大腸癌における抗癌剤によるカルレティクリン誘導機序の解明
概要
博士論文
大腸癌における抗癌剤によるカルレティクリン誘導機序の解明
東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
外科病態学講座
消化器外科学分野
内藤
覚
目次
Ⅰ.
要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 2 )
Ⅱ.
研究背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 4 )
Ⅲ.
研究目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 8)
Ⅳ.
研究方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 9)
Ⅴ.
研究結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 18)
Ⅵ.
考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (p. 23)
Ⅶ.
結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (p. 31)
Ⅷ.
謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (p. 32)
Ⅸ.
参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 33)
Ⅹ.
図の説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(p. 42)
1
Ⅰ. 要約
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI; Immune checkpoint inhibitor) は、大腸癌の約
1 割 と さ れ る 高 頻 度 マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト 不 安 定 性 (MSI-high; Microsatellite
instability-high) 大腸癌に対して有効であるが、残りの大多数を占めるマイクロサテ
ライト安定 (MSS; Microsatellite stable) 大腸癌では同様の効果が得られない。しかし、
近年、ICI を抗癌剤と併用することで MSS 大腸癌に対しても有効性を示すことが報
告されている。併用した抗癌剤により免疫原性細胞死 (ICD; Immunogenic cell
death) が誘導され、MSS 大腸癌の免疫原性が改善したことが要因として考えられる。
ICD が誘導されると小胞体に存在するカルレティキュリン (CRT; Calreticulin) が細
胞表面に移動する。CRT は ICD において樹状細胞の貪食を促進し免疫提示を開始さ
せる点で重要な役割を果たしている。本研究では ICD における CRT に着目し、大
腸癌細胞株およびヒト大腸癌オルガノイドを用いて抗癌剤投与による細胞表面の
CRT 発現を検証し、その誘導機序を検討した。
HCT116、HT-29、KM12C、RKO の 4 種類の大腸癌細胞株および 3 症例の臨床検
体より培養したヒト大腸癌オルガノイドを用いてオキサリプラチンと 5-フルオロウ
ラシル (5-FU; 5-Fluorouracil)による検討を行ったところ、2 種類の抗癌剤両者で大
腸癌細胞における CRT の細胞表面への発現が確認された。オキサリプラチンは ICD
2
の誘導剤として報告されているが、5-FU に関しては一定の見解が無いのが現状であ
った。しかし、今回の研究では作用機序の異なる 2 種類の抗癌剤で細胞表面の CRT
発現を認めた。続いて抗癌剤により CRT が細胞表面に誘導される機序を明らかにす
るために RNA シークエンスを行い、抗癌剤投与群と非投与群との遺伝子発現変化を
検討した。その結果、抗癌剤投与により共通して発現上昇している 4 つの遺伝子
(TP53I3、TP53INP1、SMPD1、YPEL3) が抽出された。続いて行った定量リアル
タイム PCR においても抽出された 4 遺伝子の発現上昇が確認された。TP53I3、
TP53INP1、YPEL3 は p53 シグナル伝達経路に関連しており、抗癌剤投与時の細胞
ストレス応答を反映しているものと考えられた。一方で SMPD1 は酸性スフィンゴ
