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BMIと上腹部症状の頻度の関連に対する性別の影響

Ogisu, Kyohei 神戸大学

2020.09.25

概要

【背景と目的】
胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease, GERD)と機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia, FD)などの上部消化管症状(Upper Gastrointestinal Symptoms, UGS)の発生率は年々増加している。UGS の症状が高度に出現した際には、QOL(Quality of life)の低下を招く。 FD は、食後のもたれ感や早期満腹感が主症状の場合には、食後愁訴症候群(Postprandial distress syndrome, PDS)に、心窩部痛や心窩部灼熱感が主症状の場合には、心窩部痛症候群(Epigastric pain syndrome, EPS)に分類される。BMI の増加は、GERD 症状やびらん性食道炎の危険因子としてよく知られており、プロトンポンプ阻害剤(PPI)は治療に有効であるが、低BMI がGERD症状の危険因子であるかどうかは不明である。また、FD 症状と BMI の関連については報告は少ない。BMI が高いほど UGS の頻度が高くなるとの報告や、BMI 値は女性の FD 症状の頻度に関連しているとの報告が散見されているものの、現在、UGS と BMI の関連性については一定の見解は得られておらず、さらに、性別が UGS とBMI の関連性にどの様に影響するかは不明である。したがって、本研究は、健康診断を受診した大規模な多施設共同の前向き研究で集積したデータを用いて、BMI と UGS の関連性に対する性別の影響を明らかにする事を目的とした。

【対象と方法】
2013 から 2014 年に健康診断受診目的のために上部消化管内視鏡検査を受けた 8889 人の被験者の前向き多施設コホート研究(the Upper Gastro Intestinal Disease [UGID] study)のデータベースを利用した。 PPI または H2 受容体拮抗薬(H2RA)を服用している 597 人、他の消化剤(運動促進および粘膜保護剤など)を服用している 165 人、アンケートデータが不完全な 811 人、内視鏡所見が不完全な 59 人、胃切除術を受けた 66 人、胃潰瘍の 37 人、十二指腸潰瘍の 31 人、胃癌の 9 人、食道癌の 1 人、同意を取り下げた 1 人を除外した 7112 人を適格症例(本研究の対象)とした。7112 人のデータベースを利用し、BMI と UGS の関連性に対する性別の影響に関して、多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析した。研究データは、年齢、身長、体重、性別、UGS(GERD 症状、PDS、および EPS 症状)の頻度、現在の喫煙状況、平均 1 日のアルコール消費量、食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、萎縮性胃炎、びらん性食道炎の有無、FSSG(酸逆流スケール)、STAI スコアを調査し、多変量解析では交絡因子として使用した。不安に対する評価は State-Trait Anxiety Inventory(STAI)アンケートを使用し、高 STAI スコアは、男性で 44 以上、女性で 45 以上と定義した。症状のある被験者における UGS の重なり(GERD, PDS, EPS の overlapping)とBMI の関連に対する性別の影響に関しても併せて調査した。

すべての統計分析は、JMP バージョン 11(SAS Institute, Cary, NC, USA)を使用して行なった。すべての P 値は両側検定で評価した。UGS と BMI 間の関連を評価するために、主にロジスティック回帰モデルでの尤度検定を用いた。この研究は、ヘルシンキ宣言に従って実施した(UMIN- CTR ID:000022504)。

【結果】
年齢(連続変数、カテゴリー変数)、性別、喫煙状況、アルコール消費量、びらん性食道炎、食道裂孔ヘルニア、および FSSG スコアはBMI と関連していた(P <0.0001)。現在の喫煙状況と大量のアルコール摂取は高BMI と関連していた(P <0.0001)。 STAI スコアは女性にのみ有意に関連していた(女性:P = 0.012、男性:P = 0.63)。BMI と各 UGS の関連性(単変量解析)に関しては、GERD 症状および FD 症状の頻度はBMI と有意に関連していた(P <0.0001)。FD 症状の中では、PDS 症状の頻度はBMI と有意に関連していたが(P <0.0001)、EPS 症状の頻度はBMI と関連がなかった(P = 0.19)。 全UGS の有無はBMI と有意な関連を認めた(p=0.0004)。 多変量解析においては、逆流症状は高 BMI と有意に関連していた[多変量オッズ比(OR)1.36; 95%信頼区間(CI)1.10–1.67; P = 0.004]。PDS 症状は低BMI と有意に関連していた(OR 2.37; 95% CI 1.70–3.25; P <0.0001)。EPS 症状はBMI とは関連していなかった。次に、BMI と UGS の関連性に対する性別の影響を調査した。逆流症状と高 BMI との関連性は男性のみに限定されていた(男性:OR 1.40; 95%CI 1.10–1.77; P = 0.005、女性:P = 0.40)。PDS 症状の存在と低BMI の関係は性別の影響を受けていなかった。さらに、UGS の重なり(GERD, PDS, EPS のoverlapping)とBMI の関連性を調査した。BMI とUGS の重なりには有意な関連があり(P=0.001)、BMI が高い程、FD 症状のない GERD 症状の割合が高くなっていた(OR 1.40;95%CI 1.06-1.85;P=0.02)。逆に、BMI の低下はGERD 症状のない FD 症状の割合が高いことと関連していた(OR 0.57;95%CI 0.39-0.83;P=0.002)。また、BMI とUGS の重なりの関連性は性別による有意な差を認めた(男性: P=0.14, 女性:P=0.004)、FD 症状のない GERD 症状は性別による有意差はなかったが、男性に多い傾向を認めた。GERD 症状のない FD 症状は、女性でのみ低 BMI と有意な関連を認めた(男性:P=0.04、女性:P=0.01)。3 つの症状(GERD 症状、PDS 症状、EPS 症状)が全て重複していた割合は、女性の方が男性よりも高く (19.9%[58/292]対 10.5%[49/468]、P = 0.0002)、正常および高BMI よりも低BMI で高かった(P<0.01)。

