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大学・研究所にある論文を検索できる 「Reasesssment of paleotemperature proxies using modern foraminifera based on the specimens derived from controlled laboratory culture and field surveys」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Reasesssment of paleotemperature proxies using modern foraminifera based on the specimens derived from controlled laboratory culture and field surveys

前田, 歩 東京大学 DOI:10.15083/0002006690

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

前田 歩

本論文は 6 章から構成される。第 1 章はイントロダクションであり、研究対象である浮遊性お
よび底生有孔虫に関する知見、有孔虫殻の元素と安定同位体組成の古水温プロキシとしての有用性
とその適用に際した問題点がレビューされている。ここでは、原生動物である有孔虫が半世紀以上
にわたり古気候学上の重要な古水温プロキシとして適用されてきたこと、その信頼性が環境条件を
制御した飼育実験あるいは環境条件を観測した海洋調査で得られた有孔虫試料の分析結果をもと
に進歩してきたことが示された。その上で、本研究の目的は、セディメントトラップで採取された
浮遊性有孔虫(PF)群集の環境応答解析と、飼育実験で得た大型底生有孔虫(LBF)殻の元素・同
位体分析による、有孔虫の環境プロキシの高度化にあることが述べられた。
第 2 章、第 3 章は、インド洋ベンガル湾のセディメントトラップを用いて 3 年間採取された
PF に関する研究である。第 2 章では、月ごとの PF 個体数と群集を解析し、その季節変動の支配
要因を明らかにした。ここでは、1万個以上の PF 個体の種同定および計測から、PF 個体数が夏
と冬に極大、春に極小になることを示した。さらに、優占する 7 種の個体数の季節変動パターンが
検討された。7種は食性から3つのグループに分けられ、各グループの個体数は季節的に変動する
表層と亜表層の一次生産に応じて変動することが示された。ベンガル湾での表層〜亜表層の海洋構
造はモンスーンの強弱に支配されていることから、本章の成果は PF 群集の動態を支配する気候−
海洋プロセスを解明したと言え、この研究分野での新たな進展であると評価できる。
第 3 章では、前章で扱った7優占種の中で、特に重要な3種を対象として、水温プロキシであ
る炭酸カルシウム殻の酸素同位体比 (δ18O) と Mg/Ca 比を測定し、その結果とセディメントトラ
ップでの水温の深度プロファイルを比較し、3 種がそれぞれ混合層、温度躍層、混合層〜温度躍層
で殻を形成したことを示した。次に、衛星データから求めたベンガル湾での光合成有効放射から PF
の生息深度を制約し、δ18O と Mg/Ca 比から求めた深度と整合的であることが示された。さらに、
データの慎重な解析により、PF 殻の δ18O は年平均水温を反映することを確認し、一方で、混合
層種と温度躍層種の δ18O の差から海洋成層状態を復元する際の問題点も指摘された。本章および
前章の結果と議論は、化石有孔虫の群集解析と地球化学分析を組み合わせて、古海洋条件を復元す
る際の基盤になる成果であると認められる。
第 4 章、第 5 章では、サンゴ礁域に棲む大型底生有孔虫(LBF)を、温度制御下で飼育するこ
とで、新たな古水温プロキシの開発を目指した。第 4 章では、予察的な研究として、ガラス質殻と
磁器質殻の LBF 各1種をいくつかの制御温度下で飼育し、殻の Mg/Ca 比と δ18O を測定した。2
つの種はともに、水温に対し Mg/Ca 比は正の、δ18O は負の相関を示し、高精度の水温換算式を提
示することができた。なお、2つの種は類似する Mg/Ca 比の水温換算式を示すが、δ18O の水温換
算式は大きく異なっていた。
そこで、第 5 章では、LBF の古水温プロキシの信頼性を確かめるため、新たにガラス質の 2 種
を対象に加え、計 4 種を2℃刻みの温度制御下で飼育し、殻を分析した。その結果、4 種の Mg/Ca
比の水温換算式は 21~29℃の範囲でほぼ一致することが示された。一方、δ18O の水温換算式につい
ては、ガラス質3種間で若干の違いが認められ、磁器質の1種では大きく異なることが示された。
LBF の δ18O の水温換算式は種ごとに確立すべきである。本章および前章の結果は、これまで例が
少なかった LBF のプロキシ研究としての重要な成果であり、化石 LFB を利用した古海洋研究の
基盤になるものであり、本研究の目的は達成されたと評価できる。
第 6 章では、第 2 章から第 5 章までを総括し、今後解決すべき課題を提示した。ベンガル湾の
研究では、堆積物中で溶解しやすい種の存在度が低下していることを指摘し、殻の堆積後の溶解が
PF 群集を変質する可能性と、続成作用を評価する必要性を指摘した。また、LBF については δ18O
の水温換算式は種ごと検討すべきであるが、Mg/Ca の換算式は野外採取個体の分析結果とも整合
的であり、高い利用可能性を持つことが述べられた。
なお、本論文第2章、第 3 章、第 4 章、および第 5 章は共同研究であるが、論文提出者が分析
および解析を行ったものであり、論文提出者が主体となって完成したものと判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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