尿病患者では PhA 値と罹病期
間の間に正の関係があることが報告されている。しかしながら日本人糖尿病患者において
PhA と HbA1c の関連やその意義について検討した報告はない。
そこで本検討では、糖尿病患者における PhA の決定要因および PhA と HbA1c との関係
を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
日本人糖尿病患者を対象に 2 施設共同(神戸大学医学部附属病院、糖尿病内科まつだクリ
ニック)で横断研究を実施した。体組成分析には InBodyⓇ(インボディジャパン、東京)を
用いた。対象者の年齢、性別、糖尿病の病型(1 型糖尿病、以下 T1DM、2 型糖尿病、以下
T2DM)
、HbA1c、血清アルブミン値、PhA、BMI、体組成パラメータ(体細胞量、体脂肪
率、体脂肪量、体幹脂肪量、骨格筋指数、骨格筋量、体幹筋量、骨ミネラル量、細胞内水
分、細胞外水分、細胞外水分比、基礎代謝量)を収集した。
【結果】
合計 655 人の患者が登録された(男性 400 人、女性 255 人、年齢 57.1±14.8 歳、BMI
25.6±5.2 kg/m2、HbA1c 8.1±1.9 %)
。まず、糖尿病の病型および性別で PhA の平均値に
差があるかを t 検定で検討した。糖尿病の病型による PhA の差はなかった(T1DM:5.3±
0.9、T2DM:5.3±0.8、p=0.90)
。一方で男性は女性より PhA が有意に高かった(男性:
5.5±0.8、女性:4.9±0.8、p<0.01)
。次に、PhA と年齢、BMI、HbA1c、血清アルブミン
値、体組成パラメータとの相関を Pearson の相関分析で検討した。PhA は血清アルブミン
値(r=0.44)、体細胞量(r=0.62)、骨格筋指数(r=0.62)
、体幹筋量(r=0.61)
、細胞内水分
(r=0.62)、細胞外水分(r=0.51)、骨ミネラル量(r=0.53)および基礎代謝量(r=0.59)に
対して正相関を有していた。また、PhA は年齢と負の相関を示し(r=-0.56)
、細胞外水分比
と最も強い負の相関を示した(r=-0.86)
。最後に、PhA を目的変数とし、患者属性(年齢、
性別、糖尿病の病型)
、BMI、血清 Alb 値、HbA1c を説明変数とした重回帰分析を行った。
その結果、HbA1c は PhA の独立した決定因子だった(R2=0.53、標準化β=-0.043、95%
CI:-0.07-0.02、p<0.001)。

【考察】
本研究は日本人糖尿病患者を対象とし、過去最大のサンプル数で PhA に影響を与える因
子について検討したものである。PhA 値は女性より男性で高く、年齢とともに低下し、体蛋
白量に関連する指標と正の相関を認めた。PhA は細胞外水分比と強い負の相関があった。ま
た、重回帰分析により、HbA1c は PhA と独立して関連していることを明らかにした。
PhA の性差は、健常者および糖尿病患者における既報と一致した。体蛋白と細胞内水分か
らなる体細胞量は、男性で PhA が高くなる原因となることが報告されている。体蛋白を反
映する指標(血清 Alb 値、骨格筋指数、骨格筋量、体幹筋量)および細胞内水分はいずれも
男性で高く、このことが本研究での高い PhA に寄与していることが示唆された。
健常者では年齢と PhA の関係が報告されており、青年期には徐々に増加し、成人期には
安定し、高齢者では減少することが知られている。本研究では、参加者の多くが中高年であ
るため、先行研究で指摘されているように、PhA 値と年齢には負の相関を認めた。
本研究で PhA と最も強い負の相関を示した細胞外水分比は、水分バランスを反映し、心
不全や腎不全、低栄養では高値となる。2 型糖尿病患者において細胞外水分比が高いこと
は、慢性腎臓病の進行、認知機能の低下と関連していたと報告されている。さらに、体組成
パラメータを除いた重回帰分析で、HbA1c が PhA に負の影響を与えることを示した。PhA
と HbA1c の独立した関連を検討した報告は韓国人 2 型糖尿病患者を対象とした 1 件のみで
ある。高血糖は細胞外の浸透圧を誘導し、細胞内腔から細胞外腔への水の移動を引き起こす
と考えられる。したがって、高血糖による血漿浸透圧の変化と活性細胞量の減少が、PhA の
低下と関連しているのかもしれない。慢性的な高血糖が PhA に影響を与えるメカニズムは
完全には解明されていないが、糖尿病患者において PhA が減少するということは、長期的
に高血糖にさらされることで、細胞の健康状態や栄養状態に影響を及ぼす可能性を示唆して
いる。
本研究の限界は、治療内容や糖尿病の罹病期間が PhA に及ぼす影響を検討していないこ
とである。また、PhA と糖尿病合併症に関するさらなる縦断的な研究も必要と考える。
【結論】
日本人糖尿病患者において PhA は男性の方が女性より高く、年齢とともに低下し、体細
胞量および筋肉量と正の相関、細胞外水分比と負の相関があった。HbA1c、年齢、性別、血
清 Alb 値、BMI は、糖尿病患者における PhA の独立した決定因子であった。PhA が糖尿病
患者の予後指標や合併症の評価として利用できる可能性が示された。

