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大学・研究所にある論文を検索できる 「Geology and geochemistry of the Eoarchean carbonate rocks : Implications for co-evolution of life and transitional element contents in the seawater through geologic time」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Geology and geochemistry of the Eoarchean carbonate rocks : Implications for co-evolution of life and transitional element contents in the seawater through geologic time

吉田, 聡 東京大学 DOI:10.15083/0002006691

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名 吉田 聡
本論文は6章からなる。第 1 章は、イントロダクションであり、生命と海水
組成の共進化に関する研究史とその問題点がまとめられている。生命と海水組
成の進化に着目した研究は古くから存在するが、海水中の遷移金属元素組成の
地球史を通じた経年変化の推定はいまだ論議の的となっている。特に、岩石試
料の分析から海水組成を推定した例は、縞状鉄鉱層などの比較的特殊な環境で
堆積した岩石に限られており、海洋全体の経年変化はいまだ解明されていない。
本章では、太古代炭酸塩堆積岩を用いて海水組成を推定することの利点と問題
点が挙げられている。問題点としては、初期太古代の炭酸塩岩の成因が不確定
であることや珪化作用、再結晶化作用および砕屑物の混入を受け、炭酸塩岩の
化学組成が初生的な情報を失っている点が指摘され、それらの影響を考慮する
必要性が説かれている。
第 2 章では、約 38 億年前に形成したカナダ・ケベック州のヌブアギツック表
成岩帯の炭酸塩岩の起源を地質学的な産状と希土類元素組成を用いて推定した
ことが述べられている。この炭酸塩岩の地質学的な産状は炭酸塩岩が岩脈に沿
って形成したこと、一方、希土類元素組成は炭酸塩鉱物が水溶液から晶出した
ことを示すことから、炭酸塩岩は熱水に伴って形成したと結論づけられている。
第 3 章では、約 39 億年前に形成したカナダ・ラブラドル、サグレック岩体に
存在するヌリアック表成岩類中の炭酸塩岩が、地質学的な産状と微量元素組成
をもとに、最古の堆積成炭酸塩岩であると示されている。また、それらの炭酸
塩岩は縞状鉄鉱層や超苦鉄質岩を伴うタイプと泥質岩を伴うタイプに分類され、
それぞれ遠洋熱水活動域と大陸縁で堆積したと推定されている。加えて、両者
に深海熱水の関与を示す Eu の正異常が存在することから、初期太古代では全海
洋に深海熱水の影響が及んでいたと結論づけられている。さらに、それらの炭
酸塩岩における珪化作用や砕屑物質の混入による化学組成の影響が定量的に評
価され、海洋で晶出した初生的な炭酸塩鉱物中の V、Co、Ni および Zn 濃度が
推定されている。
第 4 章では、約 38 億年前に形成した西グリーンランド南部・イスア表成岩帯
の炭酸塩岩の地質学的産状と地球化学的研究について述べられている。その炭
酸塩岩は、チャート層と互層するタイプと礫岩層と互層するタイプに分類され、
それぞれの地質学的な産状と微量元素組成から、遠洋域と大陸縁辺域で堆積し
た化学堆積岩であると推定されている。また、第 3 章と同様に、珪化作用や砕
屑物質の混入による化学組成の影響が定量的に評価され、それらの炭酸塩岩の
化学組成から、約 38 億年前の海洋で晶出した初生的な炭酸塩鉱物中の V、Co、
Ni および Zn 濃度が推定されている。

第 5 章では、本論文全体を通じた議論が展開されており、第 3 章と第 4 章で
得られた初期太古代の海洋で晶出した初生炭酸塩鉱物の化学組成と顕生代の炭
酸塩岩の化学組成とが対比され、初期太古代の海水は顕生代の海水に比べて、V、
Co、Ni および Zn に富んでいたと結論づけられている。V、Co および Ni はそれ
ぞれ窒素固定、メチオニン合成およびメタン生成に必要とされるニトロゲナー
ゼ、コバラミンおよび F430 補酵素に含まれる金属元素である。そこで、推定さ
れた海水の V、Co および Ni 濃度の経年変化と生命進化とが対比され、生命の金
属元素利用能と海水組成との関係が議論され、Co と Ni に関しては生命と海水組
成との間に共進化が見られるものの、ニトロゲナーゼの進化に着目した場合、V
に関しては両者の関連性は見られないという結論が示されている。以上の結果
をもとに、海水組成と生命には共進化の事例が存在するものの、全ての生命が
海水組成と共進化しているわけではなく、生物学的な要因が進化を駆動する場
合があると結論づけられている。
第 6 章では、本論文の結論がまとめられている。
本論文では、変成作用や変質作用を被った初期太古代の炭酸塩岩から、堆積
時の海水組成を推定する新たな手法が提案されている。また、その手法を用い
て推定された海水の遷移金属元素組成の経年変化と生命進化との対比から、元
素ごとに海水組成と生命進化との関連性が具体的に示され、海水組成と生命の
共進化について論じられている。本論文で示された炭酸塩岩から過去の海水組
成を推定する手法と海水組成と生命の共進化に関する新たな知見には、地球と
生命の進化の研究における独創性と新規性が認められる。
なお、本論文の地質に関する部分は小宮 剛教授(総合文化研究科)、地球化
学に関する部分は澤木佑介助教(総合文化研究科)と石川 晃准教授(東京工業
大学)との共同研究であるが、論文提出者が主体となって分析及び検証を行っ
たもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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