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Development and validation of a dish composition database for nutritional epidemiologic study

篠崎, 奈々 東京大学 DOI:10.15083/0002005137

2022.06.22

概要

背景及び目的
研究目的・実務目的を問わず、広く用いられている食事調査法は、一定期間に摂取した全ての飲食物の名称と量を対象者自身が申告する方法(食事記録法など)である。しかし、実際の食事場面では複数の食品の混合物である料理を摂取することが多いので、料理に含まれる個々の食材を思い出したり重量を正確に記録したりすることは難しい。そのため、食事記録法のように食品の摂取状況を詳細に調べる食事調査法は対象者の負担が大きいだけでなく、得られる情報の質も低い可能性がある。

そこで近年、食品ではなく料理の情報に基づいて食事摂取量を推定する方法がいくつか開発されてきた。この方法は主に料理の名称や量を調べるため、個別の食材に関する詳細な情報を要しない。よって、対象者の負担が少なく、データ解析が容易となるなどの利点があると考えられている。料理情報に基づく食事調査を行うためには、料理に含まれる食品や栄養素のデータベースが必要である。しかし、日本の食事調査で広く用いられている日本食品標準成分表(以下、食品成分表)は、食材(原材料)を主に収載しているため、料理の収載数は非常に少ない。また、いくつかの先行研究で日本人用の料理データベースの作成が試みられたが、データベースの開発に使われた食事データの調査時期や対象集団が限定的であったり、妥当性検証の方法が不適切であったりするなどの問題点があった。

そこで本研究では、料理情報に基づく食事調査法の開発にむけて、日本の4地域に住む男女から4季節にわたって得られた16日間の食事記録を用いて料理データベースを構築した。さらに、料理データベースによる食事摂取量の推定能力を食品成分表と生体指標の両方を用いて検証することとした。

料理ベースの食事調査ツールの開発、妥当性、活用状況に関するスコーピングレビュー(第1章)
料理情報に基づく食事調査ツールはこれまでにいくつか開発されているが、国や地域によって食文化が異なるため、各ツールで対象集団や調査項目などに違いがあると考えられる。そこで、料理ベースの食事調査ツールに関する知見を整理するため、ツールの特徴、開発方法、妥当性、活用状況に関するスコーピングレビューを行った。文献検索にはPubMedとWebofScienceを用い、「料理」「ツール」「食事」に関連する用語で検索を行った。

抽出された5,313編の論文のうち、74編の論文を最終的なレビュー対象とした。その中には12種類の料理ベースの食事調査ツールが含まれ、それらの全てが韓国、バングラデシュ、日本などのアジア系民族を対象集団としていた。また、ツールのほとんどがリスト化された各料理の摂取頻度を尋ねる食物摂取頻度調査票の形式をとっていた。調査票の主な開発手順には、自己申告の食事データに登場する料理の特性に基づいた分類、食事摂取量の推定に重要な料理の選択と料理リストの作成、各料理の栄養成分表の作成などが含まれていた。食事摂取量の推定における妥当性は9つのツールで検証されていたが、それらは全て自己申告の食事データを比較基準に用いており、1つのツールのみが食事摂取の客観的指標である生体指標も比較基準に用いていた。料理ベースの食事調査ツールは59の研究で使用され、ほとんどのツールが開発時に想定された対象集団の食事調査に用いられていた。

結論として、料理ベースの食事調査ツールは現状ではアジア系民族を対象に開発・利用されていた。ツールの妥当性の検証の多くは自己申告の食事データとの比較によってなされており、その場合には基準となる摂取量自体が、ツールから推定した摂取量と類似の方向性を有する系統誤差を含んでいると考えられる。よって、料理ベースの食事調査ツールをより広く活用するためには、生体指標を用いた検証などのさらなる妥当性研究が必要である。

食品群・栄養素摂取量推定のための料理データベースの構築(第2章)
料理ベースの食事調査法は、多様な料理から構成される日本人の食事を調査するために役立つと考えられる。料理情報に基づいて食事摂取量を調査するためには、料理中の食品や栄養素の組成の情報を含む成分表が必須である。そこで、日本の4地域に居住する31~81歳の男女252人から得られた16日間(各季節4日間)の食事記録をもとに料理データベースの構築を行った。

まず、食事記録に登場した延べ71,213の料理を、料理名、主食材、調理法、エネルギー・栄養素含有量の類似度に基づいて128種類に分類した。全ての料理に料理名と料理コードをつけ、各料理コードについて1回の食事あたりの総重量と各種食品群・栄養素含有量を、その料理に分類された個々の料理データの平均値として算出した。結果として、128種類の料理の標準重量、各種食品群・栄養素含有量の情報を含む料理データベースが完成した。

