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書き出し

Neural logic controlling behavioral fluctuation in a compact circuit of the nematode C. elegans

加納, 周 名古屋大学

2023.06.26

概要

学位報告4

別紙4
報告番号








論文題目













Neural logic controlling behavioral fluctuation in a

compact circuit of the nematode C. elegans
(線虫 C. elegans の行動ゆらぎを規定する神経回路基盤の解析)




加納 周

論 文 内 容 の 要 旨
動物は環境刺激に応じて適切な行動をとる。感覚入力から行動を出力する神経系の情報処理機構の
解明は、神経科学にとって重要な課題である。本研究は神経回路内でのニューロンの機能を単一細胞
レベルで明らかにするために、モデル生物である線虫 Caenorhabditis elegans を用いた。線虫は全
302個のニューロンの接続様式が解明されているため、感覚入力から行動出力までの情報の流れを
単一細胞レベルで追うことができる。
本研究は線虫の温度走性行動をモデル系として、単一ニューロンレベルの情報処理メカニズムを解
析した。線虫は餌とともに一定温度で飼育されると、その飼育された温度に向かう走性行動を示す。
この温度走性行動は、温度感覚ニューロン AFD、AWC およびそれら2つの感覚ニューロンが共通し
てシナプス接続する介在ニューロン AIY を含む神経回路によって制御される。先行研究により、温
度刺激に対する AFD-AIY および AWC-AIY 間での相互作用様式が解析された。しかしながら、AFDAWC-AIY の3者からなる神経回路が、温度刺激応答に対して、どのように行動を制御するのかは未
解明な部分が多かった。
本研究ではまず、温度刺激中の行動の動的な性質を抽出するために、ロコモーションエントロピー
を新たに導入した。この指標は、線虫の形状を示す高次元座標データを主成分分析によって2次元に
圧縮し、その2次元化した形状変化の周波数スペクトルの局在性を評価するものであり、行動におけ
るゆらぎの特徴を捉える。例えば線虫が蛇行運動による前進を持続し、形状変化の周波数特性にゆら
ぎが少なくなると、ロコモーションエントロピーは減少する。一方で、前進から、後退やターンとい
った行動の切り替わりが起こり、形状変化の周波数特性にゆらぎが多くなると、ロコモーションエン
トロピーは増加する。この指標を用いて 0.02˚C/s の温度上昇刺激下の行動評価を行い、飼育温度付近
でロコモーションエントロピーが低下する、すなわち行動のゆらぎが減少することを発見した。
行動のゆらぎの低下に関与するニューロンの機能を明らかにするために、細胞死を誘発するタンパ
ク質カスパーゼを特定のニューロンに発現させた線虫株の行動と神経活動を計測した。その結果、温

学位関係

度感覚ニューロン AFD と介在ニューロン AIY が行動のゆらぎを減少させることを示した。一方
で、もう一つの温度感覚ニューロン AWC は、行動のゆらぎが低下する温度帯を低温側にシフト
させることを示した。これらの結果は、AFD および AIY は行動のゆらぎを抑制し、AWC は行動
のゆらぎが低下する温度域を調整することを示唆する。
行動のゆらぎの低下を引き起こす 0.02˚C/s の温度上昇刺激に対して、AFD、AWC、AIY がどの
ような神経活動応答するのかを解明するために、3 細胞同時カルシウムイメージングを行った。
飼育温度付近で、AFD の神経活動は顕著に上昇したのに対し、AWC と AIY は AFD のように神
経活動の上昇が見られる温度の反応域を示さなかった。これらの結果は、温度感覚ニューロン
AFD の神経活動の活性化が飼育温度付近での行動のゆらぎに関連する可能性を示唆する。さら
に、特異のニューロンを欠損する株のカルシウムシグナルの計測により、AFD の温度の反応域
がもう一つの温度感覚ニューロン AWC によって調整されることを示した。これまで AFD-AWCAIY 回路において AFD-AIY、AWC-AIY の相互作用様式については報告されてきたが、本研究
は AWC が AFD の温度応答性に関与する新たな知見を示唆する。本研究による AWC 欠損株の
カルシウムイメージングと行動アッセイの結果は、AWC が AFD の神経活動に干渉し、行動のゆ
らぎの温度域を調整する可能性を示唆する。
0.02˚C/s の温度上昇刺激における AFD-AWC-AIY による行動制御メカニズムが、温度刺激の上
昇の速さに依存するかどうか検証するために、より急峻な 0.1˚C/s の温度上昇刺激を与えた際の
行動と神経活動を解析した。0.02˚C/s で野生型のロコモーションエントロピーは飼育温度付近で
低下したのに対し、0.1˚C/s では低下しなかった。この結果は行動のゆらぎの変化は温度上昇刺
激の変化の速さに依存することを示唆する。さらに 0.1˚C/s の温度上昇刺激において、飼育温度
付近で AFD 欠損株のロコモーションエントロピーは増加し、AWC 欠損株のロコモーションエ
ントロピーは減少した。これらの結果は、0.1˚C/s では AFD が行動のゆらぎを抑制し、AWC は
行動のゆらぎを活性化することを示唆する。
0.1˚C/s の温度上昇刺激での AFD、AWC、AIY がどのような神経活動応答するのかを解明するた

め、AFD、AWC、AIY のカルシウムシグナルを計測した。 0.02˚C/s の温度上昇刺激では AFD の
みの神経活動が明確に上昇したが、0.1˚C/s では AFD、AWC、AIY のすべての神経活動が上昇し
た。この結果は AWC、AIY の神経活動は温度上昇率に依存することを示唆する。AFD 欠損株の
AWC と AIY の神経活動は野生型に比べて反応性が低下したことから、 0.1˚C/s における AWC と
AIY の神経活動の活性化に AFD が必要であることが示唆された。AWC 欠損株において、AFD の

活性化する温度帯が野生型に比べて低温側にシフトしたことから、AWC は AFD の活性化する温
度域を制御し、AFD と AWC が双方向に相互作用することで、AFD と AWC の温度に対する応答
特性を互いに調整することを示唆する。さらに、 AWC 欠損株の AIY の神経活動の個体間のばら
つきが野生型に比べて減少したことから、 AWC は AIY 神経活動のばらつきを増加させることを
示唆する。本研究により AWC は AFD-AWC-AIY 神経回路において温度の情報処理に干渉し、行
動のゆらぎを増加させることを明らかにした。本研究は、ノイズを付加する役割を持つニューロ
ンが神経回路に取り込まれることで、動物の行動のゆらぎが制御されることを示唆する。

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