ミエリナーゼ (ASMase; Acid sphingomyelinase) をコードしている遺伝子であり、
ASMase の発現上昇は小胞体ストレスを誘導することが報告されている。細胞表面へ
の CRT の露出は小胞体ストレスに伴って起こることが知られており、SMPD1 の発
現上昇が小胞体ストレスを介し CRT の細胞表面への誘導に関与している可能性が示
唆された。
3
Ⅱ. 研究背景
免疫チェックポイント分子は自己に対する免疫応答を抑制している 1)。免疫チェ
ックポイント分子のひとつである PD-1 は活性化 T 細胞上に発現し、腫瘍表面に発
現している PD-L1 と結合することで T 細胞の活性化を抑制し抗腫瘍免疫応答を抑制
している
。癌治療薬として使用されている免疫チェックポイント阻害薬 (ICI;
2)
Immune checkpoint inhibitor) は、この免疫抑制シグナル伝達を阻害することで細胞
障害性 T 細胞の活性化抑制を解除し抗腫瘍効果を持つ 3)。ICI の中でもペムブロリズ
マブ (抗 PD-L1 抗体) などが臨床で使用されており、一部の腫瘍で高い効果を示して
いる
。しかし、大腸癌においては全体の約 10%である高頻度マイクロサテライト
4)
不 安 定 性 (MSI-high; Microsatellite instability-high) 大 腸 癌 や 、 数 % 存 在 す る
POLE/POLD1 変異大腸癌には有効であるが、大部分を占めるマイクロサテライト
安定 (MSS; Microsatellite stable)かつ POLE/POLD1 変異のない大腸癌には同様の効
果が得られないことが明らかになっている
5)-8)
。MSI-high 大腸癌はミスマッチ修復
遺伝子異常により腫瘍遺伝子変異量 (TMB; Tumor mutational burden) が高く癌抗原
が多くなる。また、POLE 遺伝子や POLD1 遺伝子は DNA 複製の際のエラーを修復
する機能をもつが、POLE/POLD1 変異大腸癌はその機能が失われているため多く
の変異タンパクが産生され、これらが癌抗原となる 9)。以上のことから MSI-high 大
4
腸癌や POLE/POLD1 変異大腸癌は抗腫瘍免疫の影響を受け易い。しかし、実際は
先述の PD-1 や PD-L1 などの免疫チェックポイント分子により抗腫瘍免疫が抑制さ
れている。ICI はこの免疫チェックポイント分子を阻害することで抗腫瘍免疫を再活
性化させるため、免疫原性が高い MSI-high 大腸癌や POLE/POLD1 変異大腸癌に有
効性を示す
。 一 方 で 癌 抗 原 が 少 な く 免 疫 原 性 の 低 い MSS 大 腸 癌 か つ
10 )
POLE/POLD1 変異の無い大腸癌は元々抗腫瘍免疫の影響を受けにくいため、ICI の
効果が得られないと考えられている
8)-10)
。近年、大腸癌化学療法として代表的なレ
ジメンである FOLFOX (レボホリナート+ 5-フルオロウラシル +オキサリプラチン)
療法と ICI の併用により MSS 大腸癌に ICI が有効性を示したことが報告された 11)。
MSS 大腸癌に対して ICI 単剤を使用した報告では、無増悪生存期間は 2 ヵ月で 50%、
6 カ月で 20%を下回るのに対し、FOLFOX 療法と ICI の併用では 2 ヵ月で約 90%、
6 カ月の段階で約 60%と従来の MSS 大腸癌に対する化学療法とほぼ同等の結果であ
った
11)12)
。ICI が有効であった要因として、FOLFOX 療法により癌細胞の免疫原性
を高める免疫原性細胞死 (ICD; Immunogenic cell death) が起きたと考えられている
。
11)
ICD は細胞表面に露出するタンパク質や細胞外へ放出されるタンパク質により免
疫応答を惹起する現象である
。ICD が誘導されると小胞体に存在するカルレティ
13)
5
キュリン (CRT; Calreticulin) が細胞表面に移行し、核からは HMGB1 や ATP など
のダメージ関連分子パターン (DAMPs; Damage-associated molecular patterns) が細
胞外へ排出される 13)-16)。細胞膜に露出した CRT は “eat-me シグナル” として樹状細
胞などの抗原提示細胞の貪食を促進し、DAMPs は “find-me シグナル” として抗原提
示細胞を誘引する
13)
。この 2 つのシグナルにより樹状細胞による癌細胞の貪食が促
