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大学・研究所にある論文を検索できる 「Increased chemosensitivity via BRCA2-independent DNA damage in DSS1- and PCID2-depleted breast carcinomas」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Increased chemosensitivity via BRCA2-independent DNA damage in DSS1- and PCID2-depleted breast carcinomas

権藤, なおみ 名古屋大学

2022.07.26

概要

【緒言】
女性で最も罹患率の高い乳がんは、腫瘍抑制遺伝子 BRCA の変異と密接な関連がある。がん抑制遺伝子である BRCA は相同組換えによる二本鎖 DNA の切断を修復することでゲノムの完全性を維持するという重要な役割を果たしており、その変異は家族性乳がんの 80~90%、全乳がんの 3~6%の原因となっている。今回は我々が注目したタンパク質は intrinsically disordered protein(IDP)である DSS1 タンパク質である。DSS1は BRCA2 と結合しており、乳がん細胞株では DSS1 の発現が低下すると BRCA2 蛋白の分解が促進されることから BRCA2 の安定化因子と考えられている。一方、DSS1は 転写と mRNA 核外輸送に関与する TRanscription-EXport-2(TREX-2)複合体のコンポーネントである PCID2 と結合し BRCA2 と相互作用し、転写共役型 DNA 傷害を抑制することが示されている。本研究では乳がんの化学療法感受性における DSS1 と BRCA2 の関与を解明する。

【対象および方法】患者及び乳がん組織
乳がん手術標本の FFPE 組織ブロック(n=20)は、正常乳房組織、非浸潤性乳管癌 (DCIS;ductal carcinoma in situ)、浸潤性乳管癌を同時に含んでおり、藤田医科大学病院で採取した。また、凍結した浸潤性乳癌組織は 1997 年から 2005 年の間に名古屋市立大学病院に入院した女性患者から得た(n=269)。凍結組織は、外科的切除の際に液体窒素中でスナップ凍結し、total RNA を抽出するまで-80℃で保存した。

免疫組織化学染色
FFPE 組織ブロックを 3μm の切片に切り出した。脱パラフィン、再水和、抗原除去、ブロッキングの後、抗 DSS1 抗体または抗 PCID2 抗体でインキュベートした。呈色 発色反応は、Vulcan Fast Red Chromogen キット 2(Biocare Medical, Concord, CA)を用いて行った。免疫組織化学の結果は、専門の解剖学的病理学者によって採点された。発現スコア割合と強度のスコアを掛け合わせて 0~300 の発現スコアを算出した。

Kaplan-Meier プロッターデータベース
Kaplan-Meier プロッターデータベース(https://kmplot.com/analysis/)は、4,000 の乳がんサンプルにおいて、20,000 以上の遺伝子の影響を評価することができる。我々はこのデータベースを用いて DSS1 高、DSS1 低、BRCA2 高、BRCA2 低の乳がん患者の全生存率(OS)と無再発生存率(RFS)を算出した。

定量的逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)について
癌組織から抽出した全 RNA から一本鎖の cDNA を合成しから一本鎖の cDNA を合成した。TaqManTM 遺伝子発現アッセイを行った。PCID2 の転写産物の量を測定するために ABI7500 と Sequence Detection System ソフトウェアを用いて、PCID2 の転写量を測定し、PCID2 高値群と PCID2 低値群に分類した。

細胞株および細胞培養
ヒト乳がん細胞株 MCF7、T47D、MDA-MB-231、MDA-MB-468 は、American Type Culture Collection から購入した。DSS1、PCID2 を過剰発現させた MCF7 を確立するために、pFB-DSS1-IRES-GFP、pFB-PCID2-IRES-GFP と指定されたレトロウイルスベクターを PLAT-GFP 細胞にトランスフェクトし GFP 陽性の細胞を選別した。DSS1 と PCID2 の過剰発現は、qRT-PCR で定量的に確認した。
すべての乳癌細胞は、10%の子牛胎児血清(BioFluids, Rockville, MD)、2-mM L-グルタミン、および 50-μM 2-メルカプトエタノールを添加した Roswell Park Memorial Institute 1640 培地(Sigma-Aldrich)で培養した。パッケージング細胞である EcoPack293は、ダルベッコの修正イーグル培地(Sigma-Aldrich)に 10%ウシ胎児血清を加えたものを用いた。

siRNA 処理
DSS1 siRNA(siDSS1)、siBRCA2およびsiPCID2は、LipofectamineTM RNAiMAX Transfection Reagent(Life Technologies)を用いて乳癌細胞にトランスフェクトした。ノックダウン DSS1、BRCA2、PCID2のノックダウン効率はqRT-PCRとイムノブロットで検証した。