食品群・栄養素摂取量の推定における料理データベースと食品成分表の比較(第3章)
第2章で開発した料理データベースの利用可能性を調べるためには、料理データベースを用いて食事摂取量をどの程度推定できるかを検証する必要がある。そこで、国内20地域に住む20~69歳の男女392人から得られた4日間の食事記録(データベース開発に使用したものとは異なる食事データ)を用いて、料理データベースによる食品群・栄養素摂取量の推定能力を食品成分表と比較して検証した。

食事記録に登場した延べ91,045の食品を、食品名に基づいて食品成分表に記載されている食品コードでコーディングした。それとは独立に、食事記録に登場した延べ26,642の料理を、料理名に基づいて料理データベースの料理コードでコーディングした。それらのコードを用いて食品成分表と料理データベースからそれぞれ食品群・栄養素摂取量を推定し、中央値の差と相関係数を調べた。また、対象者が食事記録に記載した料理の総重量の情報を用いることが推定精度に影響を与えうるか否かを調べるため、料理データベースにある各料理の標準重量を用いた推定摂取量と共に、それらをさらに対象者が記録した料理重量を用いて調整した場合の推定摂取量も算出した。

検討した26食品群のうち、男性で18、女性で20の食品群で食品成分表と料理データベースによる推定摂取量の中央値に差がみられた。同様に、検討した42の栄養素のうち、男性で28、女性で21の栄養素で中央値の差がみられた。各種食品群摂取量の相関係数は男性で0.19~0.90(中央値:0.61)、女性で0.25~0.89(中央値:0.58)であった。各種栄養素摂取量の相関係数は、男性で0.25~0.90(中央値:0.60)、女性で0.15~0.74(中央値:0.53)であった。対象者が申告した料理重量で推定摂取量を補正した場合、男女ともに食品群・栄養素それぞれの相関係数の中央値が上昇した(食品群:男性0.73、女性0.72、栄養素:男性0.75、女性0.74)。

結論として、料理データベースを用いて食品群・栄養素摂取量の中央値を正確に推定することは難しいが、摂取量に基づいて個人をランク付けする能力は多くの食品群・栄養素において許容範囲であるといえる。

たんぱく質、ナトリウム、カリウム摂取量の推定における料理データベースの24時間尿中排泄量に対する妥当性:食品成分表との比較(第4章)
生体指標を用いるほうが摂取量推定の妥当性をより客観的に評価できる。そのため、2回の24時間蓄尿と4日間の食事記録を同時期に行った集団において、蓄尿から推定されたたんぱく質・ナトリウム・カリウム摂取量を基準として、食事記録から料理データベースを用いて推定した摂取量の妥当性の検証を行った。さらに、その結果を食事記録から食品成分表を用いて推定した場合と比較した。

第3章と同じ対象集団の中から、蓄尿を適切に行った324人を対象とした。料理データベースと食品成分表それぞれを用いて摂取量を算出し、24時間蓄尿から算出した推定摂取量との中央値の差と相関係数を調べた。

料理データベースと食品成分表の両方で、男性のたんぱく質とナトリウム、女性のナトリウムとカリウムで24時間蓄尿から推定した中央値との差がみられた。24時間蓄尿と料理データベースとのたんぱく質、ナトリウム、カリウムの推定摂取量の相関係数は、それぞれ男性で0.26、0.15、0.44、女性で0.22、0.27、0.22であり、蓄尿と食品成分表との相関係数(男性:0.43、0.40、0.59、女性:0.33、0.45、0.42)よりも低かった。料理データベースによる推定摂取量を対象者が記録した料理重量で補正した場合、中央値の推定精度は大きく変わらなかったが、相関係数は上昇した(たんぱく質、ナトリウム、カリウムのそれぞれについて男性0.32、0.31、0.56、女性で0.31、0.41、0.39)。

結論として、たんぱく質・ナトリウム・カリウムの摂取量の絶対値を推定する能力については、料理データベースは食品成分表と同様に低かった。しかし、料理データベースが摂取量に応じて個人を順位付けする能力は、個人個人が摂取した料理重量の情報を用いれば、食品成分表と同程度まで上昇した。

結論
本研究では、日本人の料理データベースを構築し、食事摂取量の推定における料理データベースの妥当性を検証した。本研究で構築されたデータベースは24時間蓄尿に対して妥当性が検証された世界で初めてのデータベースである。この料理データベースにより、料理名と料理重量の情報を用いて食品群・栄養素摂取量に基づいて個人を順位付けすることが可能である。このデータベースは今後の料理ベースの食事調査ツールの開発に寄与するだけでなく、従来の食品ベースの食事調査において料理の食材の情報が欠損していた場合にそれらを補完する目的にも役立つものと考えられる。

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