進され、抗腫瘍免疫が活性化される
。すなわち、免疫応答を惹起しやすい細胞死
13)
の形態である ICD を呈すると考えられている。ICD において CRT は抗原提示細胞
の貪食を促進し、抗腫瘍免疫の開始に関与しているという点で、特に重要な因子と
考えられており、ICD の評価実験においてマーカーとして使用されている。しかし、
既知の報告では ICD の評価実験は癌細胞株を用いたものに限られ、臨床検体におけ
る ICD の評価はなされていない 17)。また、ICD は様々な薬剤や放射線などの細胞ス
トレスにより誘導されるが
、CRT の細胞膜への誘導機序については十分に
15)16)18)19)
検討されていない。 通常 CRT は小胞体のみに存在するタンパクで Ca2+と結合し細
胞内の Ca 濃度の調整に関与し、またカルネキシンや ERp57 と共にカルレティキュ
リン/カルネキシンサイクルを構成し、糖タンパク質のフォールディングに関与して
いる
20)21)
。近年では従来の機能の他に抗腫瘍免疫に関わることが明らかになってき
ており、先述の如く ICD が誘導されると小胞体から細胞表面へ CRT が移行すると
6
報告されている
22)
。既存の研究では ICD において CRT の細胞表面への移行には小
胞体ストレスが関わっている事が明らかになってきている
。また、小胞体スト
22)23)
レス経路は最終的に細胞のアポトーシスを呈するため、ICD における CRT の細胞表
面への露出はアポトーシス経路に伴って起こると考えられてきた
。しかし、近
24)-27)
年、小胞体ストレス誘導剤単剤のみを使用した実験では CRT の細胞表面への発現を
認めなかった報告や 28)、ICD を誘導し細胞表面で CRT 発現を認めていたとしても小
胞体ストレスによるアポトーシス経路の活性化が認められないなどの報告があり
ICD の際に CRT が細胞表面へ誘導される機序に関しては未だ明らかになっていない
点が多い 17)22)24)25)28)29)。
本研究では ICD において特に重要な役割を担っている CRT の細胞表面への誘導
を大腸癌細胞株と大腸癌オルガノイドを用いて実証し、さらにその誘導機序を明ら
かにすることを目的とした。
7
、
29)
Ⅲ. 研究目的
本研究の目的は、大腸癌における抗癌剤投与による CRT の細胞表面への誘導を実
証し、その誘導機序を明らかにすることである。
8
Ⅳ. 研究方法
1. 大腸癌細胞株の培養
ヒト大腸癌細胞株のうち、MSS である HT-29 と、MSI-high である HCT116、
KM12C、RKO の計 4 種を使用した。HT-29、HCT116 は McCoy 5A (Thermo Fisher
Scientific, Waltham, MA, USA) 、KM12C は RPMI1640 (Thermo Fisher Scientific) 、
RKO は DMEM (Thermo Fisher Scientific) を培地として用いた。培地には、10%
FBS (fetal bovine serum, BioWest, Riverside, MO, USA) および 1%ペニシリン・スト
レプトマイシン (Thermo Fisher Scientific) を添加した。細胞株は、10 cm ディッシ
ュに播種し、5%二酸化炭素下、37℃で培養し、培地は週に 3 回交換した。各細胞株
における高頻度マイクロサテライト不安定性の有無は文献を参照した 30)31)。
2. 臨床検体
2020 年から 2022 年にかけて、東北大学病院総合外科で外科的に切除された大腸
癌検体3例を用いた。切除した検体から癌組織を採取し次項の手順でオルガノイド
の培養を行った。ミスマッチ修復機能タンパク質に対する免疫染色を行い高頻度マ
イクロサテライト不安定性の判定を行った。患者背景を表1に示す。症例は全て放
射線療法や化学療法などの術前治療を行っていない症例を選択し、さらに患者背景
9
や遺伝的背景に関わらず、培養により十分な細胞数が得られたものを実験に使用し
た。本研究は東北大学倫理委員会の承認を受け (承認番号:2018-1-207) 、研究に先
立ち患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
3. ヒト大腸癌オルガノイドの培養
CRT の細胞表面への露出の検証は大腸癌細胞株では報告されているが、臨床検体
における報告は未だない 18)。ICD において CRT の細胞膜への移行は細胞刺激から短