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

甲 第 3304号





I
村前

直和

De
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fPhaseAng
l
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nJa
panesePa
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日本人糖尿病患者における位相角の決定因子に 関する検討
論文題目

Ti
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r
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主 査
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fExami
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審査委


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ce-exam
i
ner




Vi
ce-exami
ner

西如

因舟





グ祠防絨灯


可因


要旨 は 1
, 000字∼ 2
, 000字程度)





生体インピーダンス分析 (
B
I
A) 法は、生体に微弱な交流電流を流してインピーダンスを測定すること
により、身体構成成分を推定する方法で、医療や栄養評価、スポーツなどさまざまな分野に用い られて
いる。 BIA法で実際に測定されるインピーダンスは鼈流を妨げる抵抗成分の総称で、脂質成分など細胞
内外の抵抗であるレジスタンス (
R
) と細胞膜に特有の抵抗であるリ アク タンス (
X
e
) に大きく 分け ら
れる。生体電気インピーダンス分析法で得られる位相角 (
Phasean
g
l
e、以下 PhA) は
、 Xeのアークタ
ンジェントを Rで割った値(アークタンジェント (Xe/RX1
8
0
/冗))として算出される。PhAは細胞膜
の健康状態を反映し、 トランスサイレチンなどの栄蓑指標と正の相関があり、 また癌患者や集中治療患
者の予後予測因子としての有用性が報告されている。糖尿病患者では健常者に比べて PhAが小 さく、 2
型糖尿病患者では PhA値と罹病期間の間に正の関係があることが報告されているが、 日本人糖尿病患

Alcの関連やその意義について検討した報告はない。本検討では日本人の糖尿病
者において PhAと Hb
患者における PhAの決定要因および PhAと HbAlcとの関係を明 らかにすることを目的とした。
方法は日本人糖尿病患者を対象に 2施設共同 (
神戸大学医学部附属病院、糖尿病内科まつだクリニッ
yRを用いた。合計 655人の患者が登録された (
男性
ク)で横断研究を実施した。体組成分析には InBod

400人、女性 255人、年齢 5
7
.
1土 1
4.
8歳
、 BMI2
5
.
6士5.
2kg
/m
2
、HbAlc8
.
1土 1.9%)。糖尿病の病型
TlDM:5
.
3士0
.
9、T2DM:5.
3士0.
8、 p=0
.
9
0
)。一方で男性は女性より
による PhAの差 はなかった (
PhAが有意に高かった (
男性 :5
.
5士0
.
8、女性: 4
.
9土 0
.
8、p<.0
.
01
)
。P
earsonの相関分析では、 PhA
は血清アルブミン値 (
r
=
0.
4
4
)、体細胞鼠 (
r
=0
.
6
2
)、骨格筋指数 (
r
=
0
.
6
2
)、体幹筋量 (
r
=
0
.
6
1)、細胞

r
=
0
.
6
2
)、細胞外水分 (
r
=
0
.
5
1
)、骨 ミネラ ル挺 (
r
=
0
.
5
3
) および基礎代謝量 (
r
=
0
.
5
9
) に対し
内水分 (
r
=
0
.
5
6
)、細胞外水分比と最も強い負の
て正相関を有していた。また、 PhAは年齢と負の相関を示し (
相関を示した (
r
=0
.
8
6
)。最後に、 PhAを目 的変数と し、患者属性(年齢、性別、糖尿病の病型) 、B M
I

、 HbAlcを説明変数とした重回帰分析を行った結果、 HbAlcは PhAの独立した決定因子だ
血清 Alb値

R2=0.
53、標準化{3=0.
0
4
3、95%CI:0.
0
7
0.
02、 p<0.
001
)。
った (
PhAの性差は既報と 一致した。 体蛋白と 細胞内水分からなる体細胞量は男性で PhAが高く なる原因
b値、骨格筋指数、骨格筋量、体幹筋贔)
となることが報告されている。体蛋白を反映する指標(血清 Al
および細胞内水分は ともに男性で高く 、 このことが本研究での高い PhAに寄与していることが示唆さ
れた。健常者では年齢 と PhAの関係が報告されており 、青年期には増加し、 成人期には安定し、高齢
者では減少することが知られている。本研究で は、参加者の多くが中高年であるため、先行研究で指摘
されているように 、PhA値 と年齢には負の相関を認めた。 PhAと最も強い負の相関 を示した細胞外水
分比は、水分バランスを反映し、心不全や腎不全、低栄授では高値となる。 2型糖尿病患者において細
胞外水分比が高いことは、慢性腎臓病の進行、認知機能の低下と関連していたと報告されている 。さら

l
cが PhAに負の影孵を与えることを示した。 PhAと HbAlcの独立した関連を
に重回帰分析で、HbA
検討した報告は韓国人 2型糖尿病患者を対象とした 1件のみである。高血糖は細胞外の浸透圧を誘迎し、
細胞内腔から 細胞外腔への水の移動を 引き起こすと考えられる。したがって 、高血糖による血漿浸透圧
の変化と活性細胞量の減少が、 PhAの低下 と関連しているのかもしれない。糖尿病患者で PhAが減少
することは、長期 的に 高血糖にさらされることで、細胞の健康状態や栄蓑状態に影孵を及ぼす可能性を
示唆している。 PhAが糖尿病患者の予後指標や合併症の評価として利用できる可能性を示した本研究の
知見は極めて重要である。よ って本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があるものと認める。

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