腕足動物殻の構造および化学組成は続成作用によってどのように改変されるのか
概要
珪長質砕屑岩における腕足動物化石殼の陸水性続成変質において,Mn濃度とCL発光強度(MCLI値)が殻の変質部位を特定するための有用な指標となることが改めて確認された.ただし,同パターンの続成変質であったとしても瀬又地域のようにMn供給量が少ない環境下である場合は,Mn濃度が現生殻の濃度の範囲内(<80ppm)に収まり,従来の判断基準では保存が良いと判断されてしまう可能性がある.よって,粉末試料のマイクロサンプリングなどを用いて,殻全体での化学組成およびCL発光強度の変動傾向を確認することが必要であると考えられる.
埋没続成変質においても,殻のMn濃度が続成変質の検出に有効であると確認できた.殻の化学組成の改変の素過程に関して,詳細なプロセスが不明であるため,今後は殻のEBSD像観察やラマン分光分析などの結果を含めて解明を進めていく必要がある.