時間で起こるため、術前治療である抗癌剤や放射線などの刺激から時間が経過して
から摘出する臨床検体では検証が困難である。そこで、本研究では臨床検体から作
成したヒト大腸癌オルガノイドを用いて検証を行った。手術にて摘出された大腸癌
検体を約 1 mm 角に細断し、PBS で洗浄した後、Liberase (TH grade; Roche Life
Science, Indianapolis, IN, USA) を用いて 37℃で 30 分間、120 rpm で反応させた。
次いで、TrypLE Express (Thermo Fisher Scientific) を用いて、37℃で 20 分間、120
rpm で処理した。上清を回収し、200 × g、3 分間、4℃で遠心分離した。細胞ペレ
ットをマトリゲル (growth factor reduced; BD Biosciences, San Jose, CA, USA) に包
埋し、24 ウェルプレートに分注した (50 µl Matrigel/well) 。培地は Advanced
DMEM/F12 (Thermo Fisher Scientific) に、ペニシリン・ストレプトマイシ ン
10
(Thermo Fisher Scientific) 、10 mM HEPES (Thermo Fisher Scientific) 、2 mM
GlutaMAX (Thermo Fisher Scientific) 、1 × B27 (Life Technologies, Grand Island,
NY, USA) 、10 nM Gastrin I (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) 、1 mM N-アセチ
ルシステイン (Fujifilm Wako, Osaka, Japan) を添加した。Growth factor として、50
ng/ml mouse-recombinant EGF (Life Technologies, Cergy Pontoise, France) 、100
ng/ml mouse-recombinant Noggin (Peprotech, London, UK) 、10% R-spondin-1
Conditioned Medium、50% Wnt-3A Conditioned Medium、500 nM A83-01 (Tocris
Bioscience, Bristol, UK) 、FGF-basic (Peprotech) 、IGF-1 (BioLegend, San Diego,
CA, USA) 、10 mM Y-27632 (Fujifilm Wako) を使用した。マトリゲル重合後に培地
を加え、21%酸素、5%二酸化炭素、37℃で培養した。培地は週 2 回交換した。継代
には、4℃に冷却したセルリカバリーソリューション (Corning, NY, USA) を加えて
マトリゲルを解重合させ、200 × g、3 分、4℃で遠心しオルガノイドを回収した。
TrypLE Select (×10) (Thermo Fisher Scientific) を D-PBS で 3 倍希釈した溶液でオ
ルガノイドを 37℃で 10 分間反応させ、オルガノイドを単細胞化させた。単細胞化さ
せた細胞をマトリゲルに包埋し、上記条件の培地で継代した。
4. フローサイトメトリー
11
早期アポトーシス細胞および細胞膜に CRT が露出した細胞 (CRT 発現細胞) の評
価は、FACSVerse™ (BD Biosciences) フローサイトメーターを使用し、FACSuite™
software (BD Biosciences) で解析した。
a) 早期アポトーシス細胞の評価
ICD において CRT の小胞体から細胞膜への移行はアポトーシスの早期段階で起こ
ることが知られている
18)
。そこで大腸癌細胞株が早期アポトーシスを呈する抗癌剤
の適切な濃度と暴露時間を調べた。大腸癌細胞株 2 種類 (HCT116、HT-29) を 6 ウ
ェルプレートに 1×105 細胞/well となるように播種した。播種から 48 時間後に、既
存の研究にて ICD の誘導剤として知られているオキサリプラチン (Fujifilm Wako) を
それぞれ 0 µM、10 µM、30 µM、100 µM の濃度で、2、4、6、8、12、24 時間暴露
した。得られた細胞を FITC Annexin V apoptosis Detection Kit I (BD Pharmingen,