【考察】
本研究の主な 3 つの主な知見を提示する。第一に、逆流症状は高 BMI と有意に関連していたのに対し、PDS 症状は低BMI と有意に関連していた。ただし、EPS 症状はBMI とは関連していなかった。第二に、逆流症状と高 BMI との関連は男性に限られていた。ただし、性別は PDS 症状と低BMI との関連に影響を与えなかった。第三に、BMI と UGS の重なりとの間には有意な相関を認めた。BMI が高いほど FD 症状のないGERD 症状の割合が高く、BMI が低いとGERD 症状のない FD 症状の割合が高かった。 3 つすべての症状の重複している割合は、正常および高 BMI よりも低BMI で高かった。さらに、3 つすべての症状の重複の割合は、男性よりも女性で高かった。 UGS の有無に対するBMI の影響は、男女で有意に異なっていた。

びらん性 GERD(内視鏡でびらんを認める逆流性食道炎)の患者では、対照群(びらん性食道炎を認めない群)と比べ有意に BMI が高いという報告が多く一定の見解の一致があるが、逆流症状の有無と BMI との関係についての報告は限られている。韓国の女性看護師に限定した研究では BMI の高低は逆流症状と関連していたという報告があり、びらんの存在または性別が BMI と逆流症状の有病率との関連に影響を与える可能性が示唆されている。我々の研究では、逆流症状は男性のみで高BMI と関連し、女性では関連していなかった。また、びらん性逆流性食道炎は、正常BMI と低BMI に比べ高BMI と有意に関連していた。それに対して、びらん性食道炎のない逆流症状は低BMI と関連を認めた。

FD の有病率とBMI との関係に関する報告は少ない。イランからの報告では、BMI と FD の有病率は関連がないとされている。しかし、欧米の研究では、女性は男性よりも FD を発症する可能性が高く、治癒する可能性は低いという報告もなされている。また、PDS 症状である早期満腹症状は、低 BMI と体重減少に関連しているとの報告もある。我々の研究では、低 BMI はPDS 症状の有意な危険因子であったが、EPS 症状の危険因子ではなかった。また、低 BMI におけるPDS 症状の関連には、性別による差は認めなかった。

UGS 症状の重なりに対する BMI の影響はこれまでに報告されていない。我々の研究では、BMIの増加とともに、FD 症状のない逆流症状の比率が増加したが、逆流症状のない FD 症状の比率は減少した。FD 症状のない逆流症状は、高 BMI で頻度が増えていたが、性差は認めなかった。逆流症状のない FD 症状は、低 BMI で正常または高 BMI よりも有意に多く、その影響は女性に限られていた。

我々の研究にはいくつかの limitation がある。まず、本研究は横断的研究であるため、BMI と UGS の因果関係は不明のままである。 UGID 研究は 5 年間の追跡調査であり、将来的には、UGSの発生に対するBMI の変化の影響を調査する予定である。第二に、これは健康診断を受けた個人を対象とした症状ベースの研究であり、全ての被験者が GERD または FD の疾患の診断基準を満たしているわけではない。つまり、「真の患者」ではなく、被験者の症状は大部分が比較的軽度であり疾患としての診断基準を満たしていない。ただし、私たちの研究は 5 年間の追跡期間があり、この研究の開始から 2 年後には 4019 人(2年間追跡可能であった症例)のうち、154 人の被験者が PPI またはH2RA の定期的な内服を開始していた。この結果は、本研究の対象となっているほとんどの被験者が軽度の症状を示しているが、疾患としての診断基準を満たしうる「真の患者」も一部が含まれていることを意味している。第三に、すべての被験者は日本人であり、BMI が 30 を超える被験者はわずかであった。 FD とBMI の関連性は、人種によって異なる可能性があり、それらを評価することはできなかった。さらに、すべての被験者においてのヘリコバクターピロリ菌(HP)の感染状態は確認できなかった。一般的に、ピロリ菌感染は、FD 症状に影響を与え、GERDの有病率の低下に関連していることが知られている。HP 感染の状態は、腹部症状に関する質問票で確認した。他の病院で合計 1673 人の被験者が UBT により HP 感染症陽性と診断されたが、 1130 人は陰性であった。他の被験者では検査されず、不明であった。我々の研究では HP 感染状態は、不明例を除いた検討では、各 UGS 症状とBMI の関連に影響を与えていなかった。

【結論】
UGS の有無に対するBMI の影響は、この大規模コホートでは、性別で有意に異なっていた。

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