ヨウ化プロピジウム(PI)による核染色
細胞は、2×PI 溶液(0.1%クエン酸ナトリウム)。2×PI 溶液(0.1%クエン酸ナトリウム、 0.1%トリトン X-100、50-μg/mL PI)を用いて氷上で 2 時間溶解し、サブ G1 画分を FACSで分析した。G1 画分は、FACSCalibur(BD Biosciences, San Jose, CA)とおよび FlowJoソフトウェア(Becton, Dickinson and Company, Franklin Lakes, NJ)を用いて解析した。

シングルセルゲル電気泳動
siDSS1 または siBRCA2 で処理した細胞における一本鎖および二本鎖の DNA 切断のような DNA 損傷は、コメットアッセイ®キット(Trevigen, Gaithersburg, MD)を用いて分析した。損傷は少なくとも 100 個の細胞から得られたテールモーメントを評価することで、ダメージを定量化した。解析は CometScore1.5 ソフトウェア(Tritek Corp, Sumer Duck, VA)を用いて評価した。

クロノジェニックサバイバルアッセイ
細胞濃度を 500 細胞/mL に調整し、1mL の細胞懸濁液を 6 ウェルプレートに入れた。プレートに移した 5 日後、各ウェルに抗がん剤を添加し、さらに 1 日、2 日、3 日と培養した。その後、細胞を固定し 1%のクリスタルバイオレットで 10 分間染色した。 ImageJ ソフトウェア(National Cancer Institutes, Bethesda, MD)を用いてコロニー数をカウントした。

統計解析
2 群間の差は t 検定を用いて解析した。3 群間の差は一元配置の ANOVA および Games-Howell 多重比較検定で解析した。Kaplan-Meier 解析は、JMP ソフトウェア、バージョン 8.0.2(SAS Institute Japan, Tokyo, Japan)を用いて行った。その他の検定は、R version 4.0.3(The R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria)を用いて行った。すべての検定において、P 値が<0.05 の場合、統計的に有意であると判断した。

【結果 考察】
DSS1、BRCA2 の腫瘍組織における高発現または低発現グループ間の生存期間を Kaplan-Meier プロッターデータベースを使用し比較した。DSS1 発現増加は、無再発生存期間の予後不良と有意に相関していたが、BRCA2 の発現の高低による差は検出されなかった。
次に in vitro の解析をおこなった。DSS1 過剰発現乳がん細胞株と同ノックダウン乳がん細胞株に対するドキソルビシンとパクリタキセルの薬剤感受性を検討した。DSS1過剰発現細胞株はコントロール細胞株に比べて薬剤抵抗性を示し、DSS1 ノックダウン細胞株はコントロール細胞株よりも感受性が増加した。DSS1 は BRCA2 の発現を安定化することが知られているので、この感受性の増加が BRCA2 依存的かどうかを検討した。BRCA2 ノックダウン細胞では薬剤感受性の増加を認めず、DSS1 ノックダウン後の薬剤感受性の上昇には BRCA2 は関与しないことが示唆された。DSS1 ノックダウン細胞株および BRCA2 ノックダウン細胞株に対して comet assay 法を施行すると、 DSS1 ノックダウン細胞株においてのみ DNA 傷害が誘導されており、これが薬剤感受性の差を生み出し、Kaplan-Meier プロッターデータベース解析で明らかになった予後の差に影響を与えると考える。さらに、TREX2 複合体の別のサブユニットである PCID2 と薬剤感受性との関連を検討した。この結果、PCID2 の発現レベルが薬剤感受性に DSS1 と同様の影響を与えることから TREX2 複合体の機能不全が DNA 不安定性を誘導し薬剤感受性に影響を与える可能性を示唆している。
免疫組織化学染色により正常組織、癌組織における DSS1 と PCID2 の発現状況の比較をおこなった。DSS1 は正常組織と比較して DCIS、浸潤性乳管癌組織で発現が増加している。一方、PCID2 の発現は正常組織と DCIS、浸潤性乳管癌組織の間では統計学的有意差は認めなかった。これらの結果から、乳がんにおいて DSS1 の発現を低下させることで DNA 傷害を誘導し、化学療法感受性を亢進させるという新しい抗がん治療戦略が期待できる。

【結語】
DSS1 は BRCA2 非依存性 DNA 損傷を介した化学療法感受性の増加と密接に関連していることを強く示唆する。正常組織において DSS1 の発現が低いことから、本研究成果は BRCA2 非依存性に腫瘍組織の DSS1 低下を誘導し化学療法の感受性を増加させるという新たな治療戦略に寄与する可能性がある。

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