San Diego, CA, USA) を使用し、fluorescein isothiocyanate (FITC) 標識 Annexin V と
phycoerythrin (PE) 標識 Propidium Iodide (PI) による二重染色を行った。Annexin V
陽性かつ PI 陰性 (Annexin V (+)/PI (-)) 細胞群を早期アポトーシス、Annexin V 陽
性かつ PI 陽性 (Annexin V (+)/PI (+)) 細胞群を細胞死として各細胞集団の割合を評
価した。
12
b) 細胞表面の CRT 発現細胞の評価
ⅰ) CRT 発現評価に適切な抗癌剤の暴露時間および濃度
CRT 発現評価に適切な抗癌剤の暴露時間および濃度の評価として、大腸癌細胞株
2 種類 (HCT116、HT-29) を 6 ウェルプレートに 1×105 細胞/well となるように播
種した。播種から 48 時間後にオキサリプラチンを 0 µM、10 µM、30 µM、100 µM
の濃度で、6 時間または 24 時間暴露した。得られた細胞を FITC 標識抗 Calreticulin
抗体 (ab196158, Abcam) と PE 標識 PI で二重染色を行った。CRT 発現は早期アポト
ーシスの段階で起こるため 16)、CRT 陽性かつ PI 陰性 (CRT (+)/ PI (-)) 細胞の割合
を評価した。
ⅱ)抗癌剤による CRT 発現細胞の評価
オキサリプラチンは ICD の誘導剤として知られているが、大腸癌治療において代
表的な抗癌剤である 5-FU (5-Fluorouracil; 5-フルオロウラシル) に関しては ICD お
よび CRT の細胞膜への露出について十分に検討されていない。今回、オキサリプラ
チンに加え 5-FU についても評価することとした。大腸癌細胞株 4 種類 (HCT116、
HT-29、KM12C、RKO) を 6 ウェルプレートに 1×105 細胞/well となるように播種
した。オキサリプラチンを 0 µM、30 µM、100 µM、300 µM、5-FU (Fujifilm Wako)
を 0 µM、300 µM、1000 µM、3000 µM の濃度に設定し、24 時間暴露させた。得ら
13
れた細胞を FITC 標識抗 Calreticulin 抗体と PE 標識 PI による二重染色を行い、CRT
(+)/ PI (-) 細胞の割合を評価した。
5. 免疫蛍光染色
免疫蛍光染色にて大腸癌細胞株、ヒト大腸癌オルガノイドの細胞表面に発現した
CRT を評価した。大腸癌細胞株は 2 ウェルチャンバースライド (Asahi Techno Glass
Co. Tokyo, Japan) に 5×103細胞/well となるように播種した。オルガノイドは 24 ウ
ェルプレートに分注した (50 µl Matrigel/well) 。オキサリプラチン 100 µM、5-FU
1000 µM にそれぞれ 24 時間暴露した群と、抗癌剤非投与群(ネガティブコントロー
ル(NC; Negative control))の 3 群で実験を行った。それぞれ培地を除去し、PBS で
3 回洗浄した後、4 % パラホルムアルデヒドを含む PBS に 10 分間浸し固定した。続
いて固定したサンプルをブロッキング液 (1%BSA+グリシン 22.52 mg/mL+PBST
(PBS + 0.1 % Tween 20)) に 30 分浸した。今回の実験では細胞表面の CRT 発現を評
価するために膜透過処理を行わなかった。続いて抗 CRT 抗体を含む PBST に一晩浸
し染色した後、抗体溶液を取り除き、PBS で 3 回洗浄を行った。次に 4',6-diamidino2-phenylindole (DAPI) (ab228549, Abcam) にて染色した後、PBS で 3 回洗浄を行っ
た。染色した大腸癌細胞株はグリセロールを用いてスライドガラスに封入し、蛍光
14
顕微鏡 (BZ-X80,キーエンス) を用いて観察した。オルガノイドはスライドガラスに
封入せず、共焦点顕微鏡 (C2si,ニコン) にて観察した。
6. RNA シークエンス
大腸癌細胞株 4 種類 (HCT116、HT-29、KM12C、RKO) を 6 ウェルプレートに 1
×105 細胞/well となるように播種した。播種から 48 時間後に抗癌剤を投与しない
NC 群および、オキサリプラチン 100 µM、5-FU 1000 µM にそれぞれ 24 時間暴露し
た群 に 分 けた。 ...